第九話:天使

「うぜぇなあ?」


 天使は可愛らしい顔で醜悪な笑みを浮かべ、しかしなぜだか嬉しそうに言った。


 そうかよ。

 俺は天使に体当たりをかます。しかし、天使はそれをひらりとかわす。


「雑魚にかまってる時間はないです。さよなら」


 そう言って、天使の指先から光線が放たれる。


 大したことはないだろう。避けるか?

 その時、俺は無意識ながらに危機感を覚え、核の位置をすさまじいスピードで移動させた。


「ちっ、外したか…」


 運よく外れたようである。しかし、反応からして、確殺の攻撃であった可能性は否定できない。


 俺は自分の中で天使の警戒度レベルをマックスまで引き上げる。


「まあ今日のところは引くわ」


「てかまあ」


「次は本体で行くから掃除くらいの感覚だけど」


 …吠えとけよ三下。


 天使は去ったが、俺の気持ちは晴れなかった。天使の自信は相当なものだ。俺の質量ではまだぶっ壊せないぐらいに本体が強いのかもしれない。


 とりあえず、俺は空島のような亀をまずは窒息死させ、マッターホルンみたいな絶壁を想起させる巨大な蟹を包み込んでミンチにし、山脈のような蛇を水圧で締め殺した。


 しかし、まだ足らない。俺の不安はまだまだ晴れない。


[スライム(Lv.9999999→? Lv.Up?)スキル:体液分泌]


 いつしか俺のレベルは測定不能になっていた。しかし、ここが限界ではないはずだ。まだ何か、極められる部分がある。そうでなければ、俺は次に天使の本体と会う時、あの光線に核をやられて終わりだ。


 何があれば、俺は戦える?


 俺は考えてもしょうがないと思い、海へと向かう。邪竜ほどの大きさのモンスターはたくさん見かけるが、もはや歯牙にもかからない雑魚どもに感じられる。


 これだ。

 俺は迷わず海に飛び込んだ。


 地底の海よりも大量の水がそこにはあった。しかし、俺の強化されたスライムの肉体はなんとか海に溶けずに核を守りきれている。


 そして、毎秒毎秒、大量の分泌液が海に雪崩れ込んでいるのが分かる。


 そうして、俺は海を得た。


 いや、海だけじゃない。山も河も、大陸そのものすら俺の手中だ。暗黒大陸を出ると、人間などが暮らす大陸、人間以外の知的な種族が暮らす大陸、果ては空に浮かぶ大陸すらあった。今ではその全てを吸収して、俺は今惑星全体を覆っている。


 そして、俺は出会う。


「よう。また会ったな」


 よう。随分遅い再会だったじゃねぇか。そっちから来てくれるのかと思ってたぜ。

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