とある世界の「魔女」さん
ギョほほほっゲボ
第1話副作用&魔法薬
マンドラゴンの乾燥済み鉤爪に新鮮なスカー・アイを大さじ1、聖水をジャックランタン一杯注ぎ、壺に入れて、シリウスの方向に向かって、混ぜ混ぜ…仕上げにひとつまみの信仰心!これで精力回復魔法薬の完成だ!
リコリス特製である以上、回復効果は言い分なし、例え、あの傲慢で礼儀知らずのクソエルフが見ても、文句のつけ所など、一つもありやしない!もちろん、その副作用も、驚きがあって、使った人に生活の新鮮味を与えるに違いない!
などなどの賛辞を己に向けて放ちながら、赤髪の少女-リコリスは一週間不眠不休に耐え続けた体と精神を休め、枕の山に埋もれた。
魔法薬の専門店「Side Effect」、千年以上の老舗が三軒に一軒あるほどたくさん集う街-アフターシルルで設立年数は最短であるが、年間売り上げ額が街のトップ5に入れるくらい人気の店である。外見は寄生型のつる植物が数十種も絡めあって、はっきり分からないが、店主の魔法薬を創る花瓶が時折奇声と液体を放ち出すため、とても見つけやすい。ついでではあるが、その店の右には現役のギリシャケールが開くタバーン「anonymous」、左には植物のための植物園、言わば合コン会場みたいな店「MISTLETOE」が建っている。いずれも千年以上の老舗で、売り上げ額が一二を競うほどである。
余談はさて置き、今編の主役の一人、「魔女」リコリスが短い気絶から意識を取り戻したようだ。
「げっ!不眠不休はやはり魔女にとってもきつい!枕に溺れる所だった!」と怖気付いたような言葉を漏らしながら、口に入った髪を取り出した。無理もない、何せ、この少女の髪はとても膨らみやすい癖毛であり、セットスプレーもかけていないのだから。枕の山から這い上がってきたリコリスに、櫛や鏡、歯ブラシやタオル、自分で作った料理を乗せてレンジが軽快なステップで集ってきた。自分の仕事をこなしながら、魔法生物たちはざわざわと話し出した。
「こんばんはボス!この度も素晴らしい魔法薬をお創りになるとは、さすがはボス!」
「今日もお美しい姿でいらっしゃいますよ、ボス!」
「嗚呼!なんともお美しいお肌っ」
「結構です!今月の特別報酬は10プラートン上げるから、静かにしてください!」
一斉に「ありがとうございます!」と叫んだ魔法生物の店員たちは静けさをリコリスに戻してあげた。彼女は朝食を済まし、身支度を整えて、店を開いた。
「今日は紅月か!きっとお客様さんがたくさんいらっしゃるはずです!頑張らないとですね!」
と、自分に励ましの言葉をかけ、今日も元気に商売をしている「魔女」さんでした。
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