第28話「重複」

 *


 この陰鬱な、作家志望の日常風景を描写したつもりになっている内省的私小説も、今回で第28話となる。飽き性の私である。いつ飽きるのだろういつ飽きるのだろうと心配していたのだが、長く続いたもので、文字数にしてこの度30,000文字を迎えた。パソコン上の容量にして、103KBキロバイトである。


 私はMicrosoft officeのWordを使って執筆している。他にも色々なソフトがあることは知っているけれど、中学時代からWordを使っているので、今さら変えようとも思わない。まず新規文書を開き、縦書き、40行×40文字に設定、執筆を開始する。それははや私にとって習慣になっている。


 まあ、中学時代から作家を志望しているくせにまだいないのかよ、という話でもあるけれど――そこには色々と事情があるのである。


 家庭の事情だったり、学校の事情だったり。


 まあ、色々である。


 普通の家ではなかった――とだけ、言っておく。「普通なだけの家庭」なんてないと言われればそれまでだが、私の家は、とにかく「普通」ではなかった。


 それもまた、語るべき時が来た時に話そう。


 さて。


 ここまで続くと、一作家志望として、一抹の不安が私の中を過る。


 それは、話の内容が重複する、という悪い可能性である。


 もしこの陰鬱な私小説が延々と続く場合、最初の話を忘れて同じような話を書いてしまう可能性があるかもしれない、ということである。


 毎回、話の内容に沿った副題を、二字熟語で付けている。タイトルや副題は短ければ短いほど格好良いと思っている類の、痛い人間なのである。


 いや。


 別段、昨今ネット小説上での流行をほしいままにしている、タイトルが長い小説を批判しているというわけでは、断じてない。むしろそれは流行はやりとして私も取り入れるべきであると、積極的な姿勢を示したいくらいだ。最早それらは一時代を築いていると言っても過言ではない。それらを安直に否定しようとするほどに、私の頭は頑固ではない(と思っている)。


 タイトルが長かろうと短かろうと、結局読まれるのは内容なのだ。


 そして、それを読み、面白いと思った方がいる――ということなのだ。


 その事実は、受け止めなければならない。


 ここで私の創作論を展開しても良いのだが、生憎私のそれは、誰かから聞いたような、どこかで見たような、他人のやり方をツギハギにして無理矢理それっぽいものをでっち上げたようなものなので、人に聞かせられるような類のものではない。故に、その機会が訪れることは永遠にない。そういう話は、自分をきちんと確立していて、自分の核をきちんと持っていて、ブレない自分を維持できている、ちゃんとした人のものを参考にするべきだ。


 Xのアカウントの方で滅多にポストしないのは、そういう理由でもある。


 私は、まがい物である。


 だから、化けの皮が剥がれるのが、怖いのだ。


 そもそもSNSを上手く使いこなせる自信がない、という理由も、大いにある。自分の発言が、一瞬にして世界中に広がり、永久に消えなくなる。なんと恐ろしいことだろう。だったら、初めから投稿しない方がマシである。


 とはいえ、である。


 自作をより多くの方に読んでいただくためには、今の時代、SNSの拡散力というのは、ほぼ必須のようなものでもあることは、事実である。少なくとも私のような作家志望にとっては、読んでもらえないというのは、死活問題なのである。


 時代の奔流ほんりゅうに置いて行かれぬように。


 現状の執筆できる環境に感謝しつつ。


 せめて毎日を、大切に過ごすことにしようと、私は思った。




(続)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る