陽の哭く時


 「太陽のような笑顔」と

 誰かが形容し始めてどれくらい経っただろう

 燦然と耀く巨大な感情の塊は

 謎めいた宝石箱で据え付けられた台座に

 少しだけきまり悪そうに座っている


 取り巻いて

 廻り

 照らされ

 崇め

 恵まれて

 利用して


 少しずつ

 追い詰めていることも知らずに

 今日も一雫

 熙る間も無く

 自らの熱で消し飛ばしてしまった


 陽は、哭かない

 陽は、哭けない

 誰かが焼き付けたステレオタイプと

 自分の有り余る感情の熱のせいにして


 永遠に近い時間の「距離」をおいて

 同じように生きる星々の夢

 光を与える己でも

 冷たい宵闇にはそっと

 生温かい雫をこぼす時が

 いつか

 恕されるように


 陽の哭く時

 燦々と降り注ぐ天泣は

 誰にも許してもらえなかった雫と声を

 「恵み」として降り散らす


 君は俯いた

 僕は空を見た


 七色の綿雲が

 そっと雫を拭っていた

 

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