Page6 ふわふわで、さらさらなかえでの髪

「……ね。こうしてると、なんだかわたしたち夫婦みたいだね」


「ブフッ!」

 突然のかえでの爆弾発言に、俺は盛大にお茶を吹く。


「わわ! ちょ、だいじょうぶ?」

「ゴホッ……ゴホッ……。だ、大丈夫だ」

 突然なにを言い出すんだ。

 ティッシュペーパーを数枚取りつつ、隣の発言主に顔を向ける。


 かえでは、こちらを心配するように見せかけて、どこかしてやったりな表情が隠しきれていない。その証拠に、口角がわずかに上がっている。

 ……確信犯か。


「ったく。お前なぁ……」

「えへへ。ごめんなさーい」

 そんなかえでの謝罪には誠意なんて一切こもってなくて、その代わりに、とてもかわいらしい笑みを浮かべていた。


 ……まあ? 俺も似たようなこと思ったわけだし? 決してそんなに遠くない未来で、こうして二人で寄り添ってお茶を飲む光景を想像しなかったわけじゃないし? そもそも、時々「夫婦みたいだ」なんて言われてからかわれているけど、それがいやってわけじゃなくて、そう言われてもやぶさかではないというかなんというか……。


 …………うん。

 いくら心の中とはいえ、こんなことを俺がやってるとキモいだけだな……。


 とにかく。


「はぁー……。もういいよ」

 元から怒っていたわけではないけど、そう言ってかえでの頭を撫でる。


 ふにゃり、とだらしない笑みを浮かべて、「もっともっと」といわんばかりに頭を擦りつけてくる。


 ふわふわで、さらさらなかえでの髪。

 俺はこうして、かえでの頭を撫でるのが子どもの頃から好きだったりする。


 ちなみに、以前聞いたのだが、こうして頭を撫でることを許しているのは、家族以外だと俺だけなのだそう。

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