I Want to Be Excited!(日本語)

「でもワクワクするじゃないですか!だって、転生なんて、若者なら誰もが一度は考えることですよ!」


 彼女は再びため息をつき、頭を振った。


「こうなることは分かっていました。人間は、二度目のチャンスとなると、皆とてもせっかちですからね…。では、よく聞いてください。転生には独自のルールや試練が伴います。あなたが想像しているような気楽な旅ではありません。」


「なるほど…条件があるんですね…仕方ないなぁ。その『条件』って何なんです?」


 彼女はまたじっと睨みつけてきた。どうやら、僕が真剣に受け止めていないことが気に入らないらしい。


「あなたには、この世界にある【第16世界ダンジョン】を攻略してもらいます。それをしないまま転生させるのは無意味です。この新しい世界があなたを受け入れるためには、あなたが何かをしなければならないのです。」


 これから行く世界って、もしかしてゲームの世界みたいな感じなのか?大きな目標があって、姫を救うとか、そんな感じ?


 簡単そうだな。


 でも、女神たんがその後でいろいろ説明してくれたこと、正直あまり聞いていなかった。


 ぼーっとしてしまっていた…考え込んでいたんだ。もっと真剣に受け止めるべきだと、自分でも分かってる。でも、難しいんだよな…


 自分が死んだ直後で、しかも初めて神様と会った瞬間に集中しろって?無理だろ…


 ただ、いくつかのポイントは頭に入った。特に、この【第16世界ダンジョン】というものは、この世界で誰も「攻略」したことがないってこと。そして、それを攻略しなければならないってこと。


 まぁ、大丈夫だろう?転生すれば、きっと最強になるんだし!


 ふふっ


 それに、失敗したとしてもどうせ女神たんに怒られるだけだろ?まあ、それも気にしないけどね。俺はこの【第16世界ダンジョン】を攻略する自信があるんだから。


 だって、俺はずっと冒険を求めてたんだ。これ以上ない機会じゃないか。


 絶対に失敗しない。


 いや…もし攻略できなかったら?


 いやいや、大丈夫。俺ならできるよな。そうだ、きっとできる。


 たぶん。


「ゴホン…」


「え?」


 あっ、そうだ…まだ女神たんがいるんだった。あぁ、また睨まれてる…。でも俺、何もしてないのに!ちゃんと…大人しくしてたと思うんだけど。


「私の話聞いていましたか?」


 やばい!なんか重要なことを見逃したっぽい…


「えっと…まぁ、ある程度は…」


「ある程度って…はぁ…。ただ覚えておいてください、輪廻転生の契約を果たすことが重要なのです。」


 女神たんはあまり満足していないようだ…


 ごめんね、女神たん!本当はもっと真面目なんだよ、俺!


「人間、あなたが夢想しているのは分かっていますよ……やれやれ…準備はできていますか?」


「もちろん準備はできてますよ!俺、生まれつき準備万端ですから!」


「分かりました。ただ警告しておきますが、少々不快な感覚があるかもしれません。二つが一つになるのですからね。それでは、行きなさい。」


「二つ…?」


「真剣に取り組んでください、人間。二度とここで会いたくはありません。」


 彼女の目が柔らかくなり、一瞬だけ心配しているような表情を見せる。


 彼女は俺の準備ができていないと思ってるのか?


 でも、もう遅い。彼女の姿が消えていき、質問しようにもできなくなった。


 女神たん、俺をあっさり送り出しすぎじゃないか…俺たち、結構いい感じだったと思うんだけど!


 色と風景の斑点が視界に浮かび上がり、一つずつ扉が開くようにして新たな現実が姿を現した。


 自分のものではない記憶が、頭の中に座り込むように定着していく。


 その感覚を二度味わう…二つの記憶。それぞれが互いに馴染まず、どこか違和感がある。一つは、状況に絶望する少年のもの。そしてもう一つは、自分自身の記憶。


 見知らぬ土地の野原で過ごした人生の断片。名前も知らないが、どこかで繋がりを感じるぼんやりした顔。さらに、自分には全くなかった未来への深い恐怖。


 聞き覚えのない名前を呼ぶ声の残響。鋭く、冷たい恐怖が胸を締め付ける。


 彼の恐怖であって、俺のものではない。でも、それは確かに現実味を伴っている。


 自分のものではない身体。それなのに自然で、しかし自分には馴染まない感覚。


 二つの感情と人格が均衡を保とうとしているようだ。まるで、より成熟した師匠が未熟な弟子を導いているように。

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