第56話 彼女が求めるモノ。
市原黄介からのメッセージの最後に[父さん、この先ってどうなると思う?]と入っていた。
この先、というのは鹿島朱美の再婚話、その前に彼氏とどうなるかだろう。
市原黄汰は会ったこともない年下の彼氏と元妻をイメージしながら文章を送る。
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黄介の立場で意見が許されるかどうかかな?
多分、彼女は黄介は成人していて、姓は市原だからと言って意見は聞かないだろうね。
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それを踏まえて言うのなら、彼女は今年45歳。再婚を急ぐと思うよ。
それは女性特有のいつまでもよく見て貰いたい心境なんかもあるのかもね。
相手の人も35歳なら慌てるだろう。
でも、相手の人がロマンチストで、記念日なんかを大事にして、仮に年越しに記念になるように婚姻届を出したいとか言えば、この結婚は御破産になるよ。
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立て続けに2件のメッセージを送ると[すげぇ確度。そう思えてきた]と返事が入る。
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彼女は年下の彼氏の心地よさ、思い通りに好きなだけ仕切れる相手の存在は素晴らしいと思っている。
だから金銭的な事もあって、再婚なんて意識したんだ。
でも、付き合うのと結婚は別だよね。相手の男性も30年先を見据えたら、彼女のワガママを見過ごせなくなって、小さな違和感にも意見をしてしまう。
下手をしたら、老齢の両親の世話なんて言い出すかもしれない。
彼女も相手の男性も、今は【結婚】のことしか見えてない。そこはあくまでスタートでしかないのに、ゴールにしてしまっている。
今すぐ結婚してもこれだけの事があるんだ、記念日まで待ってなんてなれば、待つ間に話す時間も出てきて、話せば彼女の人となり、彼氏の良くないポイントがお互いに見えてきて喧嘩が始まるさ。
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[だからすげぇ確度]と送ってきた黄介は、[なら母さんの理想の男ってこの世界にいるの?]と聞いてきた。
市原黄汰は結婚後ずっとモヤモヤと持っていた黒い感情をつい乗せて[ATM]と送っていた。
これは散々早い結婚、鹿島朱美という相手、そこら辺を揶揄ってきた奴らに言われた言葉で、市原黄汰自身も、調べて納得していた。
書かれていたのは、【お金を持ってる】、【無駄な口出ししない】、【時間をちゃんと守る】、【乱暴しない】、【休日はちゃんと休む】、【触るとほのかに温かい】だった。
まあ、鹿島朱美の理想とはまた違うが、概ね似ていて、市原黄汰は笑ってしまった。
【お金はキチンと稼いでくる】
【イエスマンが至上。口出しはしないにこしたことはない。そもそも忙しくて家にいない。亭主元気で留守がいい】
【帰る連絡をして、誤差は大体15分、出かける時も予告時間には出て行く】
【乱暴は暴力を指すなら、物を投げられた事はあっても振るった事はない】
【そもそも休日がない。共に過ごす休日は、黄介が小学生になってから年2日くらいしかない】
【そもそも鹿島朱美は余程の事がないと触れてこない】
鹿島朱美が見ているものは、市原黄汰の妻のポジションと得られるお金だけ、それ以外は不要だった。
そんな人間に根気や何処か人間性の欠落もない人間が添い遂げられる訳がない。
相手の男が何の仕事をしているかわからない。
別で過ごしていて、鹿島朱美が顔を出す。
男の金で食事をして、甘えてそれが叶う。
だから今はうまく行っている。
共に住むなんて、間違いなくうまくいかない。
読み返しながら「おっと、黒い気持ちが溢れ出てしまった」と自嘲する市原黄汰の元に、再度届く黄介からのメッセージは、[うわ、わかる。会いたい時にだけ会えて、文句言わないでワガママ認めて金だけ払う男が理想なんだ…]と入っていた。
[俺、結婚願望ないけど、気をつけよう。でもまあそんな人、そんなにいないよね?]
甘いよ黄介。
市原黄汰はそう思いながら、[彼女みたいにテレビが大好きで、ドラマとかで価値観が出来ている人は危ないから、趣味とかよく聞いてから付き合った方がいいよ]と送っておいた。
市原黄汰は黒い気持ちが出てきていても、キチンと親目線で意見をする。
そんな市原黄汰だからこそ、広島紫との付き合いに親目線で悩んでいた。
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