第4話:お前、ラスボスとかの部類だろ

 俺が森で暮らし始めてから三年。

 気付けば16歳になっていた。

 そんな俺は現在、深紅の鱗を持ち、二枚の翼を羽ばたかせるドラゴンを相手にしていた。

 ドラゴンの口内に魔力が集まり放たれた。


「ブレスはやめろって! 服が燃える!」


 極光とも呼べるブレスに対して、俺が人差し指をクイッと上に向けるとブレスが当たる直前で真上に曲がった。

 天を衝いたブレスが曇天の空を打ち消した。

 さすがはドラゴン様のブレスである。

 俺は一瞬でドラゴンの頭上へと瞬間移動する。

 やっと出来るようになったんだよね。瞬間移動、簡単そうに見えてクッソ難しい。

 重力で空間を捻じ曲げるのだから当たり前。それに魔力もかなり食う。

 しかも目に見える範囲なので、見えない場所には移動できないという欠点がある。


「んじゃ、落ちろ」


 何百トンともいえる荷重を加えた踵落としをお見舞いする。

 ドラゴンが地面に墜落し、大きな砂塵を巻き上げる。

 砂塵を散らしてから地面に着地する。

 動けないように拘束しドラゴンに近づき手で触れる。


「うーん。殺そうかな?」


 するとドラゴンの体がビクッと反応する。

 俺と目が合う。その目はうるうると潤んでおり今にも泣きそうだ。

 え? もしかしてコイツ……


「俺の言葉が理解できるのか?」

『……ギャウ』

「そっかぁ……うーん。経験値が欲しいしなぁ」


 チラッと見るとやめてとばかりに涙を流している。

 お前ドラゴンだろ。誇りとかないのかよと呆れてしまう。

 拘束を解除する。


「はぁ、仕方ない。逆らったらすぐに殺すからな?」

『ギャウ!』


 見ると尻尾がフリフリしているが見ないことにした。

 もはや最初と比べて威厳が全くない。


「んじゃ空の旅でもするか。この森で強いやつのところへ!」

『ギャウ!』


 それなりに大きいドラゴンなので頭に乗ることにした。

 それから一年。

 今のレベルは7000。もう少しで一万になる。

 空から見渡すこの森はかなり広大で、地平線まで森が広がっていた。

 広い森だとは思ったが、広すぎやしませんかね?

 瞬間移動が出来るようになり何度か確認したが、こうしてじっくり見たのは初めてだ。


「そうだ。お前、名前がなかっただろ?」

『ギャウ!』

「俺が付けてやろうか?」

『ギャウ?』


 まるで「いいの?」とでも言いたげだ。


「ああ。そうだな……赤丸。お前は今日から赤丸だ!」

『ギャウ!』


 わーい! とでも言っているようだ。

 喜んでもらえたようで何より。

 それから赤丸の案内で強い魔物を倒し続けて二カ月が過ぎた。

 レベルは8000を超えていた。

 強敵を探して旅をしていると、黒い城が見えてきた。

 広大な森にポツンと一軒家。


「赤丸。あれ、なんだか知っているか?」

『ギャウ?』

「知らないか。まあ、行ってみようぜ!」


 城の近くに降り門の前に立つ。 

 改めてみると、小さいと思っていたがかなり大きな城だった。


「ラスボス感が凄い。赤丸はお留守番な」

『ギャウ!』

「んじゃ行って来る」


 城門を開け入って行く。

 意外にも花などが植えてあり丁寧に管理されているように見えるが、よく見ると魔法で作られたものだ。

 それだけ本物との区別がつかないほど精巧な魔法だ。

 すると複数の魔物とはまた違った気配があった。

 瞬間、四方から魔法が飛んできて爆発する。


「お客さんに攻撃するんじゃねぇ!」


 砂塵が吹き飛び、衝撃波で襲ってきた者達が吹き飛び壁に衝突する。

 見ると黒い騎士が二人と、黒い服に身を包んだ女性二人の計四人だった。

 気絶しているようで、殺す前に近くで観察してみることに。


「耳が尖ってる? エルフ……ではなさそうだな。うん、ツノ?」


 黒いツノが二本生えていた。

 騎士の方は……うん。兜取るとか面倒だからいいや。

 殺そうかなと思ったその時、気絶していた四人が目を覚まし俺から一気に距離を取った。


「警戒するのはもちろん理解できるけどさ、もうちょっとコミュニケーションとらない?」


 返答はなく、相変わらず無言である。


「会話する気ないの?」


 瞬間、騎士二名が前後で斬りかかってきたので、左の裏拳で後方の騎士を弾き飛ばすが、それだけで死んだようだ。

 前方の騎士の攻撃は引力で逸らし頭部を掴んだ。


「話す気がないなら死んどけ」


 騎士が爆散し、血肉を撒き散らした。

 俺の攻撃に二人の動きが固まった。


「で、話す気になった?」

「……何者だ?」


 魔法使いの一人がようやく口を開いた。


「ただの人間?」

「馬鹿を言うな。ただの人間がここまで辿り着けるはずがない!」

「うーん、本当だけどなぁ~まあいいや。あんあたら何者だ?」

「私達はアリシアス様に仕える悪魔だ」


 キミ、悪魔かぁ……


「その人も悪魔?」

「それは貴様が確認するんだな」

「あー、うん。そうだね。ところでアリシアスのところに案内してくれない? 話してみたんだ」

「……いいだろう」


 俺は女悪魔に案内されて城の中へと入る。


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