第7話 side:主人公 − 双子の姉妹 −
私たちがこの世界に攫われてきた日から二週間が経った。
人によって感じ方は違うと思うけど、私たち姉妹にとってはこの二週間はとても長く感じた。
「
「
「亜里咲は目が赤く
「外を眺めても知らない街が広がってるだけだし、空気も違う気がする」
「でも、外を眺めてたら少し安心するんでしょ。私も同じだよ」
少し勝ち気な私と少し気弱な由依で、多少の違いがあるだけで何もかもが似ている。ずっと一緒にいるのが理由の一つかもしれないけど、話題に出たりする一卵性双生児特有の通じ合っている部分が私と由依にはある。
そんな私たち姉妹の支えも希望も一緒だった。
◇◇◇◇
高校に入学して始めての試験を終えて数日が経った日。二人で試験結果がもうすぐわかると盛り上がっていた。
「由依、全教科が同じ点数だったら笑えるわね」
「小学校も中学校でも、さすがにそれはなかったよ」
「一度くらい同じ点数で、同じ箇所を間違えるとかあっても良さそうじゃない。一緒に勉強してるんだからさ」
「クラスが違うのにカンニングを疑われそうだよ」
そんな話しをしている時に、二人の足元が眩い光を放ちお互いにお互いの手を強く握った時には、もうこの世界に来ていた。
この日から二週間経った今日までのことを明確に覚えてる。
初日は最悪の一言で片付けられる。
突然のことで私は頭が真っ白になってしまったし、それは由依も同じだった。
わけのわからないことを話しだす大人たちの気持ち悪さに吐き気がした。
由依が先に泣いてしまいそうなり、泣きそうなのは私も同じで二人が一緒にいなかったら、強く手を握り合っていなかったら、崩れ落ちて泣き
信じられないようなことばかり言われて、魔族を殺せと強要してくることに、頭がくらくらしたのを覚えてる。
職業鑑定の石板とかいう意味のわからないものに私が先に触れると表示された職業は〈大魔導師〉という攻撃魔法系の上級職。由依には〈大主教〉という回復魔法系の上級職が表示された。
この時は身体中が恐怖に埋め尽くされた中でも
二人とも色々と限界の中で、私たちを絶望の底に突き落としたのは次の男性が石板に触れた後に起こる。
その男性の職業は〈釣り人〉で、生命力などの各数値が表示されていたけど二桁ばかり。
私の生命力が731で由依が714なのに対して、男性の生命力は12しかなくて他の数値も似たようなものだった。
彼の追放が決まり、私たち姉妹はどうしようもなく恐怖で塗り固められていった。
知らない世界で意味のわからないままに放り出される怖さは計り知れない。
私たちが同じ立場になっていたらと想像してしまい身体が震えた。
私たちの感情はそのまま顔に出ていたと思う。私たちと目が合った彼は一瞬だけど笑顔を浮かべた。本当に一瞬だったけど、見間違いではなく私も由依も確かに見た。
その日、彼に対してこの世界の人たちが取った行動は残った七人に暗い影を落として絶望の象徴となった。
そして、あんな状況の中で私たち姉妹を気遣うように浮かべた彼の笑顔が強く印象に残って、私たち姉妹の希望となった。
私と由依は高校生にもなって、夢見る子供っぽくてバカみたいだと思われることをしている自覚はある。
こうして窓から街を見下ろしていると、彼の姿が見つかるかもと、助けにきてくれるかもと思ってしまう。
一瞬だけでも笑顔を浮かべたのは彼だけで、彼の笑顔は特別だから私たち姉妹の大きな支えになってる。
追放された彼とは違って、私たち七人は救世主として扱われて、全員に大きな部屋が一人一室ずつ与えられているし、食事も三食与えられている。それに使用人までいる。
それに対して特別だとかふざけたような感情は一切湧かない。見下ろす街の人よりも裕福で恵まれていると聞かされても反感しか湧かない。
二日目から騎士との厳しい訓練が始まり、三日目には魔物と戦わされた。
人の形をしたゴブリンの首を
魔物といえど血を流すし、魔物が焼ける不快な匂いに私たち姉妹は揃って嘔吐した。
訓練を
私と由依は同じ部屋で過ごし、同じベッドで一緒に寝ないと眠れない。
三食与えられても、ろくに喉を通るわけがない。
使用人なんて、この世界の人間なんて、怖くて気持ち悪くて、そばにいてほしくない。
世界が違うからか、考え方が違うからかはわからないけど、私と由依との関係とは違って、この世界の人たちとの間に大きな
こちらの世界に攫われてすぐの頃は七人で集まって話しをしていたことも多かったけど、今では話す機会も減った。
みんなが適応しだしたのかはわからないけど各自で自由に行動するようになったのが理由の一つ、そして私たち姉妹がみんなを避けるようになったことも理由の一つ。
私たちがみんなを避けるようになったきっかけは、十日目に行われた魔物のオーク討伐の訓練。
この日以後、オークを倒した聖騎士の男性が力に酔いしれていると思う行動を取り出した。
私たちはレベルに対して各数値が高すぎて、戦闘の訓練として戦っている魔物を倒してもレベルが上がらないために数値に変化がない。
それなのに聖騎士の男性は目に見えて動きが変わった。斬ることに対して
私と由依はそうなりたくはない。今は聖騎士だけしかそういうのは見て取れないけど、一緒に行動しているとみんながそうなってしまう気がする。
戸惑いや
けれど、そういったものが全てなくなったとしたら……。
◇◇◇◇
「もう、また
「由依、お姉ちゃんは私じゃない」
「双子なんだし、どっちでもいいよ」
「由依、ここから逃げられると思う?」
「難しいよ。使用人が見張りを兼ねてるっぽい」
私と由依は、最近になり逃げる計画を立てている。逃げる方法や、その後のこともお金のことも問題は山積みだけど、このまま捕らわれているよりはマシな気がする。
彼が助けに来てくれたらと夢見ているのは事実だけど、どこかにいるはずの彼と合流したい気持ちがある。
私たちはそう思っていたけど――
何箇所も切り刻まれた彼の制服のブレザーが全員の前に差し出されたのは、それから三日後のことだった。
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