第4話
「……もしかすると我々は、とんでもないものを生み出してしまったのかもしれません」
「あははははは! やば、美少女すぎてウケんだけど! ちょいちょい、コレも被ってみ?」
「……確かにこれを見込んでの任務ではありましたが……逆に目立つのでは?」
「いやいや! 折角なんだし、思いきり美人にしたほうが良いって! いやー、実は前々からオリには女装して欲しかったんよねー。やっぱりあたしの目に狂いは……ブフッ! あははははは! マジでヤバいってコレ! ぶっちゃけあたしはイケる」
何故か既に用意されていたメイド服へと、半ば強制的に着替えさせられ。
現在
一人はもちろん、ここまで
「いやいやいや。ちょっと着替えて化粧しただけで、ボクの男らしさが隠せるワケないでしょ」
「ほい鏡」
そうしてティアラから手鏡を渡された
プラチナブロンドのウィッグを被った、どえらい美人のメイドさんが、そこに居た。
* * *
「ぶはははははは!!」
「このオッサンぶっ飛ばしていいですか?」
戻ってきた
羞花閉月、と呼んで差し支えないだろう。
きりっとした柳眉に、切れ長の瞳。少し気の強そうな印象は受けるが、しかしふんわりとした優しい色のチークが、どこか優しげな印象を与える。元々整った顔をしていたが、薄く化粧をしたことでそれらがより引き立てられていた。元の黒髪はウィッグによって完全に隠されており、たとえ
また、着せられたメイド服も特別製であった。
一見すればシンプルでありながらも、しかし細部の意匠にはこだわりが見て取れる。男性としては少し身長が低めな部類の
「胸にはスライム製のパッドを入れてあります。仮に揉まれたとしても、そうそうバレることはないでしょう」
なんとも情けない補足情報である。
「ぶはははははは!!」
「なぜ笑うんだい? ボクの女装は立派だよ?」
そう呟きつつ、いよいよ
そうして暫くの後。漸く話は次へと進んだ。
「んじゃあ
「りょーかい。気は進まないけど、任務なら仕方ない」
とはいえ、メイドとしての業務はまた別の話である。
一口にメイドと言っても、実際にはいくつかの種類に分かれている。今回の任務は、ヴィクトリア朝時代で言うところのレディースメイドにあたるだろうか。そもそも本当のメイドではない上に、本命の任務は護衛であるため、種類も何もあったものではないのだが。何れにせよ、怪しまれない程度にはメイド仕事に通じておく必要がある。隆臣は『大した問題ではない』と言うが、しかしそれなりに大変な準備期間となるだろう。おまけに、最大で三年間も任務が続くのだ。それを思えばこそ、やる気満々というわけにはどうしてもいかない
「では早速、明日からレッスンを始めましょう。今回はメイド業の事もありますので、専門の先生にお願いすることとなります」
「はーい」
「そうそう、分かっているとは思いますが……普段からメイドに慣れておかなければ、いずれボロが出てしまいます。ですので今日からは、基本的にその姿のままで生活して下さいね」
「なんて?」
「あと、言葉遣いも直して下さい。一人称は『私』でいきましょう」
「もしもーし?」
「衣服も含めた装備品は、後日支給します。 また、下着類もこちらで用意します。着方については、後ほど詳しく教えて差し上げますね」
「何ちょっと嬉しそうにしてるんです? マジで最悪なんだけど?」
この職場に来てから数年、依頼を引き受けてしまったことを初めて後悔していた。げんなりとした様子で脚を組み、その上に頬杖を突き、そうしてソファの上で悪態を吐いてみせる
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