地球防衛軍

新たに創設された地球防衛軍がまず手をつけたのは、

世界の破壊だった。


もちろん予期せぬ事態だった。

創設に関わったある国の大統領はうろたえながら、

地球防衛軍の総帥に抗議の電話を入れた。


何をしている総帥!

世界を守るのが君たちの仕事だろう!

これじゃあやっていることが真逆じゃないか!


しかし総帥は平然と答える。


どこが真逆なんです?

だって我々は地球防衛軍ですよ?

政治の世界、介護の世界、芸能人の世界、職人の世界……。

世界にはいろいろありますがね、それらはすべて人の脳内に存在する人工物です。

そんな世界がひとり歩きして、今や地球を侵食している。

太陽系第三惑星、かけがえのない自然物、地球を。

これは許されざる暴挙です。

だから我々は守らねばならない。

この世界から、この地球を。

そうです。

全世界を敵に回したって、僕は地球を守ってみせる。

なぜなら僕は、地球防衛軍だから。


ダメだこりゃ、と大統領は思った。

完全に自分の世界に浸ってやがる。

いったい誰がこんなやつを総帥に?

って、私も推薦したひとりだっけ。

世界のリーダーも楽じゃない。

この後始末はどうしよう。


電話を終えると、二人はそれぞれの世界に戻っていった。

交渉は決裂。

果たして世界はどうなってしまうのか。


ところでこの戦いについて、地球さんはどう思いますか?

当事者のくせに答えは沈黙。

こうして地球は言葉の世界に抗っているのです。

なんて、地球の世界のコメンテーターが代弁するだけ。

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