『孤独な受験生と、その先に』

NS(仮)

第一章:崩れた日常

タケルは朝の光が差し込む教室の窓際に座り、机の上に数学の教科書を開いていた。受験勉強が本格的に始まってから、彼の日常は変わり果てた。彼は一心不乱に問題を解こうとしていたが、どこか不安げな表情を浮かべていた。

「数学は得意だから、きっと成績も上がるだろう」とタケルは自分に言い聞かせていたが、実際には成績が芳しくなく、彼の心の中には焦りと不安が広がっていた。英語や歴史の問題に取り組むたびに、自分の限界を感じることが多く、その結果に苦しんでいた。

「もう少し頑張らなきゃ……」タケルはつぶやきながらも、勉強に集中することができず、ついスマートフォンを取り出してしまう。だらけた習慣が身についてしまい、気がつけば時間が無駄に過ぎていた。彼は自分がこのままではいけないことを理解していたが、どうしても習慣を変えることができなかった。

放課後、学校の校舎で、友達のシュウがタケルの隣に座っていた。シュウは優しく、勉強に対する真摯な姿勢を持ち、誰に対しても親切だった。彼の勉強への取り組みは習慣化されており、毎日のルーチンとして確立されていた。

「タケル、今日の勉強はどうだった?」とシュウが尋ねる。

「うーん、なんとかやったよ」とタケルは曖昧に答えたが、心の中ではその日の勉強が中途半端だったことを反省していた。

「もしよかったら、計画を立てて一緒に勉強しない?」シュウは提案した。

その言葉に、タケルは気が進まなかった。「いや、別に一人でも大丈夫だし」と彼は短く返答する。シュウの優しい気持ちはありがたかったが、タケルはその提案を受け入れることができなかった。彼の心の中には、自分だけで解決したいという強い意地があった。

家に帰ると、もう一度勉強を始めようとした。しかし、疲れた体と心はすぐに彼を押し戻し、再びスマートフォンを手に取ってしまう。自分がだらけた習慣に戻ってしまうことが多く、勉強を続けることが難しかった。数学の問題を解くときは集中できるが、それ以外の科目ではどうしても意欲がわかない。

夕食を終えた後も、タケルは勉強に取り組む気力が湧かず、夜遅くまで自分を無理に奮い立たせようとした。しかし、効果は薄く、いつの間にか机にうつ伏せになりながら眠ってしまうことが多かった。そのたびに、次の日の自分を責める思いが心の中に渦巻く。

「どうしてこんなにうまくいかないんだろう……」タケルは布団に入りながら、頭の中で悩み続けていた。彼は、以前の習慣に戻ってしまう自分をどうにかしたいと思っていたが、そのための強い意志を持つことができずにいた。勉強に対するモチベーションが低下し、習慣を変えることがどれほど困難かを痛感していた。

夜が更けるにつれて、タケルの心の中には無力感と焦燥感が広がっていた。「こんなに頑張っているのに、何も変わらない」と、自分自身を責めながら、眠りに落ちていった。

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