幕間 一方、その頃②
無益な争い…殺し合いも。もう沢山だ。
……ロット様!!
「…!!!」
「お目覚めですか。2日前、村の前で倒れてた所を……」
2日。2日だと。
「!?…あ、待っ……」
『権能』を使用し、『神力』を激しく消費した所為で、一時的に慣れない少女の体になった我は、体の制御が出来ずに床に転がった。
「い…いけません、エヌカロット様!!まだ安静に…」
「駄目だ。我は…アイツが殺した分の命を…育まなければ…!!」
何度も転び、ドアノブに手を伸ばそうとした所で、不意にドアが開いた。
「れ…レンさん!!エヌカロット様が…」
「っ…エヌカロット様。このトマちゃんや村の動物達の肉を使ったミネストローネでも食べて落ち着いてくれ。ロネ…エヌカロット様をベットまで頼む。」
「ごめんなさい、エヌカロット様……」
「は、離せ!!っ…離してくれ……」
我の抵抗も虚しく強制的に、ベットの上に座らされた。
「ロネ……鶏の世話に戻ってくれ。」
「は、はい。」
細長く尖った黒い石を紐で首に吊るした少女は、申し訳なさそうに我やレンに一礼した後、部屋から出ていった。
「…ほら。」
我は、お皿に盛り付けられたミネストローネをスプーンを使って食べようと……
「……エヌカロット様?」
僅かに困惑するレンにお皿とスプーンを渡し、窓越しで外を…【偽りの空】を眺めて歯噛みする。
(戦争……っ何故、何故……生命は。)
何度、争う事をやめられない?
……
…
(……Gift:『透視能力』)
えーと『◾️様』から生まれて、早…何万年だっけ?寝てたからイマイチ記憶にないわ。
で、わたしはどうやら…『創造』に巻き込まれて変な機械の心臓部に組み込まれた結果、閉じ込められてしまったらしい。
こりゃあ、『気配消滅能力』を解いておくべきだったかな?生きる為に必要な食事や排泄は…『大神』だからそれ程、重要じゃないけれど。
別にここから出てもいいが、この場所は隠れ蓑として最高だし。ある時、気まぐれで、いつもこの場所に来る吾輩っ子に『テレパシー』を送って兵器を造る代わりに、入れ口に週一でお弁当を入れるように命令もしちゃったからな。
『えぇ!!マジでありまぁすか!?』
(後、わたしの事は…秘密にしといてね?)
『了解であります!!!』
まあ純粋すぎて、内心ドン引いたけども。ともあれ、今の所は約束も破ってないようだし、引きこもり生活万歳だ。それに週一弁当は量が多い事以外は、味もかなりいい線いってるし。量については、少なめにしてくれとは頼んではいるのだが……
『これは吾輩の感謝を表しているのでありまぁす!!残したら残したらで、吾輩が1人て来た時に出してくれればいいでありまぁすから!!!』
この一点張り。残すのも勿体ないし、そろそろ真剣にわたしに『空腹能力』の付与を検討しようかな…?後で死ぬほど後悔しそうだけども。
(ふぁぁ…まあ、しばらくは仕事もなくなって暇になりそうだし、二度寝しよ。)
これは、ただの寝る前の退屈しのぎなので、聞き流してくれて結構。わたしは考え事をしながらじゃないと寝られないタチなのだ。
……遥か昔。『大神』は13柱、存在した。
最初に『◾️様』から生まれた『大神』である『◾️◾️◾️』◾️◾️◾️は産まれた瞬間、この世の全てを悟り『◾️◾️』の権能を使って、ナカラ以外の記憶を操作し行方をくらませた。そう、これがわたしだ。
——12柱
最後に生まれた『和神』ムニムニは、新たに放たれた竜よって死亡。死に際に放たれた彼女の想い…『権能』により、全種族が協力し【第二次竜征伐】を行うきっかけを作った。
——11柱
悪戯好きでユティに慕われていた『悪神』ロトは、最後の足掻きで天界に向けて放たれた…終末竜の『石宝』の一撃を一身に受け、死亡。
——10柱
悪魔を憎悪する『祝神』マリアは、【第二次竜征伐】の終盤…独断で煉獄へ繋がるゲートを作り、その身を犠牲にして煉獄を穢した後、『儀式の代償』によって膨大な呪いを浴びて死亡した。
——9柱
ムニムニと親しい間柄だった『医神』スネは、種族関係なく【第二次竜征伐】で負傷した者全てを、根気強く治療した後…今まで薬で抑えていた喪失感といった感情が爆発し、人知れず精霊の森の中で服毒。死亡した。
——8柱
誰が何と言おうと、死には意味があると自分を曲げなかった『冥神』パティスは、【第二次竜征伐】で死んだ『大神』も含めた神達を早く蘇らせろと『大神』以外の神々に口々に言われ続けた結果…この世界に失望し、天界で騒動を起こして、カオスの『審判』で、死亡した…という事になっている。
——7柱
パティスとはライバル関係だった『太陽神』エヌカロットは、その騒動を聞き、すぐに友の代わりにその責任を取る形で、自ら『大神』を辞任。その時、病んでしまったカオスに代わってエクレールがエヌカロットに『審判』を行い、その後…大陸へと降りた。
——6柱
確実に起きる未来に身を委ねつつも、その外にいるユティを少しでも長く生かす為に全てを賭ける『秩序神』ナカラは自身の権能に従い、マリアの一件以降、不毛の大地と化していた『煉獄』の復興に尽力した事で関係を回復。大陸中央にある巨大な穴を塞ぎ、その上に神都クロネスを建設。そこで『精霊王』と『
そうして生き残ったのは、たったの5柱。
救えなかった弟の事を引きずり、全てが嫌になって天界から逃げ出した『正義神』レオ。
中立の果てに心を壊した『中立神』カオス。
哀れな『混沌神』バリラ。
慕った者も花婿も失い『大神』から降ろされても尚、健気にも生き続ける『創造神』ユティ。
【第二次竜征伐】の勝利に大きく貢献し、半血の妹を守る為に公爵級の悪魔から、神に成る事を選び、ムニムニの最期を看取った『破壊神』レレア。
こんな所かな…あ。違う違う!行方不明のわたしも含めたら、6柱だったわ。いや失敬、失敬。
ふぁぁ……そろそろかな。
ナカラの計画に手を貸すつもりはなかったけど、戯れに船も造ってあげた…今頃。天界に着いてる頃だろう。
わたしの『権能』を使えば、天界の様子とか見れるんだけど…マジで、どうでもいいなっ。
いやはや。しようと思った事が何でも出来ちゃう『全能』ってのは辛いものだ。何も持たない人間が羨ましいよ。本当に……本当だよ!?
まっ…天界が大陸と隔離されようが、煉獄が封じられようが…帝国が滅ぼうが、最後に精霊が1人勝ちしようとも……わたしには関係ない話。
全てが全て…どうでもいい……Zzz…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます