🔮パープル式部一代記・第六十八話
「左大臣、藤原道長か……まあ顔よしで家柄もよしで性格も悪くはないケド……女を見る目がなさすぎるわね……
親王の兄弟すら手玉に取った女は、そう言ってから持ち歩いていた、干して焼いたイワシを
『早く帰って、紫式部のところを覗かなきゃ!
そんなことを思いながら、京の入口の羅城門がようやく遠くに見えた頃である。門の向こうから狩衣姿で騎馬の
「
「おかえり……疲れただろう?」
最近のことがあれば、嫉妬のひと言、文句のひとつもあるだろうに、この精悍で勇猛果敢な男は揺れる心を隠してなにも言わない……。
「やっぱり
「元気になったから、いまごろ勝手に自分の
「なんにも分かっちゃいない女だけど、自分のいるべき場所だけは、分かっているのね……」
「なにか言った……?」
「ううん、ついでに少し遠乗りして!」
『最初に自分の唯一に出会えた幸運に、きっと生涯かけても気づかない馬鹿な女に少し嫉妬しただけ……』
「……あれは仰せの通りの処理をして参りました……ありとあらゆる場所から血を流し、最早この世に姿なく……」
「ふん、ご苦労……」
彼女はチラリと黒くなった血がついた
「ここにも馬鹿な男がひとりいたわね……自分の心すら解らないくせに、解った風に、人と国をもてあそぶ男……」
和泉式部の小さく囁くような声は、池の
***
話は戻るが
『姉君……?』
ぎっしりと雪に囲まれた小さな家の中で姉の定子は、清少納言とハフハフ言いながら餅を食べている。横では、幼い
「
「そうらしいですよ。正確には無印のままらしいですけれど。なんでも、顔面から
「あらあら……」
死んだと思っていた、鬼にさらわれたと思っていた姉は、本当は……あの女、紫式部のお陰で、幸せに暮らしているようだった。
『恨む相手を間違えていましたよ……』
うっすらと聞こえた、陰陽師の最後の言葉が
「あらっ!? なにかぶつかる音が!」
「わたくしが見て参ります!」
清少納言がなんとか外を覗いて見ると、入口の側に冷たくなった
「まあ、なぜこんな季節に!?」
「まだ生きています!」
真冬の越後に現れた弱り切った
「あなたは不思議な子ね。なぜか亡くした妹の
「
再会した姉妹は、お互いの長すぎる不思議な体験を、なん日も語りあっていたという。
***
(※
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