28話
「皆さんこんにちは、今日はショッピングモールにやってきました~ たまにはダンジョン配信じゃなくてのんびりと楽しんでいこうと思います!」
地元のショッピングモールにやって来た葵とセリナは、自撮り棒に装着したスマホに向かっていつも通り挨拶をした。
「前からセリナちゃんが行きたがっていたよね」
「はい、とても気になっていたので楽しみです!」
セリナは子供のように目を輝かせて巨大なショッピングモールを見渡す。
〈やったーショッピングモールでデートだ!〉
〈今回は息抜き回かな? でも楽しみ!〉
〈ワクワクしているセリナちゃん可愛い♡〉
〈もう付き合っちまえよ〉
〈いいな~ 羨ましいな~〉
〈喜んでいるセリナちゃん可愛い!〉
「じゃあ、まずはやっぱり服屋さんをいろいろ見て行こっか。広いから逸れないようね」
葵はセリナが逸れないように自然と手を繋いでショッピングモールの中を歩き始めた。視聴者も随分と慣れた葵の手つきに、心を躍らせながら妄想を膨らませる。
2人でファッションフロアを歩いていると、セリナがガラス張りのショーウィンドウを見つめながら立ち止まった。
「このドレス、とても可愛いですね。葵さんに似合うと思います!」
セリナが見つけたのは、淡いピンク色のフリルがついたドレスだった。シンプルだけど、どこか甘さを感じさせるデザインだった。
「えっ、私が着るの?」
目を丸くしてドレスを見つめた。普段は動きやすい服を選ぶ事が多い彼女にとっては、馴染みのないジャンルのものだった。
「きっと素敵だと思います!」
葵は少し戸惑いながらも、セリナの期待に応えたいと思い、そのドレスを手にとった。そして、店員に案内されて試着室へと向かう。
「こ、これでいいのかな?」
試着室のカーテンを閉めて、葵はドレスに着替え始めた。普段のカジュアルな服装とは違い、このドレスはより彼女を女性らしらを際立たせる。鏡に映る自分の姿に葵は少し緊張を覚えたが、セリナの言葉を信じてカーテンを開けた。
「どう……かな?」
葵が恥ずかしそうに尋ねると、セリナは一瞬言葉を失ったようだった。そして満面の笑みを浮かべる。
「すっ……すごく似合ってます!」
セリナは葵の周りをくるりと回って様々な角度から見てうっとりと頬を緩める。
〈葵ちゃん可愛いいいいいいいい!!!〉
〈何これやばい、似合いすぎ!〉
〈普段とのギャップがやばい!〉
〈ありがとうございます。本当にありがとうございます〉
〈はぁ~ やばい、好きだ!〉
〈これはすごい。ダンジョン配信中もぜひこれで!〉
〈最高。セリナちゃんのチョイスもいいね!〉
コメント欄でも葵を絶賛するコメントが、すごい勢いで流れていく。
「じゃあ、これにしようかな?」
葵は頬を赤めながらも、満更でもない笑みを浮かべて鏡を見つめた。うん、確かに思ったより悪くないかも。
2人は笑いながらレジへと向かい、葵はドレスを購入した。次はセリナのために素敵な服を選びたいと思い葵は店内を見渡した。
「セリナちゃん、これ見て!」
葵が少し興奮気味に呼びかけると、セリナがトコトコと小走りで近づいて来た。
「何か見つけましたか?」
葵は透き通るような純白なワンピースを手に取って見せた。それはとても上品なデザインで、セリナの柔らかい雰囲気にピッタリだった。
「このワンピース、絶対セリナちゃんに似合うと思うよ! 一度着てみて!」
「本当に私に似合うかな?」
「もちろん!」
セリナはワンピースを受け取り、試着室に向かった。葵はその間少し緊張しながら外で待っていた。きっと似合うはずだと信じていたが、セリナが気に入ってくれるかどうかが気がかりだった。
しばらくして、試着室のカーテンがゆっくりと開き、セリナが姿を現した。純白のワンピースが彼女の肌に柔らかく映え、まるで童話の中のお姫様のようだった。
「どっどうですか?」
「…………きっ綺麗……」
セリナが少し照れくさそうに尋ねると、葵は思わず見惚れてしまい、じっと見つめながら呟いた。
「すごく可愛いよ、セリナちゃん!」
セリナはその言葉に安心したように微笑み、葵の前で軽くスカートを揺らした。またしてもコメント欄では絶賛の嵐が巻き起こる。
〈かっ可愛すぎだろ!〉
〈これはやばい、最高です〉
〈ご馳走様です。ありがとうございます!〉
〈美しいです……感動しました〉
〈もう可愛すぎ! 2人とも最高です!〉
〈天使だ! 天使がいる! 俺もしかしてここで死ぬのか⁉︎〉
〈あぁ~ これはやばい……可愛すぎて死ぬ〉
その後、2人はレジに向かいセリナも新しいワンピースを手に入れた。もちろんオシャレな服を着れる事も嬉しいが、何より葵が自分のために選んでくれたことが、セリナにとって何よりも嬉しい事だった。
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