第13話 裏切りの事実(2) ※

 ルイが黙って2階の寝室の窓の外に長椅子を飛ばした。中には親密な体勢の2人がいた。1人はアルベルト王太子で、1人は宮殿で働く若い侍女だった。2人共何も着ていなかった。


 褐色の髪の侍女が喜んで全てを捧げている様子が分かった。衣服を身につけていない若い侍女は、豪華な寝室のベッドの上で四つん這いになり、裸になったブロンドの髪の王太子に後ろから激しく抱かれていた。


 抱きながら彼女の胸を後ろから手を伸ばした王太子が触り、彼女が快感に喘いで大きく嬌声をあげる様が見えた。振り返った彼女のピンク色の唇に王太子がキスをして、ますます勢いを増した王太子が彼女のお尻や胸を愛撫しながら顔を赤らめて腰を動かしていた。彼は侍女の彼女に夢中だ。


 侍女のあられもない扇情的な姿に王太子はますます興奮しているようだ。


 若い侍女は私も会ったことが何度かある。可愛らしい顔をしていて、私と年齢はさほど変わらないと思う。王太子の侍女の中で、彼女だけが若かったので記憶に残っていた。


 私は男女の営みと言うものを見たのが初めてだった。自分でも経験がないのに、最愛の男性が自分以外の女性を抱いている姿を見て、最愛の男性が獣のように熱烈に動いている様を見るのも初めてで、ショックが大きかった。


「もういいわ」


 私が力なくそうルイに告げると、高速で長椅子が飛んで宮殿に戻った。


「6月15日の午後4時だよ」


 ルイが説明した。


 豪華な客間のソファの上で王太子と抱き合うエミリーの艶かしい一糸纏わぬ姿が見えた。エミリーは幸せそうだった。ブルネットの髪を振り乱して何も身につけずに淫らに腰を振っていた。ツンと上向きの豊満な胸を晒して、王太子の上にまたがっていて、時より笑顔になりながら、見たこともない妖艶な表情で快感に顔を歪めている。王太子はシャツをはだけていて、下には何も身につけておらず、王太子自身のものを下から……。



 あぁっ……いぃっ…あぁんっ…んっあぁんっ……っあぁんっ……ぁっ


 馬に乗っているような仕草でエミリーが胸を揺らして腰を動かしていた。王太子は彼女の胸を遠慮なく愛撫して、時折彼女の胸の先をつねって彼女が大きな喘ぎ声をあげていた。窓が少し開いていて、私の耳にも彼女の喘ぎ声が聞こえていた。エミリーの扇情的な姿がますます王太子を刺激しているようだ。


 あぁっんっあぁっんっ……愛してぇっいぃっるっんっあぁっんっあぁんっ……ひやぁっんっ


 王太子は起き上がり、彼女の胸にキスをしていた。エミリーはのけぞったかと思うと、王太子の唇に自分の唇を重ねて二人の体はますます一体化して上下に動いていて、行為に夢中のようだった。


 ああんっあんっいやっんっ……


「エミリー、最高だ、綺麗だよ、気持ちいい」


 王太子は切なそうに顔を快感に歪めている。もう、親友だと思っていたエミリーの声が私の心と頭をおかしくしてしまいそうだ。


 おぉきいっからぁ……あぁっんっんっいやんっだめぇっんっあぁんっ……


 ブルネットの髪を振り乱して、王太子の上で淫らに腰を振って上向きの魅惑的な胸を揉まれている幸せそうな親友と、頬を赤らめて快感に喘ぐ彼の顔を見ることができた。


 私は泣けてきた。

 親友のエミリーは、私がアルベルト王太子にゾッコンで、王太子の恋人として私が彼のプロポーズを待っていたのを一番良く知っていた令嬢だった。


 王太子の護衛たちが、王太子に近づく女性を知らないはずがない。みんな知っていたのかもしれない。


 ――間違いない。


 ついさっきは、王太子は褐色の髪の侍女も抱いていた。侍女は別邸で四つん這いにさせられて嬉しそうに後ろから抱かれていた。侍女は可愛いらしい顔をしていて、若々しい体を思いっきり王太子に捧げていた。彼女も王太子が好きなのだ。表向きは、王太子は私を追っていることになっているのを侍女の彼女は知っているはずなのに、彼女の心は王太子のものなのだろう。

 

 ――こんなののイヤ。

 私は王太子と婚約するはずだった。いや、王太子と婚約した人生のパターンもあった。



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