『オモチャ』 〜最強の男が歪んだ世界を正す〜
雫
第一章 史上最強の復讐
第1話 オモチャにされた妹
東京、新大久保、工事現場。
蒸し暑い八月の夜。工事現場は、強烈な白光に照らされ、無機質なコンクリートや掘り返された地面が浮かび上がっている。重機は静かに待機し、夏の生暖かい風が砂埃を舞い上げる。遠くの車の音や街のざわめきはかすかで、無人の現場には冷たく無機質な空気が広がっていた。
リーゼント男は体重百キロ超え、身長は二メートルを超えていそうな巨体。額には蠍の刺青が入り、髪型は今時あまり見かけないオールバックのリーゼントだ。
一方、彩は体重五十キロで身長百六十センチぐらいだろうか。華奢な体型の少女だ。
童顔の顔が一言も発せず無言のまま、下からリーゼント男を強い視線で睨らむ。顔は涙でびっちょびちょだ。
リーゼント男は彩の両足首を掴んでいる両手を左右に大きく開き、両足の間に頭を垂らし上から突っ込むようにして、彩のアソコを覗き込む。
興奮を隠せず、目の前で食いつくように見ている二人の男にちらりと視線を移して言う。「おー!今日はアタリだぁ!」
視線を戻し、彩のアソコにぺっと唾をかけ凝視し呟く。「反応、悪いねー」
坊主頭男はリーゼント男と向かい合うようにしてしゃがみ込み、左手でガムテープで拘束されている彩の両手首を押さえ、右手で彩の日焼けしていない白い胸をさわりながら呟く。「悪くないねー。この子!」
胸元には太い金色のネックレスがゆらゆらと揺れ、工事現場のライトに反射して怪しく輝いていた。
真っ黒に焼けている日焼け男はしゃがんでいる坊主頭男の背後に立つ。真っ黒い肌にぎょろっとした白目が際立つ。上体を乗り出すような態勢でスマホで撮影。逆さまになっている彩の顔を上から覗き込みながら見つめる。「結構、かわいいっすねー。やべー。興奮する。タイプかも!」
兄の
迅は跪かされ、膝がやわらかい土にめり込む。両手、両足はガムテープによって拘束され。頭上には日焼け男の手が乗る。迅のガタガタといった体の震えが日焼け男の手を小刻みに振るわせていた。三人の巨体は半端ない威圧感を放つ。
迅は何もできず、妹、彩の方を向かされている。迅の前でしゃがんでいる坊主頭男の背中越しに、逆さ吊りにされている彩の姿が、ただ、ただ目に飛び込んでくる。
リーゼント男は、彩の両足首を掴んでいる手をおろし、目の前でしゃがんでいる坊主頭男の足元に彩の頭がくるように、ヨイショと呟きながら、少し後退りしながら、ゆっくりと地面に寝かせる。
坊主頭男は、ガムテープで拘束されている彩の手首を彩の頭上に持っていき、彩の顔を見ながら地面にぴったりと押さえつけニヤニヤとした笑顔で呟く。「やっぱ悪くないよ。この子」
リーゼント男は、彩の足首から両手をぱっと離し、だぼっとしたワークパンツを下ろすと、微動だもしない死体のような彩の体に覆いかぶさる。
リーゼント男が事を終えて立ち上がると、迅の隣にいた日焼け男が迅から離れ、リーゼント男と交代するように彩を弄ぶ。
最後に彩の両手を押さえていた坊主頭男も彩の体を楽しんだ。
三人の男たちは、一斉に跪いている迅の方を振り返り迅の顔を見る。リーゼント男が新しいオモチャを堪能した時の子供のような顔をして言い捨てる。
「ごちそうさまー。良かったよー。焼肉の後の最高のデザートだったよー。バッチリ撮ったよー。余計なことしたら……この動画……ネットにばら撒いちゃうよー」
「ごちー」と日焼け男が言葉を続ける。
坊主男は無言でくるりと向きを変え左手をポケットに突っ込み、迅に背を向けて右手を高く上げて左右に大きく振った。
三人の男たちは、完全に彩に興味を失った様子で彩と迅を背に歩き始めた。やがて、工事現場から男たちの姿が消えた。
静まり返った工事現場の黒い地面に華奢な彩がミニスカートだけまとった姿で大の字になって横たわる。
迅は、恐怖から解放されたその瞬間、我に返った。だが、それと同時に激しい自己嫌悪が胸の奥から込み上げる。
なんなんだ、俺は……?
何もできなかった俺が、兄として守るべき存在を目の前で……!
迅は頭を抱えた。チキンだ……チキンすぎる……。自分が情けなくて仕方がない。
俺は愛情ってものがないのか? 大切な妹を目の前で……! ただ見ているだけなんて……。
最低なチキン野郎だ……。
なぜ戦わなかったんだ……? いや、勝てなくても抵抗すべきだったんじゃないか……? 迅の心の中で後悔と自己嫌悪が、絶え間なく押し寄せる。
何やってんだ、俺は……! 兄貴として、なんで……。全身の血が逆流するような感覚の中、後悔が容赦なく胸を締めつける。
止まらない……この自己嫌悪の感情が。
ほんと、最低だ、俺は。
彩は、まるで命を失ったかのように微動だにせず、声も出さない。大きな瞳はぱっちりと開いたまま、無言でただ空を見つめている。目から流れ続ける涙が、頬を静かに伝い、永遠に続くかのように流れていた。
迅は、冷たくなった彩の体に自分のシャツをかけ、そっと抱きかかえた。自分の腕の中にある彼女の体はあまりに軽く、儚い。だが、その重みが心にのしかかる。全てが手遅れになったという現実が、言葉にならない重圧で迅を押しつぶした。
「ごめん……本当に……ごめん……」
彼の声は震え、地面を見つめたまま、今にも消えてしまいそうだった。
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