第43話 ストーカー?(その3)

(あれから月見里さんと話していないなぁ)


 前回のデートから数日が経過した。仁は音羽と話せないまま現在に至っていた。


(話しかけたくても昼休みはどこかに消えるし、放課後はすぐに帰っちゃうし、どうしよう)


 今は授業中で、教師が退屈な話をしながら板書をしている。仁は前の席に座っている女子の後ろ姿を見ながら、とても悩んでいた。音羽は話しかけないでというオーラが出ていて、クラスの人達は必要以上に話しかけず、仁もその中に含まれていた。教室では話しかけづらいので、昼休みや放課後に話しかけようとしたが、音羽はすぐに教室からいなくなり居場所がわからなかった。


(もうすぐ昼休みだ。このまま話しかけないままでいると辛いし、凄く悪いことをする気がするけど、月見里さんがどこに行っているか探りを入れよう)


 仁はこれ以上音羽と話ができないのは辛いと感じるようになり、昼休みに彼女がどこに行っているか探りを入れることにした。



「今日の授業はここまでだ」


 男性教師がそう言うと午前の授業が終わるチャイムが鳴った。昼休みに入り、クラスメイト達はそれぞれ別れて昼食の時間を過ごすことになった。


(さて、行動を起こすぞ)


 仁は授業中決意したことを実行に移すため、音羽の様子を探ることにした。


(やはり月見里さんは誰とも一緒に昼食を食べないようだな)


 今までは何となくそう感じていただけであったが、仁は改めて音羽を観察したことで、昼休みに入っても誰とも話そうとせず、待ち合わせもしていないようであった。


(行動を始めるようだな)


 音羽は通学用のリュックから、弁当袋と思われる小さな巾着袋を取り出した。それを持って他の生徒達に紛れるように教室から出て行った。仁は距離を置き、音羽に気付かれないように跡を付けることにした。



(この先は階段だな)


 音羽は歩いて廊下を進み、途中で曲がった。その先には階段があった。


(うーん、上か、下か、どっちだ?)


 仁は気付かれないように距離をとっていたため、音羽が上に移動したか、下に移動したかわからなくなってしまった。他にも生徒がいたため、足音で判断することは不可能な状態であった。仁が今いる校舎は鉄筋コンクリート3階建てで、現在2階であった。そのため、音羽がどちらに移動したか目視で確認できていない以上、どちらの階にも移動した可能性があった。


(月見里さんはあまり人と接触するのを好まないようだから、人の多い1階は行かないかも知れない。上の階は上級生がいるから特に用事がない限り行かないと思うし、うーん、どっちが正しいんだ)


 仁は考えれば考えるほど、音羽がどちらに移動したかわからなくなっていた。


「仕方ない。表が出たら上、裏が出たら下だっ!」


 仁は運に頼るため右足の上履きを脱いで足先に引っ掛けた。これを蹴り上げて上履きの裏表を見て、上に移動するか下に移動するか決めることにした。

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