関わると死ぬという家の話

2話 不気味な絵

皆さんに協力を呼びかけ、数日が経ち一通のメールが届きました。

名取秋斗　様

こんにちは。

先日名取様の記事を拝見させていただいた者です。

記事の内容に心当たりがありメールいたしました。

直接お話がしたいので会っていただけないでしょうか。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　近藤瑛人　　　　

聞き覚えのない男の名前に不信感を抱きつつも話の内容が気になってしまい、結局会うことにしました。

午後3時　都内の駅近くのカフェ

まちあわせの席に座っていたのは白いワンピースに青いカーディガンをきた華奢な女性でした。もう一度待ち合わせの席を確認して困惑しているとその女性がこっちを見て軽く会釈をした。一度だけ広瀬と会っているのを見かけた、その時の女性でした。

名前は　金堂ゆずな　23歳　

彼女は広瀬の会社の後輩らしい。

「今日はお越しいただきありがとうございます。性別を偽ってしまい申し訳ありません。少し事情がありましてこのような形となってしまいました。実は私も広瀬さんの行方が気になっていたんです。なんせ突然連絡がつかなくなったので、おそらく私が相談していた内容と関係があります。

私は〇〇区のマンションに一人暮らしをしていました。ちょうど今から3ヶ月ほど前でしたかね、私の部屋のドアの前に変な、絵？のようなものが書かれていたんです。チョークで書かれていたのですぐ落ちたし近所には小さい子たちもたくさん住んでいたのでイタズラだと思いそこまで気にしてはいなかったんです。でも、そんなことがずっと続いてだんだんエスカレートしていきました。例の絵がドア一面に貼られていたり、深夜に変な電話がかかってきて電話の奥ではなにか言っていたみたいなんです。お経を唱えているような感じで、けどよく聞き取れなくて、もう怖くて毎日気が気ではありませんでした。警察にも言って近所の巡回を増やしてもらったりもしました。でも特に不審な人は見当たりませんでしたね。広瀬さんにも絵のこと、変な電話のことを相談したんです。

ああ、例の絵ですね、あれはたしかばつ印が書いてあってその交わるところに人のようなものが書かれている絵でした。とにかく不気味な感じの、

広瀬さん、その絵を調べていたみたいでよく連絡をくださっていたんですけど、1ヶ月前に行方がわからなくなりました。私も詳しく行き先を聞いたわけではないのですがあの絵にまつわるところに行ったんだと思います。広瀬さんいわくあの絵はなにか宗教的な意味があるかもしれないと言っていたので。」

彼女の話を聞く限り広瀬の行方がわからなくなったのは不気味な絵の調査が関わっている可能性が高そうだ。

「よければ広瀬とのメールのやり取りを見せていただけますか？」

メールの一部を見せてもらいました。

メールの内容

８月7日

広瀬　お疲れ！今日も、あの絵貼ってあった？

金堂　お疲れ様です。今日も相変わらず、絵については何か分かりましたか？

広瀬　あの絵ね、あまりいいものではないかもしれないんだ。まだ詳しく分かっていないからなんとも言えない。だから関係のあるところへ行ってみようと思うんだ。何か分かればまた連絡するよ。家は大丈夫？

金堂　はい。少し離れたところに実家があって母が暮らしているんですけど明日からそこで生活させてもらうので問題ないです。色々ありがとうございます。

8月19日

金堂　お久しぶりです。最近連絡がありませんが、お元気ですか？返信待っています。

8月27日

金堂　返事をください。今どちらにいるのですか？無事なんですよね？

9月6日

広瀬　遅くなってごめん、今時間がなくて、とにかく君はもう関わったらいけない。また会おう

金堂　どういうことですか？いま、何をしているんですか？

９月7日

金堂　連絡をください。無事なんですか？

9月7日にメールを打ってから返事が来なくなったそうです。

あの絵にはなにがあるのか、広瀬は何を知ったのか。

今、生きているのか。関わったらいけないものとはなんなのか。