戦争が終わったとして官僚の仕事には終わりはない

「魔族って結局どれだけ生きるのよ」

「私にわかるわけないじゃないですか。そんなの」

「ああ。まぁそうね。聞き方が悪かったわ。野生化していない魔族ってのは人としての意識はあるのかしら。アナタの云うケンとかバービーとかそういう人たちは」

「あいにく私はちゃんと知らないんですよね。そういう存在を。そもそも人の形や意識を保っている魔族ってのを見たことがないんです」

「アナタのドレスだか鎧だかはどういうものなの」

「まぁアレはああいうものです。色々仕掛けはありますけど、ある意味で戦車や飛行船と変わりありません。こうなんというか、会話もできるんですけど受け答えというよりは時計の文字盤やベルみたいにして必要なことだけむこうが勝手に教えてくれるというか。そういう訳で我が君と戦った折もとくに提案とか指南とかしてくれたわけでなくて、おかげで負けちゃいました。あんなにあちこちに武器の類が付いているなら最初から手足の一本も刻んでから捕まえればよかったと思ってますよ」

「捕まえも出来なかったくせになに言ってるのよ」

「こう云うと負け惜しみですけど、あのまま十番勝負をやっていれば何戦目かで我が君の動きを鎧が覚えて自動的に捕えてくれるようになったはずです。あのテープがあんなに丈夫だと思ってませんでしたし」

「あのテープ、現場で割れた履帯とか無理やり繋いで整備小隊に引き渡すのに使ってたヤツですよね。手で千切れたら金貨進呈、とか整備軍曹がよく煽ってましたけど普通無理ですよね」

「擦れとか耐候性は低くて露天には脆いからあんまりそういう風には使ってほしくないんだが」

「整備班に引き渡すまでの半日保てばいいんだから、しょうがないのよ。前線の部品備蓄なんて余裕が有るわけ無いでしょ。他所じゃあのテープで煙突割れたの繋いだり、大砲の砲座が壊れたの繋いで使ったりしてるんだから」

「そういう風に使うならもうちょっとマシなものがいくらでもあるんだが」

「そんなの皆知ってるわよ。でも邪魔にならなくて簡単に使えてそれだけ準備すればなんとかなるってのが受けてるのよ。靴でもテントでも戦車でもアレだけあればとりあえずなんとかなるなんて兵隊向きじゃない。アレと二液式の接着剤に砂混ぜて色々何とかしてたわよ」

「もともとアレ何のための工作材料なんですか」

「崩れかけのレンガ壁とか仮に工事して倒れないように止めておいたり、もう使わない扉口を目止めしたりとかそういう応急工事の仮施工用だな」

「ファラは排気管の穴塞いだり、ネジがへし折れた車の部品を縛り付けるために使ってるって言ってたわよ」

「アイツは。どうしてああなったんだ。ウチに来た時はぼんやりした育ちのよさ気なお嬢さんだったのに」

「別にファラはボンヤリしているわけじゃないって言ってるのに。アナタもいい加減ヒトを見ないわね」

「ショアトアはどう思う」

「え。レンゾ少佐ですか。どう思うって。どう答えればいいんですか」

「アイツは良い幹部、良い上官だったか。できれば具体的に簡潔に」

「え。あ。む。命令ははっきりした方でした。あと、命令の実施見積もりの意見具申を求める方でした。なにがいるかとか、どれくらいかかるとか。わりとどうにもならない話でもともかく意見具申は求めていた様子です。ボンヤリした方っていう印象は部隊の兵隊は誰も抱いていないと思います。数字とかモノとかちゃんと把握されていましたから、むしろ目を盗むのはかなり難しい幹部だったと思います」

「ほらね。あの娘、アレでしっかり者なのよ。だいたい子供生ませた女が子供産む前のままでいるわけないでしょ」

「ハンドル握らなければ、前のままのようなカンジがするんだが」

「それはアレですね。我が君の好みに合わせて作ってますね。我が君はセラム姉様の扱いが丁寧なので、そっちに寄せてるんです」

「セラムはボンヤリしてないだろ」

「アナタの云うボンヤリってのも随分いい加減で曖昧な言葉だけど、セラムも別にボンヤリはしていないけど興味のないことはコレっぱかりも気にしないっていう意味で言えば、あの娘は相当ボンヤリさんよ」

「ネンチン曹長がせっかく手入れした方のブーツを履いてくれないって時々こぼしてました。毒の泥の話があって、ガントレットとグリーブの着用徹底と車内持ち込みの禁止が部隊に通達されるちょっと前の頃までマークス少佐の靴は割と汚れてましたね」

「泥の中を動いていればしょうがないんじゃないのか」

「行軍中の士官の服装が汚れるのはしょうがないんですけど、それを綺麗にするのも従兵の仕事のウチですから。隊長っていう人たちの服装が汚れていると下士官や従兵の質が疑われるし隊長の統率も疑われるって感じです」

「中隊長と大隊長の気分の違いにあの娘あんまりついていけてないのよね。戦車大隊ってのも戦力規模も予算規模も大隊どころかそれ以上だけど、人員で考えたら中隊に毛が生えたようなものだし、戦車大隊の本部って基本戦車の中でこぢんまり納まるように編成されているから、他の部隊と違っていわゆる兵隊は殆どいないしね。千人超えるような兵隊預かっている部隊長が前線に立って兵隊と一緒に泥こねているなんて百年も前に終わったことになってるはずだったんだけど、戦車大隊じゃそうもいかないしね」

「戦車そのものも軍曹が車長で少尉と中尉が運転と砲手っていうややこしい配置も結構ありますよね。階級どうでもいい感じの会話が無線でだだ漏れになってたり」

「その辺の訓練とか全然間に合っていなかったからね。使える人間を人選して椅子に配置するのが精一杯だったわ。セラムとかそういうのなんとなくうまく丸め込んでやっちゃうから彼女の下は良いんだけど研究とかで他所に持ちだしたりが出来ないのよね」

「服装の乱れが統率の乱れだって話はわかったが、ウチにいるセラムはシャンとしている感じだったが」

「別にシャンとしていないなんて云ってないわよ。興味のないことは放ったらかしにするのも兵隊の処世術だもの。でも陣地から離れるのは負けた時か死んだ時っていう歩兵様の中隊長閣下ならともかく、助けを求める友軍の悲嘆に駆けつける戦車大隊の指揮官様としては、汗さえもバラの香りがして動くたびに風に星が舞うような、そういう爽やかな神々しさが必要なのよ」

「汗の酸っぱさを隠すには柑橘系の方が良くないか」

「その辺は研究しているものがあるなら教えて。割と真面目な話で戦場と匂いの話は深刻なの。毒ガスの話や洗濯の話はさておいてね。ともあれ私達の部隊がカッコよく勝つために色々している中であの娘のブーツは実は問題なのよ」

「本人に言ってやれよ。それにショアトアの話では直ったんだろう」

「こういう話は絶対直ることはないのよ。だからアナタも言ってやって。あの娘が騎兵隊の隊長で終わるか、カッコいい機動軍団の隊長になるかは、殆ど政治的な駆引きの段階なのよ」

「なんか、演劇の主役を決めるような話だな」

「まさにそういう局面なの」

「アレだけ実績があってそうならない可能性があるってのか」

「あの娘の性格がそういう可能性を求めていないの。それにラジコル准将はああいう好みの割には組織の波風を好まない方よ」

「つまりどういうことだ。セラムが昇進できないっていうのか」

「あの娘の昇進は別段どうでもいいんだけど、逆よ。あの娘を昇進させて何処かの間抜けが入り込んで勲章目当てに帝国領に逆侵攻とか言い出すと首が締まるようなことになるなぁと思っているわ」

「そんな馬鹿なことを思いつくような連中がいるのか」

「そりゃいっぱいいるわよ。鉄道で兵站線が好転すれば帝国に押し込めるって数千年来の復讐戦ができる機会だって息巻いている連中もいるくらいよ」

「国内の鉄道網の完成すらまだ当分先だっていうのに気の早い話だ。大元帥はそういう感じではなかったが」

「あの方はまぁ兵站って云うよりも国内の軍政を監督されている方で一段上の立場の方だし、まぁこう言っちゃ何だけど、あまり戦時向きの指導者ではないわ。尤もその御蔭で今回の戦争で国内の混乱が最小限で抑えられたとも言えるわね」

「帝国と正面切って戦うために百万動員してたら今頃凄いことになっていましたよね」「戦死者より餓死者のほうが多かったかも。命令通りに国内を動くだけで大騒ぎだっていうのに戦争なんかできるわけないわ。帝国はどうやってるのかしら。なんか大きな畜獣の馬車鉄道みたいなのは見かけたけど、アレだけじゃ百万人を何百リーグも運べるだけでしょ」

「まぁ、むこうは百万人でも送りつけて田畑耕すついでに鉄砲と矢玉を送りつけてれば、こちらが音を上げるまでのんびり過ごすつもりだったんでしょう」

「その何百万人だかに鉄砲と玉薬送りつけるだけのために、このヒト十年かかってるのよ」

「そんなの我が君の千分の一の匹夫たちだって百万人いれば我が君の千人分の仕事をするってだけのことじゃないですか。必要があるとして必要なだけおこなうという知恵も何もいらない物理を倦まず弛まずただひたすらおこなうことが兵站の極意ですよ。共和国の皆様の気合がダラシナイってだけのことです」

「理屈はマリールの言うとおりだ。帝国と共和国では市井の感覚が違いすぎる。正直、共和国に帝国の正面を押し破って戦争に勝てるだけの国力はないね」

「でもアナタ、ふらっと往って女千人もカッ攫ってきたじゃないの」

「まぁそうなんだが、別段千人ばかり拐ってきたからって傾くような国じゃないよ。人間を牛馬のように管理しながら数を揃えることができるような国なんだ」

「どういうこと。この子たちそういう扱いだったの」

「まぁ、もうちょっと色々あるんだろうが、ボクの倫理基準から云うと論外だったから、まとめて引っ拐ってきた」

「土地によっては未だに食人当番とかもあるらしいですからね」

「どういうこと。人を食べる当番でもあるっていうの」

「クジみたいなので貧乏子沢山の家を選んで、家畑に家畜を付けて揃えられるくらいの金額で家族を食肉に出させるんです。まぁむかしむかし大昔の風習で今更どうかと思うんですが、帝国も広いですからね。十万年も人の世が続いたってのに未だに龍や巨人が怖くてしょうがない人たちも多いんです。亜人とか肉に薬効があることになってたりして割と本気で信じている人も多いようですね。私とか魔術師で亜人ですからね。捕虜になったらおそらく帝国の将軍様の薬膳に滋養おいしく召し上がられると思いますよ」

 マリールは何でもないように云ったが、冗談というだけでなくそういう事例が過去にあったのだろう。

「まさかそういう理由で捕虜交換の交渉がうまくゆかないんじゃないでしょうね」

 リザが流石に怪訝そうに尋ねた。

「どういう理由かはともかく、戦時交渉が進まない理由はたくさんあります」

「気違い沙汰ね」

 具体的な話を口にしないマリールの様子でリザも雑談として扱うことにした。

「お沙汰を出してるのが、大陸の向こうの海の向こうの皇帝陛下ともなれば、流石に何千リーグも彼方の土地には興味も理解もないってことでしょう」

「それなら無駄なちょっかいを出さない慎みを持ってほしいわ」

「うちの国も慎み深い人たちばかりというわけでもないようで、帝国との戦いが割とあっさり終わったから今度は西だって話も言い出している人がいるって逓信院では話題になっていました」

「ボクの十年の投資がアッサリか。エンドアの事業もまだ始まったばかりで、東部戦線の再占領解放も帝国軍捕虜の移送吸い上げも終わっていないっていうのに、予算が途切れそうだって話を聞いて驚いているよ。話によればエランゼン城塞が吹き飛んで戦争は終わったからもういいだろうってことらしい」

「大元帥はそういう感じではない様子だったけど、そういう参謀研究があることは聞いたわ」

「あの方は、まぁ、凡庸って云うと言葉は悪いですけど、日々満ち足りた方ですからわざわざ乱を起こすような方ではありませんが、私達みたいな小娘が戦場で活躍できたことが気に入らないご年配の方は大本営には多い様子です」

「気分はわかるけど、具体的には」

「メリガス将軍の下のレーマン中佐とかという方の従兵の方が靴紐が解けていましたので指導してやりました。ショアトアも准将がお勤めするときに恥をかかせてはダメよ」

「そういうのは許されるのか」

「兵の指導は士官の一般義務ですよ」

「いいのよ。この娘が絡んで分けのわかんないことになったんじゃないかって心配しているなら、士官が気晴らしに兵を殴るってのはよくあることよ。兵隊にとっても気安い仲の士官って扱いになるらしくって、私も復帰していきなり初日に知らない兵隊に気合入れてくれってビンタ飛ばしてきたわよ」

「兵隊ってのは相当馬鹿なのか」

「バカなのよ。ああ。うん。いや、あのね。……ああ。マリール。つまりレーマン中佐が無礼を云って腹を立てたのね」

「どちらかだかの師団の参謀様が、そんな私ごときに無礼を働くなんて。ああ。まぁ二個師団分の戦力を好きに使えるなら帝国の棄てた城塞を落とすくらいワケがないとか、股を開いて規定外員数外の装備を手に入れたとかそういう事を云ってたわけですが。ああ、まぁ、事実ですから腹は立ててませんよ。私は十年前にもお姉様とたった二人で五万からの兵隊の指揮管制が出来ることを示したわけですし」

「まぁだいたい事実ね。この人が男の尻を好むような人だったら私に昇進できるような機会はなかったわ」

「それで指導ってのは何だ」

 共和国軍の内情を知らないマジンが改めて尋ねた。

「アナタがレーマンっていう中佐の名前を知るくらいにはなんかやったわけね。兵隊を投げ飛ばすくらいしたんでしょ」

「まぁだいたいそんな感じで」

「本当に靴紐は解けてたんでしょうね」

「空中では間違いなく解けていましたね」

「それでいつの出来事なのよ」

「昇進した翌週、待命許されての後ですね。晴れて軍務から足を洗える晴れやかな気分に水をさした出来事でした」

 空々しく目をつむり悲しむようにマリールが言った。

「まだ先月のことじゃない。いいわ。メリガス将軍に会ってくるわよ」

「そうしてください」

「あの方、苦手なのよね」

「知っている相手なのか」

「そりゃ、准将ともなれば上役は元帥閣下と将軍閣下だけだからね。大本営に足を向けられるような現役の将軍閣下とは一応顔を合わせたわよ」

「今聞いた話だと碌でもない様子だったが、話のわかるような人物なのか」

「バカね。話のわかる官僚なんているわけないでしょ。官僚には話はわからせるのよ」

「どうやって」

「そんなの腕づく力づくに決まってるじゃないの。兵隊の親分よ。最後は殴って云うことを聴かせるのよ」

「そんなので官僚が言うことを聞くわけ無いだろう」

「まぁそうだけど、半分は気合ね。残りの半分は事前に準備をするわけだけど」

「準備でケリが付くような相手なのか。というより、お前が乗り込んで行ったらそれこそ厄介事にならないか」

「まぁなるかもしれないけどね。このバカが変な風にケンカを売ったならアナタのところに話が飛び火する前に手を打った方がいいに決まってるでしょ。少なくとも東部戦線が落ち着くまで、エンドアの開拓が落ち着くまでバカな連中を諌める必要があるのは本当だし、バカの御大将がどのくらいバカかって確かめる話はする必要があるわ」

 机の下でリザとマリールが互いに蹴飛ばしたり踏んだりするのを止める気にもなれずマジンはため息をついた。

「それで、ボクにできることは」

「ないわ。あるわけ無い。……あ。いえ。あった。このバカに仕事を与えてやって。四六時中家と仕事場を離れられないような定時定時仕事があってサボれないようなの。仕事をサボったらカッチリ記録が残るような仕事。力仕事でもいいけど、そういうのだと要領いいからダメね」

「ああ。そしたら、私塾の先生やりますよ。なんでしたっけ幼稚社ですか。八年ぶりですけど、川沿いの村にありますよね。なんてったって初代塾長ですし。前の時は時たま連絡室に出頭する必要がありましたけど、今度は待役ですからね。ノンビリ出来ます。ショアトア。アナタ手伝いなさい」

「私は准将の従兵があります」

「あ、それしばらくお休み。ってか軍学校にねじ込むまで待機」

「え、な、そ、ま」

 そう云われたショアトアが口をパクパクさせながら、言葉にならない様子だった。

「え、なんで今さらそんなことを言い出すのか、お姉さま、って言うか、あのね。年齢は胸に縫い付けたりしてなくても、身長は見ればわかっちゃうでしょ。二年も経てば追いつくかと思ったけど、成長期は年齢をごまかせないからね。大本営を歩き回るのに最低身長を割っているような兵隊を従兵にして連れ歩いたら、私がいろいろ咎められちゃうわよ。前線だったら別に多少のことは誰もが気にしないけど、大本営はまさにそういうところを気にするのが商売な人たちの集まりなんですからね」

「む……。ぐ」

「ショアトアはマリールと一緒にお屋敷や村の子供達に勉強を教えてあげなさい。本当はきっとアルジェンやアウルムの仕事だったんだけど、私が取り上げちゃったからね。あの娘たちが帰ってくるまでアナタが代わりをやってあげて」

「今の話の感じだと、キミはもう早速軍都でギリギリ働くつもりなのか」

「バカね。話の流れを聞いていなかったのかしら。まずはこのバカが喧嘩を売ったどこぞのバカの御大将の人となりを調べる必要があるでしょ。ギリギリ働くのはそこからよ」

「つまりそれが終わったらギリギリ働くってことかい」

「大元帥の参事ってまさにそういう仕事よ。ああ、うん。……いい。このバカに喧嘩を売られたバカは気の毒なバカだけど、本当のバカかもしれなくて、その御大将がどのくらいバカであるかを知る必要があるの。もっと云えば、その御大将が本当の大バカ、バカの王様じゃなかった場合、西部域は実はかなり危険な状況にあるとも言えるの。歴戦の将軍が戦争の兆候を嗅ぎとっているの。それが単に東部戦線に乗り込みそこなったっていう勲章目当て名声目当ての馬鹿騒ぎであればいいけど、今現役で将軍をやっているような将軍はだいたい筋の通った戦争屋よ。戦争を誰が起こすつもりなのかはともかくそういう話があるなら聞いておく必要がある」

「今度は西が戦争になるっていうことか」

「西部域は年がら年中戦争しているも同然よ。小競り合いばっかりで、まぁ隊商を助けるとか匪賊が出ただとか町や集落の支配者が変わったとか、よくわかんない理由で兵隊が苦労させられている土地。私も足を運んだことはないし、軍都からは遠いからいまいちピンとこないし、戦争の戦火自体があまり大事にならない形でいつの間にかなくなっているから戦争っていう感じもしないけど、まぁそういう土地。だから今細かい話は全然わからないけど今更言うような話ってわけでもない。戦車があるから西方征服できる、とかそういう軽々しい話ならバカメの一言だけどそうでなければ問題よね」

「ようやく新婚生活を楽しめるかと思ったら、軍都詰めか」

「このバカな義妹が変なネタを仕入れてきたから、その確認はしないとね。月に十日かそこら訪ね歩けばあらかたはわかると思うけど、どうせすぐ分かる話ってわけでもないと思う」

「お姉様が軍権を握った折にはぜひとも私をお招きください。バリバリ働きます」

 十年ぐらいしてこの時の話を二人は大笑いする。

 だがリザの身を案じるマジンとしては気が気でない数年を過ごすことになる。

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