孤雲曲

離風

孤雲曲 解説

孤雲曲コウンキョク


仲夏風離菫チュウカフウリキン 嵐輕暮谷岐ランケイボコクキ

淡紫色の仲夏の風が 黄昏の険しい谷を静かに吹き抜ける


音迴空嶽滿オンカイクウガクマン 語佇夜星稀ゴチョヤセイキ

あなたの声が響き渡り 何もない山中を満たす 僕の言葉は、まばらに輝く星々の間にただ佇むばかりだ



鳴蟬縈九月メイセンエイキュウガツ 紅葉落秋衣コウヨウラクシュウイ

九月の蝉はまだ鳴いている しかし紅葉はすでに舞い落ちている


晚夏樹猶蔭バンカジュユウイン 蝶擁花草嬉チョウヨウカソウキ

緑陰をまとった木々はまだ晩夏に留まっているかのように見え 蝶たちは草花の中で戯れている


苦我遠亦思クガエンエキシ 亂我遙所憶ランガヨウショオク

それは、僕に苦く響くあの思い出のようだ 僕の遠い記憶をかき乱す


踽踽天海間キョキョテンカイカン 羽沉覆蹤跡ウチンフクソウセキ

僕は天と海の間を一人歩み続け 落ちた羽はやがて時に覆われ 痕跡も消えていく



初雪拂亂風ショセツフツランプウ 群雁復南來グンガンフクナンライ

初冬に降り始めた雪が乱れた風に乗り 雁たちと共に再び南へと舞い戻る


蛙木結成冰アモクケツセイヒョウ 土凍腐葉埋ドトウフヨウマイ

木蛙は氷に閉じ込められ 凍った土が腐葉を深く埋める


轉瞬破新枝テンシュンハシンシ 鳴雷狂雨落メイライキョウウラク

瞬く間に緑の枝が再び芽吹き 雷鳴が轟き豪雨が降り注ぐ


葉綠拙燕返ヨウリョクセツエンヘン 揚子江豚飛ヨウスコウトンヒ

緑葉と燕たちが帰り 揚子江のイルカが跳び跳ねる

惟我一孤雲イガイチコウン 茫茫無所歸ボウボウムショキ

だが、僕だけが孤雲となって 行き先を知らずさまよう



笑靨昔日繁ショウエイセキジツハン 喪頹翌日晨ソウタイヨクジツシン

かつて咲き誇った笑顔が消え その後に訪れる翌日の虚しさ


如君常我側ジョクンジョウガソク 往念可療心オウネンカリョウシン

もしあなたがいつもそばにいてくれたなら 過ぎ去りし思い出は 僕に少しの慰めをもたらすのでしょうか

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