第14話 夜伽という名の作戦会議②

「もし、あやかしがいるようでしたらどうするのですか?」


 桃玉からの問いに、龍環は腕を組みながら口を開く。


「俺が直接鶴峰宮に出向いて、確認する必要がある。もしあやかしがいたら君の出番だ」

「浄化するのですね、わかりました」

「ああ、よろしく頼むよ」


 龍環は桃玉の右手を取り、両手で硬く握る。


(龍環様は私を信頼してくれている。答えなきゃ)

「あ、そうだ。金美人様はどのようなお方なのですか?」

「後宮入りして1年は経つが……まだ一度も夜伽をした事が無いからあんまり話をした事は無いな……ぱっと見は天真爛漫な明るい人物の印象はある」

「ほほう……教えてくださりありがとうございます」

(ここは後宮。天真爛漫なのはあくまで上っ面だけかもしれないし、気をつけないと)

「他に質問はあるか?」

「あ、もう……大丈夫です」

(私のやるべき事は理解できた。だから大丈夫なはず)


 龍環は桃玉の頭をなでる。その手には優しさと力強さが入り混じっていた。


「明日頼むぞ」

「はい、お任せください……!」

「では、もう寝よう。夜更かししていては作戦に支障が出てしまいかねないからね」

「……龍環様、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ。ちょっと頭痛がしただけだ」


 痛みに耐えるようなややしかめた顔つきに変わった龍環はそう言うと、ごろんと横になって布団を被った。彼の広い背中を桃玉はじっと見ている。


(これが、皇帝である龍環様のお背中……広くて大きいなぁ)


 目をつむり寝息を立てる龍環の背中を、桃玉は右手でさっと撫でる。


(ごつごつしてる)


 ひとしきり龍環の背中を眺めた桃玉は、あおむけになると布団を顔までかぶって目をつむったのだった。


◇ ◇ ◇


 翌朝。照天宮に戻って来た桃玉は桃色の服に着替えたのち、朝食の雑炊を食べながら髪結いとお化粧を女官の手で施されていた。


(あれからは特に何にもなかったな)


 作戦会議が終わった後、龍環は桃玉に触る事も無く朝までぐっすりと眠ったのだった。


(そのせいかはわからなかったけど、私もよく眠れた気がする)

「桃玉様。お化粧と髪結いが終わりましてございます」


 桃玉は雑炊の入ったお茶碗を机の上に置き、女官から手渡された手鏡で自身の姿を確認する。


(いつ見ても、私だと思えないくらい綺麗)

「これで大丈夫です。ありがとうございます」


 確認が終わり、また雑炊を食べ始める桃玉。すると照天宮の外から騒ぎ声が聞こえてきた。


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