第51話 相田旭との再会。
市原黄汰も男の顔を見て、「あれ?相田くん?相田旭くん?」と呼びかけると、ムサシに懐かれている広島紫も相田旭を見て「相田さん」と言う。
相田旭は広島紫の顔を見て「えっと…、入社して3ヶ月くらいで店に来た…」と言って思い出そうとしているので、広島紫が「広島です」と名乗ると、思い出せてスッキリした顔で「あ!広島さんだ!久しぶり!」と相田旭は言った。
わからないのは葉子になる。
「え?旭くん?お知り合いなの?」と聞く葉子に、「ああ、そうだね」と返した相田旭は、先に葉子を紹介する。
「婚約者の葉子です」
「あ、ご婚約されたんですね。市原です」
「おめでとうございます。広島です」
「蒲生葉子です。よろしくお願いします」
お互いにお辞儀が済んでから、「で、こちらがファミレス時代の上司にあたる市原トレーナーと、入社3ヶ月して俺のいる店に入ってきた新卒の広島さん」と市原黄汰と広島紫を紹介した。
聞くと相田旭はこの辺りに住んでいた。
今も飲食店で働いていて、今日は公休日なので婚約者の葉子と飼い犬の散歩に出たところだった。
行きは相田旭がリードを持ち、帰りは葉子と交代するためにリードを渡すタイミングでムサシが逃亡してしまったという。
市原黄汰と相田旭がベンチで話す中、蒲生葉子と広島紫はムサシを歩かせている。
「そういう市原さんと広島さんは?クレーム処理ですか?」
「相田くんは当時の社員の誰かと繋がりとかある?」
質問に質問で返されて、なんとなく話が読めた相田旭が「ありません。店もなんでか、板橋の国道の方とかにはありますけど、こっちにはないですし、社員ももう知ってるのは残っていませんよ」と返す。
「オフレコでよろしく」と市原黄汰は言ってから、一昨年の夏、新規店舗のオープニングスタッフに起用してから縁が生まれ、広島紫から告白されて、友達以上恋人未満の関係から始まり、共に出かけてご飯を食べる仲になった事を告げた。
とんでもない話を聞いた相田旭は「あー…、言いませんよ。でも市原さんて奥さんとお子さんが居るって…、あ…そう言えば離婚された話を当時の店長がしてました」と言って頭をかく。
「まあ、そうなんだよね。キチンと立場さえなければ後ろめたい関係ではないよ」
「まあ、市原さんはそういう人ではないのは知っています」
話がいい感じで落ち着き、ムサシも落ち着いてきて、葉子と広島紫がベンチに戻ってきたところで、「折角だからご飯行かないかな?」と市原黄汰が2人を誘う。
頷きかけて躊躇する相田旭に、葉子が「行って来なよ旭くん。ムサシくんは私といるから平気だよ。もうすぐ4年ぶりとかになっちゃうんだし、折角だからね?」と言う。
「いいの?葉子さん?」
「うん。この前の土曜日にムサシくんを実家に残してくれば、私もご一緒させて貰ったけど、連れてきちゃったから、私は今度の土曜日に行かないで済むように、今日行ってくるよ」
相田旭は葉子の言葉に頷くと、市原黄汰に「お供します」と言った。
その間に葉子はどこかに電話をする。
その相手はすぐにわかった。
「あ、お父さん?」
葉子の父はスピーカーでもないのに声が漏れてくる。
「どうした葉子!?何事だ!?あの男に泣かされたのか!?殴り殺して欲しいのか!?」
これだけで葉子の父がウルトラ過保護なのがよくわかる。
漏れ聞こえてくる父親の声に苦笑する相田旭は「今日もおもろいオッさんだ」と呟いていて、市原黄汰はイメージと違う相田旭に少し驚いている。
店ではもう少し大人しく、淡々、飄々のイメージが強かった。
「違いますー!旭くんは偶然恩師さんに出会えてご飯に誘ってもらったの。私もって言ってもらえたけど、ムサシくんが居るからダメでしょ?だからお父さんとご飯を食べてあげようかと思って電話したけど、旭くんを悪く言うなら…」
「待て!待ってくれ!言い過ぎた!父さんが悪かった!母さんと楽しみに待つ!ムサシくんが居るから酒も飲まずに迎えにも行く!旭君には君ほどいい男はいないと謝っておいてくれ!」
葉子はニヤッと笑うと、「じゃあ仕事終わったら迎えに来てね。帰りも送ってね。お母さんにも言っておいてね」と言って電話を切ると、相田旭に「休肝日プラス送迎夕飯付きだよ」と笑いかける。
「ああ、本当におもろいオッさんだよね」
「そう言ってくれるのは旭くんとお兄ちゃんのお嫁さんの愛さんだけだよ」
葉子は市原黄汰も広島紫に「すみません。また機会があれば行かせてください」と挨拶をしてから、「旭くんは、ファミレスのお仕事をしていた時は、モテなかったと言ってましたけど、彼女はいたらしいので、今度そこら辺を教えてください」と言って微笑んだ。
え?どれ?
市原黄汰と広島紫が相田旭を見ると無言で小さく首を振る。
言ってもいい事はない。
とりあえずこの場は「はい」と答えて、相田旭の家がある巣鴨の方に歩き、駅で解散をした。
「あ、社員じゃないんだけど、懐かしいかもしれない子達を呼んでもいいかな?」
「はあ、俺は別に、広島さんが良ければ」
「私は構いません」
広島紫はムサシがいなくなった途端、通常モードになり、相田旭に「ああ、こんな感じの子だったよな」と思わせていた。
それくらいムサシがいる時はニコニコキラキラとしていた。
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