第12話茶会での失態
「酷い!私を除け者にするなんて!!」
招待された侯爵家の茶会。
そこに場違いな声が響きわたる。
声の主は、エンビー嬢。
相変わらず、マナーを失念していますが指摘はしません。無駄ですから。
どうやらエンビー嬢は主催者側の令嬢と口論になっているようです。
話しの断片を拾い集めれば、彼女は令嬢達の会話についていけず、それを「仲間外れにされた」と感じているようです。
「そんな話をしているのではないでしょう?私達の会話についてこれないなら、貴方はマナーのお勉強から始めるべきだわ」
「な!?酷い!」
「酷いのは貴方の頭よ。ねぇ、皆さま」
「ええ」
「まったくだわ」
令嬢達から一斉に責められ、エンビー嬢は瞳に涙を溜める。
ああ、やっぱりと言うべきか。まぁ、仕方ないですね。彼女は勉強不足ですから。
「会話の内容が理解できないのなら、『分からないので教えてください』とお願いすれば良かったのですわ。それなのに、いきなり『仲間外れにされた』と責め立てるなんて」
「だ、だって……っ」
「だってじゃありません。エンビー嬢は、そろそろご自分の立場をお考えになった方が良いですわ」
「わ、私は!」
「私達の会話に勝手に割り込み、会話についていけないからといって相手を悪し様に言うなんて、常識では考えられないわ!」
令嬢の一人がエンビー嬢を叱責する。
その剣幕に押されたのか、彼女は俯いてしまったが……。
「そ、そんな……私、ただ皆と仲良くなりたくて……」
「それならば、もっと周囲に気を配るべきですわ。貴方は名乗りもしないで私達の席に無断で割り込んだのですよ?非常識だと思わないのですか?例えこれが礼儀作法を学んでいない子供であったとしても、不躾に席を占有する不愉快極まりない行為だと分かるでしょう。それを注意されて『意地悪を言った』とは何事ですか」
「わ、私は……」
「エンビー嬢、貴女はもう少しご自分の行いを反省するべきですわ。『酷い!』と他者を非難する前に、自分の行いを振り返るべきです。反省も出来ないのなら、貴女をこの茶会に招待する事はございません」
「そ、そんな……っ!」
エンビー嬢の顔色が悪くなる。
どうやら、彼女は『招待されなくなる』ことに恐怖を感じているようです。
意外だわ。
「元々、この茶会は高位貴族同士が親交を深めるためのもの。それを、貴方はマナーも学ばずに踏みにじったのです。私達の茶会を『仲間外れにされた』と思うのなら、それは貴方の心根の問題ですわ。私達は、そんな貴方と仲良くしたいとは思いません」
「そ……そんな……」
「そもそも、エンビー嬢。我が侯爵家が正式に招待したのはユースティティア嬢です。プライド伯爵夫人が『エンビー嬢も一緒に』と仰るので仕方なく貴方を招待しましたが、貴方は本来ここに居るべきではないのですよ?」
「え……」
「ユースティティア嬢は伯爵家のご令嬢。対してエンビー嬢は?私は伯爵家から『当家の見習いメイドも参加させてほしい』と予め連絡があったので招待しました。侯爵家としては、本来ならばユースティティア嬢のみを招待したかったのですが、諸々の諸事情もありましたのでお受けいたしましたの。それをご理解いただけるかしら?」
「わ……私は……」
ガクガクと肩を震わせるエンビー嬢。
どうやら、自分が正式に招待された訳ではないという自覚がなかったようです。
ああ、道理で。
馬車の中でおかしなことを言っていたわけです。
普通に考えれば『お茶会のおまけ』は私ではなく彼女でしょうに。
その後?
エンビー嬢は謝罪一つなく、その場を去っていきました。
帰りの馬車は、随分と静かでしたよ。
私は窓の景色を見ていたのものの、恨みがましい視線を感じたのは気のせいではないでしょう。
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