第69話 3回目のデート(その10)

「お昼ご飯も終わったし、次はどこへ行こうかな?」

「そうねぇ。アレなんかどうかしら?」


 レストランで昼食を終え、仁と頼子は次にどこへ行こうか相談していた。すると頼子は和風の古びた建物を指さして、次のアトラクションを提案した。


「お化け屋敷か。いいねぇ」

「そうよね。デートと言えば外せないアトラクションよね」


 頼子が提案してきたのはお化け屋敷であった。遊園地では定番のアトラクションで、建物に入ると数々の恐怖心を煽るような演出が次々と現れるという、説明する必要までもなく、誰でも知っているものである。デートで入るのは定番で、仁にとって頼子に男気を見せ、好感度を上げるのには絶好のチャンスであった。そのような事情で仁は頼子の提案を受け入れ、お化け屋敷に入ることにした。


「いやあん、こわそーお」

「はっ、はっ、はっ、俺がいるから大丈夫だぜぃ」


 仁と頼子の前に並んでいた金髪ギャルとチャラ系男のカップルが暗闇の中に入っていった。わざとらしく怖がるギャルと、格好いいところを見せようとする男で、周囲に見せつけるように2人は腕組みをしながらイチャイチャしていた。


「あのようになりたくはないわね」

「月見里さんはしてくれないの?」


 カップルを見ていた頼子は、あまり良い印象を持っていないようで、コックローチさんを見るかのような視線を向けていた。一方、仁はそのカップルを少し羨ましいと思ってしまった。


「いやあん、こわそーう。……どっ、どうかな?」

「凄く可愛いです」


 頼子は仁の言葉を聞き、気持ちを切り替えて先ほどのギャルと同じように、腕を絡めてから仁に感想を聞いた。それは仁にとって衝撃的であり、思わず守ってあげたくなる気持ちになってしまった。


「お待たせしました。どうぞ」


 このお化け屋敷は、徒歩で移動するタイプで、先に入ったカップルから一定時間を空けて入るようになっていた。入り口を担当しているお姉さんが時間を見ながら、規定の時間が経過するのを待っていた。そして時間が来たところで、仁と頼子に対して中に入るように案内をした。


「中は真っ暗ね」

「そうだね。はぐれないようにしっかり僕に掴まっていてね」

「そうするわ」


 中に入ると真っ暗だった。誘導するためのものか僅かに足元を照らす光があり、恐らくそれに向かって歩けば良いのだろうと仁は思った。頼子とはぐれないようにしっかりお互いの体を密着させ、隣にいる存在を確かめながら順路と思われる方向に進んでいった。


 プシュー


「うわぁ」

「きゃっ」


 お化け屋敷ではお馴染みのエアーが仁と頼子を襲い、2人は驚きの声を上げた。


「ただの空気だよ」

「そっ、そうね」


 2人とも少しビックリして声を上げてしまったが、それを誤魔化すように仁が科学的な検証を行うと、頼子もそれに合わせるように頷いた。

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