滅びの魔女と楽園の神官

崎浦和希

プロローグ 楽園と魔女


 楽園を滅ぼすものが天の定めであったなら、どれほどの人が救われただろうか。


 滅びの魔女――予言から生まれた『魔女が国を滅ぼす』との噂は、楽園から多くを奪い去っていった。


 平穏な暮らし、人々の良心、数多の命。


 多くのものを失い、滅びかけた楽園を救ったのは、幽閉されていた妾腹の王子だという。

 後年、賢王と讃えられる彼には、聡明な妃がいた。

 彼女が『滅びの魔女』と呼ばれていたことは、国の歴史には無い。


 王を支える傍らで、その妃が記した記録にのみ、その他多くの出来事に紛れながら、ひっそりと書き残されている。

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