第44話「暴走せし海竜王・3」
軽く距離を取る為に、俺は足場の結界を蹴って再びレイ・ドラグーンの頭の高さまで来た。海面付近にいれば狙い撃ちもいいところだからだ。
俺は先程の再生状態を思い返す。
今までの暴走魔族ならば頭部を破壊すれば死んだ。
それはエギルの村の神衣を纏った暴走魔族も同じだった。
だが、今回は頭部を消滅させたにも関わらず、それでも再生し復活した。
頭部を破壊して死なないとなると、狙う箇所は1つ。
「核、か……。」
先程、再生する時に一瞬だが露出した心臓核が輝いていたのが見えた。
魔族の弱点も基本的には他の生き物と同じで、頭部、心臓である核を狙えば倒せる。
特に心臓核はその個体を構成する一番重要な要素と言っていい。
俺は再び、こちらを警戒して一時的に動きを止めたレイ・ドラグーンの顔を見る。
「問題はどうやって倒すか、だな……。」
手持ちの魔法なら、レイ・ドラグーンの強度は容易に突破出来る。
だが、問題はあの再生速度だろう。
首ごと頭部を吹き飛ばしたというのに、再生にかかった時間は10秒も無かった。
適当な威力で傷を付けたとしても、即座に回復されるのがオチなのは分かりきっている。
完全な一撃重視、或いは重たい一撃を複数叩き込んで再生時間を遅らせ、心臓核を破壊、または奪取するのが望ましいか……。
「……よし。
単純ではあるが作戦を立ててニーザの力を身に纏い、
レイ・ドラグーンもまだ俺が戦う様子を見て、威嚇しながら縄張り全域に雷雲を生み出した。
「さあ、今度こそ死んでもらおうか、海竜王。」
手にしたスプリガンとゲデの両方を構え、俺は目の前の海竜に駆けた。
◆◆◆
雷雲から無数の雷撃が降り注ぐのを、俺はスプリガンで結界を張って防ぎ切る。
浸食魔法を付与された雷はスプリガンの力に僅かに染み込みはするものの、表面を削る程度の事しか出来ず消えていく。
スプリガンもゲデも2の世界・ファーエから流れ着いた物だ。
俺が魔法の為の触媒に使ってるだけで、2の世界の住人が使う力の本質は魔法とは違う。
浸食魔法の効き目は薄いのでは?という予想は当たった。
雷が通らないと見るや否や、レイ・ドラグーンは再び海水を持ち上げ攻撃の手段を変えようとした。
そのタイミングで、破砕連装の砲門を3つだけ目の前に寄せ、フレア・ブラストを装填して顔面に放つ。
「ギォオオオオオッ!?」
顔を焼かれ、痛みで咆哮を上げるレイ・ドラグーンから距離を取り、破砕連装を再び背後に戻す。
自身が出せる最大砲門数の50は展開しているし、既に次の魔法の装填しているが、今は使わない。
使うタイミングはまだ先だ。
受けた傷を再生しながらこちらを睨むレイ・ドラグーンに構えたゲデの切っ先を向け、今度はナイトメア・バーンを撃ち込む。
「がっ……、グルアァアアアアアアア!!」
放たれた特殊な音波によって、レイ・ドラグーンを構成する負の念が共鳴爆破を起こすが、レイ・ドラグーンは苦痛の滲んだ怒りの咆哮を上げなタイダル・ウェイブを発動させた。
それに加えて、家ほどの大きさのある無数のティアドロップ、雷雲からは雷撃が放たれる。
(かかった……!)
ゲデとスプリガンを一度仕舞いながら、再びバフォロスを抜き放ち、迫りくる災害に向け叫ぶ。
「遺跡での礼だ。たらふく喰い尽くせよ!!」
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