第6話:美女(敗者)が仲間になった!

 エグイことになったが、アレが地上に落ちていたら大惨事になっていた。

 城を壊したくないと言っていたのに、あんな大魔法を放つとかどうかしている。

 何はともあれ、あれを防ぎきった俺はよくやったと思う。

 未だに信じられないといった様子で空を眺めるエイシアスに、俺は問いかける。


「さて、俺はまだ余裕だが、このまま続けるか?」

「……いや。私の負けだよ。あれが正真正銘、私の全力だ。もう魔力がない。防がれた上にまだそんな余裕があるのは可笑しいんじゃないか?」

「どの口が言ってやがる」

「本当に人間かい?」

「俺は善良な人間様だ」

「逆にどの口が言っているのか……いったい何レベルなんだい?」

「8000だな」

「ははっ、それじゃあ7000レベルの私とは勝負にならないわけだ」


 エイシアスのレベルは7000か。

 お前も大概化け物だぞ。


「それで、負けを認めたってことは、俺に服従するってことでいいのか?」

「それが約束だ。今更になるけど名前を聞いても?」

「テオだ」

「私はエイシアス。これからはよろしく頼むよ、主」


 こんな美女から主と呼ばれるのも悪くない。

 俺とエイシアスは城に戻り、配下の悪魔や天使に俺に負けたことを伝えた。


「これからはテオが私の主だ。わかったね?」


 有無を言わせない圧力が彼女から放たれる。


「それで主様。これからどうするのか聞いても?」

「その前に聞きたいが、ここがこの森の最深部なんだろう?」

「ええ。この森で私以上に強い魔物も人も存在しない」

「そっかぁ……でもせっかくだしレベルくらいはカンストさせるか」

「なら私も付き合うとしよう」


 ――ってわけで、俺はエイシアスと一緒に森の魔物を狩っていた。

 グングンとレベルが上昇し、一カ月足らずでついにレベルアップが止まった。

 俺のステータスにはレベル9999の文字。折角だからとエイシアスのレベルもカンストさせておいた。

 今は城でのんびりティータイムと洒落込んでいる。


「主よ。これからどうするのか聞いても?」

「街にでも行こうかなって」

「人間の街にかい?」

「そう。俺って13歳でこの森に捨てられてさ」


彼女に俺が転生者ということを説明し、転生してからクズ親に奴隷として売られ、奴隷商で売れ残ってこの森に捨てられたことを話した。


「人間って本当にしょうもない生き物ね。でも、よくレベル10で生き残れたね?」

「それはスキルが優秀だからさ」

「転生時にもらった無限ってスキルね。聞いただけでは理解が出来なかったけど、本当にふざけた性能してるわね」

「神様のお墨付きだ。てかお前も大概だろ。んなことよりだ」


 脱線しそうだったので話を戻す。


「世界を回ろうと思うんだ。だってここに居たって退屈だろ?」


 その言葉に彼女の口元が緩む。


「ええ。ご一緒させてもらうよ」

「決まりだな。ちょうど足があるし、飛んでいこうぜ」


 決まったということで翌日には、俺とエイシアスは赤丸に乗って森の外を目指した。

 空の旅も案外悪くない。悪くはないのだが、景色に代わり映えがしない。


「俺、方向音痴だったのかな? ずっと出口に向かっていたかと思ったら逆方向とか……」

「ふふっ。でも私は退屈しないで済みそうだからよかったけどね?」

「同意見だよ」


 一週間ほどして俺とエイシアスは森の出口までやってきて降り立った。

 赤丸をどうしようか考えたが、エイシアスの魔法で小さくなって俺の肩に乗った。


「便利な魔法だな。俺は魔法が使えないから羨ましい」

「魔法よりもそれ以上の攻撃をする主はどうかと思うけどね。お互いレベルがカンストしてから戦ったけどまた負けたし」

「俺、よくここまで強くなったよ。てかお前、絶対ラスボスとかだろ?」

「ラスボス?」

「物語の最後に登場する強いやつのことだよ。いや、お前の場合は強すぎて隠しボスみたいなものか」


 そう考えるとあの森の奥にいたことも納得だ。

 つまり、俺は魔王など倒さずに裏ボスだけ倒したことになるのだろうか?

 まあいいか。


「歩いて街まで行くか」

「赤丸で飛んでいけばいいのに」

『ギャウ!』


 赤丸もエイシアスの言葉に頷いていた。

 考えてくれ、明らかにヤバそうなドラゴンが街に来て、そこから人が降りてきたらパニックだろ。

 それにエイシアスの見た目もある。魔王と思われて攻撃されたら、うっかり街を消し去ってしまうかもしれない。

 とのことをエイシアスに説明する。


「ふむ。ツノと翼を見えなくするだけでいいのか?」

「できるならそうしてくれ」


 指を鳴らすとツノと翼が見えなくなった。

 若干耳が尖っているがここは異世界なので問題ないだろう。


「んじゃ、のんびり行くとしよう」


 二人と一匹は街を目指し歩き始めるのだった。


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