17話

『問題1 一番薄いコーヒーは、ベトナム、日本、ブラジルのうちどれ?』


『問題2 出口の無い部屋に閉じ込められたけど、すぐに脱出できました。さぁ、どうして?』


『問題3 乗用車を運転中、3人の客のうち2人が出て行きました。車内には何人いますか?


 

「えっと、何これ? わからない……」


 葵が問題と睨めっこをしていると、天井がギシギシとなり出してゆっくりと迫ってきた。


「葵さん! 天井が迫って来ています!」


「嘘でしょ? 早く答えなくちゃ!」


 2人は必死に頭をひねって考えるが、焦りもあってなかなか集中できない。それに、今のセリナは魔力がほとんどない。つまり壁を壊すという荒技は出来ない。まさに命がけの問題だった。


「皆んな、お願い力を貸して!」


 葵がドローンに向かって手を合わせてお願いすると、タブレットに一斉にコメントが流れ始めた。



〈まじか、ここに来て謎謎か〉

〈なんだこれ? 難しいな……〉

〈薄いコーヒーっ言われたらアメリカーンが思いつくけど、選択肢にないしな……〉

〈出口がない部屋に閉じ込められる? じゃあどうやって入ったの?〉

〈分かった! 問題3は、3ー2で1でしょ? 単純すぎか(笑〉

【1000円】〈分かりました! 問題3はあれでしょ? 運転手も入れるから車内には2人います!〉



「ありがとう! 問題3は車内には2人いるだね」


 葵は感謝の言葉を伝えると、本に答えを書き込んだ。すると、本は勝手に閉じて消えていった。そして部屋全体にピンポーンと正解の音が鳴り響く。


「次、わかる人いる?」



〈なんか先生みたいだな(笑〉

〈葵ちゃんが先生なら受けたいなw〉

〈先生! 真面目に考えていない人たちがいま~す〉

〈皆、忘れてるかもだけど早くしないと2人がぺちゃんこになるよ!〉

〈やべ、そうだった。早くしないと!〉

【500円】〈はい先生! 分かりました! 出口がなくても入り口から出ればいいと思います!〉



「入り口から出るだね、ありがとう!」


 すぐに葵が本に答えを書き込むと、また本が閉じて正解の音が鳴った。残りは後一つ。でもこの一つが難問だった。天井はジリジリと迫って来ている。時間があまりない……



〈やべー全然分からなん〉

〈ヒントがほしいな……〉

〈何、薄くないって何なの? 淹れ方が間違ってるんでしょ?〉

〈答えはあれか? どこ産でも淹れ方をミスったら薄いとか?〉

〈流石にそれはないと思う。薄いを言い換えると何かあるかな?〉

〈薄いの言い換え? 濃くないとか?〉

〈国内……あれ、予測変換ミスったけど、これじゃね?〉

〈それだ! 濃くない=国内=薄い。つまり答えは国内産の日本だ!〉



「皆んなありがとう! 助かったよ!」


 視聴者の協力により、何とか答えまでたどり着いた。葵はすぐに本に書き込むと、今まで一番大きな音で正解の音が鳴り響いた。そして本棚が横にスライドして隠し扉が現れた。


「皆さんのおかげで問題を解くことが出来ました。本当にありがとうございました」


 セリナは律儀にお礼をすると視聴者に感謝の気持ちを伝えた。



〈ヒヤヒヤしたな~〉

〈でも、面白かった!〉

〈でもこれ、解けなかったらやばかったよね?〉

〈流石に魔王様も安全面は考えているよね?〉

〈でもランベルトが改造したってたよ。大丈夫かな?〉

〈ランベルトってちょっと怖いよね? 魔王様は面白いけど……〉

〈意外とランベルトは勇者たちの事を嫌ってるかもね〉

〈だとしたら、この危険な仕掛けも納得だな〉

〈いやいや、考えすぎでしょ、勇者相手ならこれくらいしても平気じゃない?〉

〈とりあえず、次に進もうぜ!〉



 葵とセリナは頭上に気をつけながら狭い隠し扉を進んでいくと、闘技場のような開けた場所についた。


「ここはなんでしょう?」


「闘技場かな?」


 葵の予想は見事的中して、正面にある巨大な鉄の扉が開かれた。そして腐敗したゾンビが何体も現れ、うめき声をあげながら近づいてきた。


「ゾッ、ゾンビ‼︎」


 セリナは息を飲んで体を震わせると、また長い詠唱を唱えようとした。


「待ってセリナちゃん、さっきので魔力を使い果たでしょ? だから休んでいて」


「で、ですが葵さんだけでは……」


 セリナは心配そうに尋ねるが、葵は自信に満ちた表情を浮かべると、新しい相棒を掲げた。


「この槍の試し切りにはもってこいだね」


 登録者数10万人記念でもらえた銀の槍に、魔石とセリナの力を借りて強化したことで、槍は猛烈な光を放っていた。ゾンビたちは身震いして後ずさる。


「ねえ、セリナちゃん、この光ってもしかして?」


「はい、光属性の力を帯びていますね。アンデットに有効だと思います!」



〈まじかよ、それは心強い!〉

〈葵ちゃんの新しい相棒が見れるぞ!〉

〈自撮り棒もよかったけどこれもいいな!〉

〈銀の槍で戦っている人は初めて見るなw〉

〈まぁ、元々陸上部で槍投げもしてたから大丈夫でしょ〉

〈葵ちゃん頑張れ! ゾンビに負けるな‼︎〉

〈葵ちゃんかっこいい!〉

〈これ100万人超えたら金の槍で戦うのかな?〉

〈それも見てみたいな(笑〉



 葵は力強く銀の槍を高く掲げた。先端から神聖な光が放たれて、闘技場に漂う不気味な闇を一瞬で照らした。


「さぁ、覚悟しなさい!」

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