第5話 増えるメイドその2



「僕、動画投稿を始めることにしたよ」


「動画投稿?」


「うん、マリーとシルビアちゃんの仕事の様子を撮影して動画投稿してみようと思うんだ」


「ちゃんとシルビアとマリーちゃんには許可を取ったのか?」


「もちろんさ」


 タクトがシルビアとマリーの方を見るとシルビアはサムズアップ、マリーはコクリと頷く。


「まぁ二人がいいって言うなら構わないけど」


「ありがとうタクト。早速で悪いんだけど動画の確認をしてくれないかな?」


 ツカサの部屋に行き動画の確認をする。


「これ全部ツカサがやったのか?」


「前にやったことがあるからね。慣れたものさ」


 動画はプロが手掛けたような本格的な仕上がりで、マリーとシルビアの魅力を十二分に表現されていた。


「なぁツカサ、どうして動画投稿しようと思ったんだ?」


 タクトは疑問に思っていた事を聞く。


「そこの説明をしてなかったね。これはねタクトとシルビアちゃんの為でもあるんだ」


「俺とシルビアの為?」


 ダンジョン由来のアイテムや技術は法により守られてはいるが、それでも危険が無いわけではない。


 いわゆるブラックマーケットの場ではゴーレムの人気は高く狙われやすい。護衛として運用されることの多いゴーレムが狙われるというのもおかしな話だが理由がある。


 ゴーレムの種類は石が人の形をしたようなだけのスタンダードなものからシルビアのように人型、犬猫といった動物型と様々だ。


 特にシルビアのような美少女型は珍しく人気があり、すでに目を付けられているだろうとツカサは言う。


「だから僕がそばにいることを周知させる必要があるんだ」


 ツカサの実力、知名度はダンジョン事情に疎いタクトですら知っている。そのツカサがシルビアのそばにいることを広めるのが動画投稿の目的だという。


「まぁうちのマリーを皆に自慢したいってのもあるんだけどね」


「色々考えてくれたんだな。ありがとうツカサ」


 よくよく考えるとアパートの周囲の防犯強化もその一環なのだろう。改めてツカサに感謝するタクトだった。




 数日後。


「ネコをここで働かせて下さいにゃ!」


 住み込み希望のメイドがアパートにやってきた。


 やってきたメイドは全身ピンクで装飾はフリルマシマシ、ミニスカートに赤髪の頭にはネコ耳装備。オタク向けのメイドカフェにいるようなメイドだった。


「ネコは桃ノ木ネコと言いますにゃ。師匠に弟子入りするために来ましたにゃ」


「師匠?」


 ネコの話を聞くとツカサの上げた動画のシルビアを見て感銘を受け、いてもたってもいられずやって来たのだという。


「ツカサ、彼女は大丈夫なのか?」


「僕もこうして会うのは初めてだけれどネコ君の悪い評判は聞かないから大丈夫だと思うよ。…多分」


 不安に感じたタクトはスマホで桃ノ木ネコについて検索すると、


 殴りメイド、脳筋メイド、撲殺メイド…etc


 物騒なワードしか出てこない。


「おい、本当に危険はないのか?」


「はは…」


 スマホの画面を突きつけられたツカサは苦笑する。




「ごめんね〜、新しくメイドを雇う予定はないんだよ〜」


「そ、そんにゃ〜」


 ミコトから不採用を告げられネコはガックリと膝をつく。


「あ、でも普通の入居者としてなら大歓迎だよ。部屋もまだ空いてるし」


 メイドとして住み込みで働くのではなく一般の入居者としてなら問題ないとミコトから提案される。


「師匠のお側にいられるなら問題ないにゃ!お願いしますにゃ」


 こうして押しかけメイドがアパートの住人として加わることになった。





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