🔮パープル式部一代記・Season2・第弐話
三人は長い取説を結局一晩中かかって、「あ――だ、こ――だ」と読んでいた。ゆかりは当然の疑問を口にするが、道長は相変わらずであった。
「あのさ、そもそも
「ゆかりは
じめついたゆかりと面倒そうな道長をよそに、
「いまはロープウェイがあるらしいので、すいすいっと行けそうですよ」
その言葉に、やる気のない不審げな暗黒色のまなこのゆかりをよそに、道長は気を取り直していた。
「それいいな! よし、じゃあ計画を立てて役割分担するぞ。金の筒が三人分と手書きの写経三人分をじじいにもらった呪札を貼って埋めてくる……スコップがいるな。ゆかり、お前は三人分の写経(代筆)な! で、
「道長さま……」
「なに?」
「夜にロープウェイは動いておりません……」
「満月はまだ先……
「取説によると、少なくとも男は人の姿でないと……」
三人はため息をついてしばらく考え込んでいたが、ゆかりは「なんで三人分……
「どうしたゆかり?」
「あ、あのさ……じじいに頼めば一日や二日は人の姿に日持ちとか……大丈夫じゃないかな……それなら手書きも早くできるはず……」
「あ――あいつな……出番だ
「え……最近、政争していないから男相手に取り入るのは、あまり自信が……まあ、がんばってみますよ」
そんなこんなでその日は終わり、バカさまとゆかりは
そして翌日の夜更け、シャッターには穴が開き、まだガムテープと段ボールで扉を補強した例の古書店へ、
「じじい」こと
不老不死とはいえど、そもそも平安の生まれ、あの時代の物が懐かしくないはずはないのである。
「いやいや、わたくしなどが
平安の時代には、部署も違うので話し込んだことなどもちろんなかったが、話せば話すほど実に良い男であった。
平安時代の道長のとんでも依頼や無茶ぶりの苦労。和泉式部にしてやられた話。隠居してのんびりしていたら、いきなり応仁の乱……戦国時代……日露戦争。
あてもなく、ただひたすらに続く愚痴であったが、商売柄(ホスト)実に親身に熱心に聞いているようで、実は自分の計画を頭の中で立てていた
「それですよ
「でも、千年たっても在庫が……文才がないんだろうね」
「それなんですけどね……わたしに名案が……映画化はどうでしょうか?」
「えっ!? え、映画化!?」
「あの地獄の根暗女……確かに源氏物語は千年だっても売れているけど……」
「それだけじゃないんですよ……これは、お釈迦さまも知らぬ話ですが……」
「えっ!? うえっ!? あれもこれも根暗女の作品!?」
長々と生きていた
「それと……わたくしは元・夫ですし遠縁にもあたりますので、あの根暗は扱いなれております。きっとうんと言わせます。
「う――ん……でも、ホントに? あの、実は、本当に本当に山のようなの
在庫が……」
ほろ酔い気分ながらもとまどう
「ね、ブーム。平安ブームを起こしましょうよ。先がけとして紫式部に“天を切る! そは
「うむむ……実は柱の陰で見ていた。目もくらむ光景だった…うらやましい……」
「じゃ、善は急げです! ここはご高名な
「そ、そうだな! ちょっちょっとまってて! すぐに墨を擦るから!」
「なかなかあっけなかったな、和泉式部の話は笑えた……さて帰るか」
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