作戦開始

 頭の中で何度もシミュレーションを繰り返した結果、これはいけるぞと確信した私はついに実行に移すことを決めた。


うっへっへ。

覚悟しろネズミ。


今日で貴様のそのあざとい仮面を剥いで、醜い本性を白日の下に晒してやる。



 ご主人が

「じゃあ行ってくるね。いい子で待ってるんだよ」

と言って家を出て行った。


よし。

作戦開始だ。


その前にざっくりこの空間について説明しておこう。


まずは若干縦に長い長方形を想像してほしい。

左上にテレビがある。

その右側には低い机、その更に右にソファがある。


ご主人はよくソファに寝っ転がりながらテレビを見ている。


その時に私が低い机に飛び乗ると、少しだけ頬を緩めて手を伸ばして撫でてくれるのだ。


ソファの右側、部屋の右上の辺りには本棚がある。


部屋の左下にドアがあって、右下はキッチンだ。

キッチンの正面に小さめのダイニングテーブルがある。


そしてペットカメラが設置されているのはこのテーブルの上なのだ。


なんとなく想像できただろうか。

まぁ覚えておけばいいのは、ダイニングテーブルの上にカメラが設置されているということくらいだから、他のことはあまり気にしなくていい。


そしてこのリビングの左隣の部屋がご主人の寝室だ。

私とうどんもそこで寝ている。


寝室とリビングの間にはドアがあるが、私たちが部屋を行き来するのにそのドアを開ける必要はない。


なぜならご主人がペット用の出入り口を床の付近に作ってくれたからだ。


ここで重要な点がある。

ペット用の出入り口は角度的にカメラに映らないのだ。


そのためうどんはカメラにその姿を捉えられることなくリビングに来ることができる。


そしてそのままリビングでいたずらをすれば、それは全て私がやったことになってしまうのだ。


ご主人はうどんがケージを抜け出せることを知らないから。


強引にいたずらを止めることもできなくはないが、もし怪我でもさせようものならどうせまた私だけ悪者だ。


それに昼間は眠い。

私は夜行性なのだ。


うどんの奴も夜行性のくせになんであんなに元気なのかは知らないが、昼間は寝てたい私にとっては迷惑極まりない。

一度きっちりお灸をすえてやらねば。


前置きはこのくらいにしておいて、そろそろ行動を開始しよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る