貧乏令嬢のポジティブすぎる契約結婚〜継母としてもがんばります!〜

やきいもほくほく

第1話


ディアンヌはロウイナリー王国の貴族、メリーティー男爵家に生まれた。

ディアンヌが生まれる前、父はたまたま爵位をもらって『男爵』となった。

そこで育てた果物を当時の第一王子が大層気に入ったことで、爵位を与えられたのだ。

王都でも一時期流行り、貴族たちもメリーティー男爵領で育てた果物を求めた。

メリーティー男爵領はその果物を育てるために与えられた小さな領地だ。

王都からは離れているが温暖で自然豊か。果物が育ちやすい気候だった。

しかし王子が成長するにつれて王家に献上することもなくなり、王都ではメリーティー男爵領で育てた果物を取り扱いが減ってしまった。


最盛期は侍女も雇っていたようだが、ディアンヌが物心つく頃にはいなくなり、自分のことは自分でやる生活。

両親も元に戻っただけだと呑気に考えていたのだが、ディアンヌが十六歳で社交界デビューの年に悲劇が起きた。

なんと長雨により果物の木が腐り半分以上壊滅。

追い討ちをかけるように実った果実をすべて盗難されてしまい、どん底だった。

家にあるすべてのものを売り払っても損害は拭えずに、一年経つ。

父は「爵位を王家に返上するしかあるまい」と言った。

しかしディアンヌには十二歳になる弟ロランとまだ五歳の三つ子の男の子、ライ、ルイ、レイがいた。


(……わたしがどうにかしないと!)


王立学園では、さまざまな理由で婚約関係にある人たちを見てきた。

そこには名誉を得るためやお金を援助してもらうために援助してもらう人もいたことを思い出す。


(でも、こんなわたしを娶ってくださる方なんているのかしら……)


パーティーもお茶会もほとんど出たことがなく、これだと半年後に控えた社交界デビューも無理だろう。

悩んだディアンヌは学園の時に友人だったシャーリー・カシスを頼ることにした。

昔はディアンヌと同じ男爵令嬢だった彼女は仲のいい友人だった。


カシス男爵は領地内に鉱山から宝石を掘り当てた。

カシスと名付けられた赤い宝石は王都で流行っているそうだ。

その宝石が高値で売れたため功績を認められたことや、爵位を金で買い伯爵となったのだ。


それが一年前のこと。

そこからシャーリーの振る舞いは一変してしまった。

ディアンヌと距離を置くようになりシャーリーは友人も変えて身なりも派手になっていく。

連日、パーティーやお茶会に行っているそうで関わる機会が少なくなった。

シャーリーと仲良くなったのは、メリーティー男爵領とカシス男爵領が隣同士だったから。


その下には二つの領を合わせてもまったく足りないくらい大きなディートルテ公爵領がある。

そしてディートルテ公爵領の下に王都があるのだ。

ディートルテ公爵家は王家を宰相として代々支えている。


三年前、先代ディートルテ公爵は表舞台を退いた。

それは国王が変わり、戴冠式が行われたからだ。

そのタイミングで現ディートルテ公爵が宰相に任命された。

ディアンヌはシャーリーと共に豪華なパーティーに参加したことを思い出す。

ディアンヌがシャーリーにメリーティー男爵家の状況とドレスを貸して欲しいという手紙頼むとすぐに返事が返ってきた。

ディアンヌは急いでカシス伯爵邸に向かう。



「久しぶり、ディアンヌ。相変わらず……地味ねぇ?」


「シャーリーは本当に綺麗ね。素敵だわ」


「当たり前じゃない。わたくしはもうあなたとは違う場所にいるのよ?」



シャーリーはネックレスやイヤリング、指輪など大きな宝石を身につけている。

ミルクティー色の髪はグルグルに巻いており、派手なドレスを身に纏っていた。

邸も一年前よりも豪華に建て替えられていた。

侍女や従者たちが深々と腰を折っている姿を見て、ディアンヌは目を輝かせる。

ディアンヌはおさげ髪にワンピースを着ていた。

ここでは浮いてしまっているのは間違いない。

ディアンヌはシャーリーの後ろに続いて赤い絨毯の上を歩いていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る