死人の詩集

交通事故

死人がいる

街の真ん中で腹を割かれて死んでいる

大きなゴムに轢き殺された、その死人

顔は間抜けで不気味だけれど

血の気の引いた、その肌は

サーっと浮かぶ青い血管の

中に戸惑う、ヘモグロビンよ

残る酸素はどこへやら

喉奥からは臭みが抜ける

目玉を真っ赤に充血せしは

動き回るその赤血球の

無駄な労働の果てにつく

ばたりばたりと絶えていく

命はどこへ、と

死人の中で

大腸菌が死に

乳酸菌が死に

シナプスが死んで筋肉が死んで

大脳が死んで

小脳が死んで

漸く

死人は死人たり得るのである

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