転生したのでフレッシュなゾンビとして生きていく

田中大一文字

第1話

 ついさっき死んだと思ったら、異世界へ転生するんだとさ。

 死亡直後の記憶は曖昧だが、俺が死んだのは確実だろう。

 気付いたら虚空に浮かんでいた。

 死因はどうにも思い出せないが、既に肉体はなく魂だけの存在となっていた。

 

 さて、どうやら俺はこれから三つの力を得ることができるようだ。

 何故だか知らないがなんとなくわかるのだ。

 とはいっても一つ目の能力はこの魂の状態を維持するために既に使われてしまっているようだ。

 【魂魄保護】この能力がなければ魂はすぐに霧散して散ってしまうらしい。

 この世界へ来た転生者はまず強制的にこの能力を取得するらしい、取得できなければ消滅するだけだ。

 

 一つ目はまさかの強制取得だが、二つ目の能力はどうするか考えて取りたい。

 とは言え魂だけの状態では何もできん。

 まさに手も足も出ない状態だな。

 普通はどうするもんなのかなと考えていたら。

 この世界に来た転生者達は次に【理想の肉体】という能力? 得るらしいというのがわかった。

 【理想の肉体】は文字通り自分の理想通りの肉体を得られる能力らしい。

 といっても最初に肉体を得たら終わりの使い捨てみたいな能力だが。

 これって実質転生者の得られる能力って一つだけじゃないか?


 現状【魂魄保護】によって魂は守られている。

 急ぐ理由もないし、どうするかじっくり考えてみるのもいいのではないか?

 他の人とまったく同じというのもつまらない、他に世界へと干渉する手段を得られないものか。

 肉体の代わりになるものがあればいいのだ。


 取得できるスキルの中に何かいいものはないかと見てみると。

 ふむ【超級死霊術】とな?

 死“霊”術とあるがゾンビみたいなものも作れる応用性の高い能力のようだ。

 なるほど、この能力があれば肉体を得る事ができるな。

 せっかく自分の理想の肉体が手に入るのにわざわざアンデッドになるような能力を取得するのは俺くらいのものだろう。

 とはいえこの【超級死霊術】という能力は肉体を得る以外にも色々な事ができそうではある。

 案外いい選択かもしれないぞ。

 

 さて二つ目の能力を得たらなら次は三つ目だな。

 何がいいかな……色々な能力があるし目移りしそうだ。

 この【物質生成】なんかいいんじゃないだろうか?

 自身の魔力を消費して、自分の思い浮かべたものを作りだす能力だ。

 生物は生み出せないが組成を理解してるものなら何でも生み出すことができるようだ。

 質量保存の法則を無視した強力な能力だな。

 まあこの世界は魔法なんてものがあるみたいだし、前世の物理法則なんざ意味をなさないだろうけどな。


 さて三つ全部の能力を得たわけだし、早速この世界での活動を開始するとしようか。

 【超級死霊術】のおかげで魂だけの状態でも動き回ることができるがこのままじゃ心もとない。

 【魂魄保護】のおかげでこのまま霧散してしまうこともないが、この世界では魂魄に直接ダメージを与える技や存在もあるようだ。

 肉体という名の鎧がほしいところだな。

 そこらに落ちてる死体から自分用の肉体をビルドしてしまいますか。

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