【連載版】仮面バトラーレンズ
遲?幕邏咎哩
1話 アバンタイトル
夜の海上で何かが燃えている。激しい雨が降っている。燃えているのは大型船だった。雨水がかかっても火は消えない。船には黒と白のツートンカラーで描かれたWの形のロゴマークが付いていた。
船の甲板には多くの人が見える。そのほとんどが傷つき倒れている。
ただ二人だけがその中に立ち、相対していた。
『適合値:error、直ちに装着を解除してください。適合値:error、直ちに装着を解除してください』
システム音声が虚空に響き渡る。
「何故裏切った?裏切れば、キミの望みは叶わない。キミの進む道に光は差さない」
一人は半透明の青い装甲を身に纏っていた。装甲の下には伸縮性と強度を両立した白い強化スーツが見える。また青い仮面には赤いレンズがはめ込まれていた。何処となくシャチを思わせるシルエットだった。手には極彩色の輝きを放つ硝子の槍がある。
槍を握る握力は強い。恐るべき強敵を前にして、臆病を嚙みしめていた。
ここで一歩でも下がれば何か大切なものが折れてしまうと無意識に感じていた。
「はぁ……はぁ……俺にもはっきりとは分からない……ただこのままじゃあいけないと思ったんだ。そこを
もう一人は半透明の赤い装甲を身に纏っていた。装甲の下には同じように黒いスーツが見える。白い仮面に赤いレンズがはめ込まれ、頭部に乗った黒いシルクハットが怪盗を思わせる。手には極彩色の輝きを放つ硝子の剣。
『適合値:error、直ちに装着を解除してください。人体への影響が不明です。直ちに装着を解除し検査を受けてください』
システム音声は彼の仮面から聞こえていた。
彼は酷く疲れていた。剣を握る手は震え、今にも取り落としかねない。頭は割れるような痛みを訴えていた。
気力だけが彼を立たせていた。
意志。不退転の意志が彼にはあった。
テンペストを打ち倒し、その先に進まなくてはならない。その意志が足を前に進ませていた。彼は望みから目を逸らし、光が行く先を照らさなくとも歩いていかなければならない。
互いに思考する。目の前の相手を打ち倒し、己の意思を貫く。その為にどう動けば最善か。
「ワタシはマイスターのために槍を振るう。そこに迷いはない」
青い装甲の男――テンペスト――は言葉の通り迷いなく槍を突き出した。
「俺には何が正しいのか……正しかったのか分からない。だがな、お前たちが間違っていることは分かる」
赤い装甲を纏った男も剣を振るう。そこに躊躇は無かった。
お互いの武器が衝突する。凄まじい衝撃が発生し、お互いが吹き飛ばされ海上に落ちていった。
同時に炎上していた船も爆発する。燃料に引火したのだ。
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