第6話 知りたいことがあるの 〜白崎なな


 ちらっと俺の方を見て、小首を傾げている。そして、ルナは軽々しく斧を振りかざしいい音を立てて薪を割り始めた。

 女の子に力仕事を任せておくわけにもいかないので、割り方を見よう見まねで変わろうとした。ルナの割っていた一本の薪が、真っ二つに割れた。そのまま台にしていた丸太に斧を刺して、ルナは一息ついた。


 ルナの背後に周り、刺された斧を手にして交代をする。ルナは、頬を少し染めてささっと離れていく。


 変わると、やはり重さを感じる。こんな細い女の子が軽々しく持てるのが、不思議に思える。カンッと音をさせて、薪割りをした。



「……やっぱり変わろうか? 私、魔法で振り上げる時に軽くしてってできるし」



(はい? 魔法……とは?)



 危うく手に持った斧を落としてしまいそうになり、斧を丸太に刺した。正面からルナの顔を見ると、心配そうな眼差しでこちらを見ていた。

 俺の反応を見て、パチパチと音を立てるように瞬きを繰り返す。やはり、彼女の目からは星が瞬くような美しい瞳の色だ。銀色の瞳は、夜空を照らす月のような美しさをもつ。



「それで? ようは、どこから来たの?」



 瞳の奥の輝きになんでも答えてしまいそうになる。そんな美しい瞳を見ていた俺は、思わず答えてしまった。



「別のところから来たんだ。……って、あっ!」



 口から滑り落ちた言葉は、静かな空間に響いてルナの耳にもしっかり聞こえたようだ。慌てて口を押さえたが、後の祭りだ。ルナは一瞬驚いた顔を見せて、ふふふと上品に笑った。



「大丈夫! 誰にも言わないから!」

 


 そう言って、俺の近くにふわりと来てにっこりと笑いながら変わったはずの斧を手にした。聞いていたようにサクサクと割っていくので、本当に魔法を使っているのだろう。


 “魔法” と言うのが本当に存在をするのであれば、自分も使ってみたい。私生活もこうやって便利になるのなら、なおさらだ。



「ありがとう。魔法ってどうやったら使える?」



 もしかしたらここの人たちは、当たり前のように魔法が使えるのかもしれない。こんな質問をされてもルナは困ってしまうかと言ってから少し考えた。



「あぁ〜、う〜ん。書庫にでも行ったら分かるかな?」



 頭を悩ませながらも、自分のために答えを一緒に出そうとして提案をしてくれる。指を顎に当てて、小首をこてんこてんとかしげる様はとても可愛らしい。


 そして、顎に当てた人差し指を思いついたと顔の隣にピンッと跳ねて俺と目を合わせて笑った。



「私も、知りたいことがあるんだった! 2人で行ってみる?」


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