モノクロは悪くないに決まってる

涙を流すくらいに自らをオープンにしてくれた未来。家族が対峙している「とある孤独」に対し、その兄妹として一緒に向かい合っているという同じ様な境遇。付け焼き刃で要素を加えるとすれば、同じ学年の大学生…(自損事故)。


私は人との距離が縮まっていく過程で、その速度が急速になるタイミングがあると感じている。明確な理由について分析は出来ていないが、どうやら人は予想外の出来事との遭遇や危機察知をした時などに「情報収集能力」のギアが上がるらしい。それが恐らく関係しているのではないか、と今回の件の後に改めて思うようになった。そしてそれが起きるタイミングで、相手のどのポジションに自分が収まるかが決まるんだと思う。今回に関してはたまたま未来に彼女がいな…。


「冬華、コーヒー入ったよん」


私はよく、とてつもなく深いマイワールドに入ってしまうことがある。それはまさに没入という言葉がふさわしい。思考だけが一人歩きをして、遠い山道の方へ歩いていってしまった時、私の体と未来がいる元の場所から、ゴムゴ◯の実の能力の如し手だけを伸ばして魂を引き戻し、心と体を繋げてくれるのが今の未来という存在であるのかもしれない。


「ありがとう」

二人でいると不思議と強くなれるなって思っていた。彼の後押しという支えがあったからこそ、結果的に私は大学も卒業できたし、あの激動の中でも夏海や両親とも良好な関係を築けたのかもしれない。


そういえば、未来は中村家に見事にマッチした。両親とも仲良くやっていたし、もっと言えば私達が2人姉妹だったことも有り、父の秋人が同性である未來をかなり過保護に可愛がっていた様子。そして時間を重ねるに連れ父に大分懐いてるように見えた。父の彼に対する呼び方も最初は未来くんだったが、慣れていくうちに未来になっていったし、未来は未来で秋人さんから秋さんへと変わり、タイミングが合った時には冗談交じりではあるが「あっきー」とまで言っていた事すらあった。


あっきーて!と私は思ったが彼の愛敬あってこそだろう。その時には私にない良い意味での人間臭さみたいなものを感じた。これは夏海にもたまに抱いていた感情…というか感想でもある。


ただそんな関係も永遠ではなかった。3年間付き合ったものの情熱が冷めてしまうと、こうも無心になってしまうのかと思うくらいに最後はあっさりとした別れだったと感じる。


でも別れてもその時点で私のほぼ全てを知ってくれている人であり、それはお互い様だった。キッパリ離れるほうがよかったのかもしれないが、お互いに嫌いではないし、認めたくはないが間違いなく弱かったと思う。



⬜️⬛️モノクロ⬛️⬜️



夏海が少しだけ、後戻りをしてしまったように思えた後の最初の日曜日。私は久しぶりにコインランドリーを利用した。とくに洗わないといけない物があった訳ではないが「なんとなく気になっていた」からである。


私はここ数年間小説を書きたいと思っていた。その題名は「モノクロ」。10代の頃からコインランドリーはモノクロであるという謎の見識を持っていて、深い意味はなくそれを言語化してみたかったのだ。


そして先日までの段階で、自分の経験に基づき序章まで書き連ねた。登場人物の名前は本名で無くある程度「仮名」であることをご理解頂きたい。小説の書き出しと、今書いている私達の名前が同じことも含めて。と、同時にSNSでの発信も始めた。あまり関わって来なかった文化だったので、同世代の中では新鮮さを多分に感じつつ、私はその世界に少しずつ入り込んでいったのだが…。


その最中に気を揉む出来事が起きた。結論から先に言うとネットストーカー、いわゆるネトストの被害とそれに関連したSNSでの炎上騒動である。

その事象により、私は現在人生で一番と言って良い程、世界が白黒に見えている。


現代で生きるということの複雑さと辛辣さを身にしみて感じる出来事により、私自身もモノクロの世界に放り込まれてしまったようだ。


一つだけ言えること。私はモノクロに対して悪いイメージをもっているつもりはない。妥協した言い方にするならば「持ちたくない」と意固地になっている側面も正直あると思う。

それはコインランドリーとモノクロを紐付けた以上、絶対に肯定的なものとして扱っていきたいという、ある種「エゴ」が存在するからだ。ではモノクロを善として扱えているか?という問いに関しての回答をするならば、明らかに「ノー」だ。でもそんなことは…。


葛藤と妥協、そしてネトストと炎上。

次章では私の「リアル」についてお伝えしたい。

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