リブオンミッション:Vivere Est Militare

in鬱

歴史の修正屋

 マルチバース、様々な宇宙が存在することを指す

 この世界は様々な世界線が存在し、世界線ごとに歴史が変わってしまっている

 俺が所属しているゲレニウスは歴史改変が起きた歴史を元に戻るのが仕事だ

 存在しないはずの生物が存在してしまい生態系が滅茶苦茶に破壊されてしまうこともある

 また、時空盗賊団(総称)という意図的に歴史改変を起こす組織も存在する。そのような組織と戦い続けるのもゲレニウスの役目だ

 荒事になることも多々あるため、ゲレニウスに入るには相応の力が求められる


 

 ――――――――――

 

 

 「フリア。お前は明日から来なくていい」


 「それはどういうことですか!?」


 俺はゲレニウスのΣシグマ支部に所属している。支部長に突如呼び出され、支部長室に入ると支部長が深刻そうな顔で座っていた

 俺は支部長の顔を見て声を掛ける勇気が出せず黙っていると支部長が重い空気を振り払うように言葉を発した

 だが、その言葉に俺は耳を疑った。俺はクビになるほど使えない人間ではないと思っている。支部長にも何度も評価されてきた

 クビになるほど俺は役立たずじゃないと思っている。俺は感情を抑えられず支部長に詰め寄った



 「その代わり、本部に行ってくれ」


 「え?」


 「私はお前を本部に推薦したい」


 「俺がですか?」


 「あぁ。これまでの活躍から見ても妥当だと思うんだ」


 ひとまずクビではないことに安堵し、胸を撫で下ろす

 ゲレニウスの本部は数ある支部の中から精鋭しか行くことが出来ない、エリートが集まる場所だ

 そんな場所に俺が?推薦してくれるのはありがたいが俺でいいのかと不安になる



 「俺でいいんですか?」


 「お前しかいないと思うけどな。胸を張っていってこい」


 「はい!」



 支部長の自信満々な表情を見て思わずそう言ってしまった

 俺は自信に溢れた表情で支部長の部屋を出る。だが出た瞬間、ため息が自然出ていた

 自室に戻り、ベッドにダイブして明日からのことを考える



 「はぁ……流された」


 支部長の手前、元気に返事は言ったものの冷静になると不安が勝る

 俺はやれるのか。明日からエリートと呼ばれる本部へ行くことになるという実感が湧かない

 天井を眺めて思考を巡らせていたが、ふと思った



 「ん?明日から本部……てことはこの部屋ともおさらばってことだよな」

 

 「荷物まとめないと!」


 もっと早く言うタイミングは無かったのか!人事異動とかってもっと余裕をもって伝えるものじゃないの?

 支部長、絶対に忘れてたな。あの人、物忘れ最近多いんだよなぁ。まさかこんな大事な事を忘れるとは……



 「クシュン!風邪という季節でも無いんだがな」


 支部長室では支部長が一段と大きなクシャミをした。



 俺は大急ぎで荷物をまとめなんとか夜には間に合った。疲れた……

 早めに寝て明日に備えるか


 ブゥン


 携帯に着信があり画面を確認すると支部長から明日の本部への集合時間がメッセージで送られてきていた

 メッセージの最後の方には今使っている部屋は明日入ってくる新人の部屋にすると書かれてあった

 明日は世の中で言う入社式が全ての支部と本部で行われる。入ってからずっと使ってきた部屋ともおさらばなんだと思うと寂しさが湧いてくる。その寂しさを胸にベッドで目を瞑った



 ――――――――――


 目が覚め支度を整える。部屋の扉に立ち、部屋の隅々を目に焼き付けるように見渡した

 扉に振り返り、ドアノブを回し外に出る。振り返る事無く支部を出て、最寄り駅に向かう

 人通りの少ない街を歩いて駅に向かい、無人の改札を通りホームで電車を待つ

 電車に揺られ気が付けば、目的の駅に到着していた。改札を通り、駅を出るとすぐ側にある本部が視界に入る

 Σ支部とは比べ物にならないほどの規模だった。俺は今日からここで働くのかと改めて実感する

 本部が徐々に大きく見えるようになり、とうとう本部の入り口に足を並べている

 不安と覚悟を持って俺は本部に足を踏み入れた



 「ねぇ」

 

 本部の敷地に入ると後ろから声を掛けられた

 俺が振り返ると紫色の髪をした可憐な女の子が笑顔でこっちを向いていた



 「あなたも今日から本部ですか?」


 「う、うん。君も?」


 突然の事で言葉が詰まってしまう。緊張していると思われたのか、ニコっと笑ってくれた

 あまり緊張を感じないようにしていたが、はっきりと実感した。俺は緊張している



 「私もです。今日から同僚ですね。よろしくお願いします」


 「こちらこそ。よろしく」


 彼女は笑顔で手を俺に差し向けてきた。俺も手を出し握手を交わす

 彼女の手は温かく俺の手がひどく冷え切っているように感じた


 

 「名前をお伺いしてもいいですか?」


 「俺はフリア。君は?」


 彼女は真っすぐな目で俺の目を見つめてくる

 彼女の目には自信や覚悟が感じられる。その目を見てハッとした

 俺もこんな目をしているだろうか。気が緩んじゃったけど引き締めなきゃな

 

 

 「私はアクリムです」

 

 「良い名前だね」


 「ありがとうございます。フリアさんも素敵なお名前だと思いますよ」


 そんな会話をしていたら時間が無くなっていた

 もう少しで約束の時間になってしまう

 早いところ中に入らないと

 


 「早く行かないと間に合わないませんね。行きましょう」


 「え?」


 彼女はそういうと俺の手を引いて、駆け足で本部の中へと向かっていく

 俺は一瞬混乱したが、彼女に身を任せて本部へと連れられていった

 本部の中には入社式を行う場所の案内看板が置いてあり、看板の矢印通りに進むとひと際大きな扉があった

 その扉を開けると大きな広間に出た。そこには既に大勢の人がいて、椅子に座って前を見ていた

 前にはステージのようなものが設けられており、天井からは入社式と書かれた看板が掛けられていた

 俺たちは空いてる席に座り、始まるのを待った

 

 

 「あのー手を……」


 席に座ったのはいいのだが、アクリムがずっと俺の手を握っていた

 俺がそういうとアクリムは顔を赤くして瞬時に手を離した

 温もりが消えて急激に手が冷えた。手を握り締めても温もりはもう無かった



 「ごめんなさい……!」


 「全然気にしないで」


 アクリムは顔を真っ赤にして何度も小さく頭を下げて俺に謝った

 この子って意外と抜けてる子なのかな

 何度も謝るのでさすがに気まずくなって苦笑いを浮かべた



 「大丈夫だから」


 「そうですか?ほんっとにごめんなさい」


 「これから入社式を始めたいと思います」


 同じやり取りを繰り返しているとステージの端に立っている人が喋り出した

 司会の人の言葉を聞いて俺たちは姿勢を正し、前を向く



 「まずはゲレニウス総司令からの挨拶です」


 ステージの脇から一人の黒の衣装に身を包んだ男性が出てきてステージの真ん中に置いてある教壇の前に立った

 あの人が出てきてから空気が変わった。場を支配しているかのような圧力、空気も心なしか重く感じる

 呼吸の仕方を忘れたように苦しくなる。アクリムも若干呼吸がリズム早くなっている。俺だけでない。全員が呼吸に違和感を感じている

 なんだあの人は?同じ人間とは思えない



 「ゲレニウス総司令のホックだ。君たちは力があるからここにいる。自分を信じて任務に当たってもらいたい。期待している」


 「我々の使は歴史の歪みを戻すことだ。それを心に刻んで本部で活躍してもらいたい」


 総司令はそういうとステージからはけていった。総司令がいなくなってから拍手が起きた

 空気も元に戻り、呼吸が安定して行える。いつもよりも息を吸う量が増える。水中から顔を出した時のように、必死に息をする

 あれが総司令……場にいるだけであれだけの影響力。噂には聞いていた

 総司令は世界最強の生物で勝てる者は誰もいないと。噂は本当みたいだ。戦わずしても勝てないと思わせるあの圧力

 圧倒的な雰囲気に飲まれる。改めて本部の凄さを実感する

 


 「すごい人でしたね」


 「うん。あんな人がいる場所なんだって改めて本部って場所を思い知らされたよ」


 「私も同じこと思いました」


 アクリムが小声で声を掛けてくる。俺は耳を傾け、小さく首を振って前に向き直る

 アクリムの顔は見ていないが声からして、俺と同じことを思ったのだろう。声が若干震えていた

 引き締めていた顔をさらに引き締めて式に参加していた



 「これにて入社式は終わりになります。最後に班分けがありますので隊員の皆さまはここで待機をお願いします」


 「班分け?そんなの説明に無かったよな……」


 「ご存知ないんですか?」


 「え?逆に知ってるの?」


 「えぇ。本部がグループで活動するのは有名な話ですよ」


 俺が小さく呟いたのがアクリムに聞こえており、目を丸くしていた

 周りの人もグループで行動するのを知っているかのように話している。支部は単独行動だった。一人で任務をこなす。これは本部も一緒だと思っていた

 


 「でも、なんで本部はグループなの?精鋭揃いなのに」


 「だからこそですよ」


 「だからこそ?」


 「本部の任務は支部とは比べ物にならないほどハードなんです。だから、任務遂行率を上げるためにグループで行動するのが規則なんですよ」


 「詳しいんだね」


 「これくらいみんな知ってると思いますけどね……」


 本部の任務がどれくらいハードなのかは分からないけど、精鋭たちがグループで挑んでいるということは相当なものなのだろうと思う。

 アクリムが苦笑いを浮かべた。本部に来るんだからそれくらい調べるのかもしれないが、俺は昨日本部行きを知らされた

 知らないのは仕方ないことだといいけど。支部の人でも知ってたら俺が無知なだけだ



 「これより班分けを行います。名前を呼ばれた者は前に出てきてください」


 「アルベル、ケール、パレード、モゼ」


 名前を呼ばれた4名が立ち上がりステージに上る。同じ色のリストバンドを渡され、右手に着ける

 あの4人がグループメンバーでリストバンドは同じグループであるという証なのだろう

 上に上がった4名はそのまま広間を出て行った

 


 「アクリム、オルブル、フリア、ベロニカ」


 名前を呼ばれるのを待っているといきなり呼ばれた。アクリムも一緒で椅子から立ち上がったと思わずアクリムの方を見てしまった。アクリムも俺の方を向いていて俺の顔を見てニコッと笑った。

 ステージの上に上がり青緑色のリストバンドをもらい右手に着ける。俺たちはステージを降りてそのまま広間を出た。

 

 

 「よし、じゃあさっそく新しくメンバーになったわけだし祝宴会といこう!」


 「賛成!」


 広間から出て少し歩いたところでアクリムと俺以外の二人がいきなり盛り上がった

 俺とアクリムは困惑して、お互いに顔を見合わせた



 「あぁごめん。勝手に盛り上がっちゃったね。僕はオルブル」


 「私はベロニカ。よろしくね」


 「はい。俺はフリアです。よろしくお願いします」


 「わ、私はアクリムと申します!以後お見知りおきを」

 

 「そんなに緊張しなくていいのよ」


 アクリムがめちゃくちゃテンパって変なこと言ってる。すごい緊張してるのがバレバレだ

 もしかしたら俺と接してるときも滅茶苦茶緊張していたんじゃないか?

 そんなアクリムを見てベロニカはアクリムに優しく笑った



 「あなたたち二人は新人よね?」


 「はい」


 「そうか。じゃあなおさら祝宴会をやらないとな」


 「そういうもんですか?」


 「そういうもんだよ。歓迎会みたいなものだ。パーとやろう」


 俺はベロニカとオルブルに連れられてある部屋の前に案内される

 部屋の扉にはターコイズと書かれている。周りを見るとターコイズと書かれた部屋が4つある

 


 「ここが今日から住む家だ。好きな部屋を選んでいいよ。まぁどの部屋も作りは一緒だけどね」


 「じゃあここで」


 「私はここにします」


 「じゃあ私ここー」


 「あ!おい!俺たちはじゃんけんだろ!」


 俺は右から2番目の部屋をアクリムは俺の左隣の部屋をベロニカは左端の部屋をオルブルは右端の部屋になった

 最後なんか一悶着あったけど、オルブルが一方的に決められて今日からの住処は決まった



 「荷物置いて一段落したら俺の部屋に来てくれる?」


 「分かりました」


 俺は部屋に入ってリビングに荷物を置き、荷物の中身を出して一段落してからオルブルの部屋に入る

 ベロニカとアクリムも同じタイミングで入ってきた



 「来たね。じゃあ早速パーとやろう!」


 オルブルの部屋のリビングに置かれた丸机には豪華な料理が置かれていた

 目移りするような品揃えで空腹を実感する。机を4人で囲むように座る



 「祝!新人歓迎会!」


 オルブルがそういうとベロニカとオルブルがクラッカーを取り出してパンと鳴らした

 突然のサプライズに驚いたが自然と笑顔がこぼれていた



 「色々聞きたいこともあるだろうから先輩である我々が君たちの疑問にお答えするよ」


 「楽しく過ごしながらね!」


 オルブルが誇った顔で胸をドンと叩く。だが、強かったのか若干むせた(ちょっとダサい)

 ベロニカは料理を食べながら親指を立ててグッドと言っているようだ

 にぎやかな本部生活になりそうだ。不安が少し解消されて笑顔になれた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る