Korps kreuz Rebellion

Melevy

Prologue

荒涼とした大地に、乾燥した砂嵐が吹きすさぶ。見渡す限り、周囲はむき出しの赤い岩肌に包まれた大地と陽の沈みかける地平線。急峻な山脈と深淵な渓谷、そして遥か彼方にそびえ立つのは、地平線から垂直に伸びる共和国軍の軌道エレベーターだろうか。


ふと上空に目をやると、一寸の流れ星らしきものが見えた。


宇宙を見上げていた。


少し顔の傷が傷む…………。


いて…」


「何をしているの?」と誰かが声を掛けてきた。それは少女だった。背丈はそんな高くなく、金色の髪を肩の上で切っており、眉毛に被るか被らない程度に切り揃えられた前髪からはあどけない青い瞳が覗いている。俺は振り向く暇も無く咄嗟に変な声を出した。


「なんだ」


「そろそろ艦に戻らない?」


俺は「ああ」と返した。


よく見て見たら結構童顔だな……。


 俺はハッチを開閉して、少女と共にコックピットへ向かった。先程 “艦”と言ったがエア・クッション型ホバークラフト揚陸艇の方が正しいだろう。武器商人である少女の “仲間”から買い取ったらしい。


そのルートはあくまでも非合法で正規ルートで買ったらウン千万は下らない代物だ。大体この広大な荒野で任務を遂行するとなれば装甲車やトラックだけでは不十分だろう。


前方のコンソールには大量の計器やレーダーが並んでいる。どれもアナログ仕様で嫌でも年代を感じさせるものばかりだ。所謂グラスコックピットと言うやつだ。


俺は座席の背もたれに背中を押し付けて斜め後ろのシートベルトを引っ張った。手前の操縦桿を押し倒し発進させる。


「どうするの?」少女が聞いてきた。


「まだ決めていないさ」俺はぶっきらぼうに返した。


「お前こそここで何をしているんだ」


「船長が呼んでいた……燃料資源、回収できたかって……」澄んだ声とは裏腹の棒読み口調が、何とも言えない感じだ。


「ああ、今日はあまり取れなかった。そろそろ場所を変えた方が良いんじゃないか?」


「……わかった」


そうこうしているうちにエンジンが回り始めて船体後方のリフトファンと推進用プロペラが「ブォンブォン」と騒々しい音をたてて回りだす。途端手元の無線に通信が入った。


「そちらはどうだ?」少年は「感度は良好、あぁ……あと資源の回収はできなかった。すまんな」


「そうか、そりゃあ仕方ない。まさか軍の連中にとられちまったんじゃないだろうな……」無線の男は返した。


軍とは、このバルディッシュ星系ほか5つの恒星系を支配している「イシュタリア連合王国」と対立している、「アーカディア共和国」軍の残党だ。両国の戦争は膠着状態に陥って、荒廃の一途を辿る大陸を捨てた一部の富裕層は宇宙空間へと移住して120年余りが経過して、ようやく停戦協定が出されるまでに至った。


「今度は必ず取り返す。どんな手段をとってでも…」少年は啖呵を切る。


「ああ、頼んだぞ」





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