第15話 まさかの最下位
日曜日の夕方、パソコンでエッセイを書いていたところ、冬なのにノースリーブさんが現況ノートを更新したという通知が届き、早速覗いてみた。
一位 夢見がち代さん 80点
二位 アラー・カーンさん 50点
三位 昭和のスーパースターさん 30点
四位 ケンタさん 25点
一位の夢見がち代さんは、アラー・カーンさんからのバトンをうまく引き継いだうえで、次の方へのパスもスムーズにできていると思いました。
二位のアラー・カーンさんは、テーマの【花】をバラの花束にしていましたが、これは定番過ぎると思いました。
三位の昭和のスーパースターさんは、話を面白くしようとしたのは分かるのですが、プロポーズの言葉が少し強引だなと感じました。
四位のケンタさんは、ほぼ破綻してしまったストーリーの後を引き継いだ割には、うまくまとめていると思いましたが、全体的に中途半端な印象を受けました。
どうせなら、立て直そうとせず、もっと破綻したものを書いた方がよかったと思います。
以上で寸評を終わります。なお、次回のテーマは【天気】です。
先頭の夢見がち代さんは、明後日の夕方までに天気にまつわるものを書いてください。】
(はあ? なんで俺が最下位なんだ? どう考えても、俺の方が昭和のスーパースターさんより上だろ! あと、なんだよこの寸評は。これじゃまるで、立て直したのが悪いみたいじゃないか。破綻したストーリーなんて、もはや小説でもなんでもないんだよ!)
俺は順位と寸評に納得がいかず、もうやめようかと一瞬思ったけど、最下位のままやめるのも
そして迎えた木曜日の夕方、俺はパソコンの前で、昭和のスーパースターさんが更新するのを今か今かと待っている。
今回のお題【天気】に対し、先頭の夢見がち代さんは、遠足を明日に控えた女子小学生が明日晴れますようにと、てるてる坊主を作っているところで終わり、二番手のアラー・カーンさんは、翌日見事に晴れて、女児がてるてる坊主に感謝しているところで終わっていた。
(ここまでは微笑ましい展開になっている。頼むから余計なことはせず、このままの状態で俺に回してくれ)
そんなことを思っていると、ようやく昭和のスーパースターさんが小説を更新したという通知が届いた。
俺は祈るような気持ちで、それに目を向けた。
【えみりは満面の笑みで家を出ると、浮き浮き気分で学校に向かった。
今日は小学校に入学して初めての遠足なので、えみりは楽しくて仕方なかった。
やがて学校に着くと、えみりは他の児童たちとともに担任に引き連れられ、目的地に向かった。
そのまま友達とおしゃべりしながら歩いていると、急に天気が崩れ雨が降り出した。
「一旦学校に戻ろう」
担任はそう言うと、そのままUターンし、児童たちも彼に付いていった。
学校に戻った後、えみりたち児童は教室で待機していたが、結局雨はやまず、遠足は中止となってしまった。
泣きじゃくる児童たちに、担任は「これくらいのことで泣くな! 社会に出たら、これより辛いことなんていくらでもあるんだぞ!」と叱咤したが、彼らは泣き止むどころか、泣き声が更に大きくなっていった。
えみりは家に帰ると、折り紙で作ったてるてる坊主に向かって「この役立たず!」と罵りながら、ビリビリと破き始めた。
「えみり、何してるの!」
それを見て、母親がすぐに止めに入ったが、怒りの収まらないえみりは、ビリビリに破いたてるてる坊主をそのまま丸め、ごみ箱に放り込んだ。
「そんなことしたら、てるさんが可哀想でしょ」
「ちっとも可哀想じゃないよ。だって、わたしの言うことを聞いてくれなかったんだからさ」
「てるさんも努力したけど、それが叶わなかったのよ。だからそんなに悪く言わないで」
「いくら努力したって、それが叶わなかったら意味ないじゃん。わたしもう絶対、てるてる坊主なんか作らないから!」
「てるさんのことを悪く言うのはやめてって、言ってるでしょ! 彼にはなんの罪もないんだから!」
あまりの母親の変貌ぶりに恐れをなしたのか、えみりは泣き出してしまった。
「このくらいのことで泣くんじゃないわよ! 社会に出たら、これより辛いことなんていくらでもあるんだからね!」
奇しくも、母親が担任と同じセリフを言ったことに対し、えみりは「じゃあわたし、大人になんかならない」と返した。
「何バカなこと言ってるの! あなた、私に一生面倒見させる気なの?」
「そうよ。辛い世界になんて、行きたくないもん」
「…………」
えみりの頑なな態度に、母親は返す言葉が見つからないまま、その場に立ち尽くしていた。】
私の話はここまでです。我ながらうまく書けたと思いますが、ケンタさんはうまく引き継ぐことができるでしょうか?
読者ともども楽しみにしています。
(はあ? せっかく前の二人が微笑ましい展開で進めていたのに、なんでこんなことになるんだ? しかも本人は、これが面白いと思ってるみたいだし……)
ある程度予想はしていたものの、その斜め上を行く昭和のスーパースターさんに、俺は開いた口が塞がらなかった。
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