へたれ美少女に異世界召喚されました。えっ?召喚獣なのに俺がマスターでいいんすか?
犬猫パンダマン
一章 出会いと旅立ち
第1話 召喚されてしまった
人は時に人生の迷路に迷い込むと云う。壁にぶつかり、どこに進めばいいのか分からず、出口の見えない迷路を彷徨い続けるらしい。そんな時は敢えて立ち止まったり元来た道を戻ることで、光が差し込むこともあるそうだ。
では突然見知らぬ場所に迷い込んだとしたら?
バイト帰りに居酒屋で飲んでいたのに、今の俺はのどかな風景の中にいる。空気が澄んでるし、いつのまにか空は明るくなっている。おまけに会ったこともない少女が俺に向かって叫んでいる。俺はどこに迷い込んだっていうんだ。
「お願いです。戦ってください」
声は小さいが、叫んでいるのは間違いない。必死に声を出している。
「そんなんじゃ駄目だ。もっと強い意志を持つんだ」
背中の方から男の声がする。振り向いても、そこだけもやがかかっていて男の姿は見えない。なんとなく犬を連れているように見える。
「は、はい。頑張ります」
少女の意気込みを聞いて、そちらに向き直る。
「戦って! 召喚獣さん!」
まあ、俺に言ってきてるんだろうな。意味が分からないけど。
「なんで?」
普通に疑問淡々と答えたつもりだけど、少女は怯えた表情になって俺から一歩後退した。そういうの微妙に気になる年頃なんですよ。あと、色々傷つくから止めてください。
「そ、それは私が召喚士で、あなたは私が召喚した召喚獣……さんだからです」
思わず自分の体を確認する。召喚獣と呼ばれたが、俺の体に獣要素はどこにもない。まごうことなき人間の体だ。毛深くもない。自分の肉体だ。意味が分からない。俺が黙ったままでいると、少女は泣き出してしまった。
「ごめんなさい、ごめんなさい。私なんかが召喚してごめんなさい。うっ、ううぅ」
少女が泣き続けていると、後ろの方からため息が聞こえてきた。
「お終いだ。ちゃんと召喚獣とコミュニケーションとっておけよ」
「は、はい。ありがとうございました……」
男と犬が去っていく。いや、あれは普通の犬じゃないぞ。首からさきが三つに分かれている。いわゆるケルベロスって奴だ。……ちょっと待て!
「ひょっとして、アレと戦えって言ってたの!?」
「そ、そうです……」
「死ぬ! いくら俺が凄いって言っても死んじゃうよ!」
少女が鼻水を流しながら話す。
「だ、大丈夫です。召喚獣は召喚士が死ななきゃ生き返りますから……」
「それは大丈夫って言わないから!」
死ぬのに変わりはないのかよ。こんなことをいう少女がいるなんて……。なんとなく感じてたことだけど……どうやら俺は異世界に来てしまったようだな。
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