The child that is born on the Sabbath day
「今日はこれを着ないとだめ」
そう駄々をこねる娘を見て、私はどうしたものかと考えていた。娘が手にしているのは青い薄手の半袖シャツで、どう考えても季節外れだった。
「こっちの方が良いんじゃない?」
と言いながら紫のプルオーバーを勧めたが、娘は頑なに青いシャツを手放さない。
「今日は月曜日だもん」
どうも娘の頭の中では曜日と色が結びついているらしく、曜日ごとにふさわしい色の服装をしないと癇癪を起こすのだった。
とりあえず、この日はシャツの上にちょっと小さくなったデニムのジャケットを着ることで妥協してもらった。
次の日、娘は全身ベージュになっていた。ベージュのズボンにベージュのTシャツにベージュのカーディガン、靴下もベージュだった。
「ちょっと変じゃない?」
そう言ってみたが、娘の答えはこうだった。
「今日は火曜日だから」
さて、平日の折り返し地点、またしても問題が起こった。
「水曜日のハンカチがない!」
どうも緑色のハンカチをどこかにやってしまったらしい。
「お母さんのハンカチ、貸してあげようか?」
娘は私が差し出した緑というより濃い水色のハンカチを眺めて難しい顔をしていたが、ギリギリ緑であると判断したらしく受け取ってくれた。やれやれ。
木曜日に娘はピンクのプルオーバーに赤のチェックスカートを選んだ。あまり色は合っていなかったが、私は何も言わないことにした。
金曜日。
「でも今日は黄色じゃないと……」
娘は黄色い花の髪留めを持って泣きべそをかいていた。ゴムの部分が切れてしまっていて使えなくなっている。
私はなだめるように言った。
「でもゴム穴が小さくて、いま家にあるゴムじゃ直せないの。別のじゃだめ?」
「だめ!」
娘は不貞腐れて、髪を結ばないまま学校に行った。
土曜日には娘はいろんな色の服を着ていた。
「今日は何色でもいいの?」
娘はちょっと首を傾げて考えてから答えた。
「暗い色がいい」
いつもそのくらいアバウトだと良いんだけど、と私は思った。
日曜日、娘は必ず白い服を着る。子供服には意外と白一色の服は少ない。カラフルだったり、白でもキャラクターのプリントやワッペンが付いているものが多く、それだと娘は満足しないのだった。
混じり気のない白のワンピースを着た娘が言った。
「庭で遊んでくる!」
「それならズボンに着替えたら?」
いちおう言ってみたが、娘は首を振った。
「今日は日曜日だから」
私は元気に出て行く娘を見送った。あんまり汚さないでくれればいいのだが。
(だいたい実話)
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