16 強襲作戦
翌日の真夜中。例の施設へと向かう『八重桜』の甲板上で…俺は眠そうに欠伸をする2人に軽くキレそうになりながら再度、計画を伝える。
「…作戦はこうだ。」
まず、マキナが操作する『八重桜』は、施設に制圧射撃が出来る最大射程ギリギリの…このポイントαで待機。
俺とユティはそこから、徒歩で麓にある施設を目指し、着き次第…マキナに合図を送る。
「…ふぁぁ〜…暗がりでも、近づき過ぎたら見つかるんじゃない?」
「それについては…何度も考えたから問題ない。いくら神や悪魔であろうと、この段階で俺達が攻めて来るとは思えないからだ。」
警戒しているのは、悪魔の侵攻路とされる山岳の山頂のみ。麓はノーマークだろう。
(悪魔は快楽主義者の集まり。たとえ元締めが神と同盟を結んでいようとも、どの道…そんなの関係なく勝手に暴れているだろうさ。)
「合図にはこの…」
「ロケット花火でありますね!!それが打ち上がり次第、吾輩の『八重桜』のフルパワーで施設ごとドカンッ!!!…楽勝でありまぁぁ〜す…ぐぅ…」
「…施設自体は壊してもいいが、鉱山の入り口だけは駄目だからな。」
「…っは!?起きてよっ、マキナちゃんが寝たらこの船、墜落しちゃうよ!?!?」
「……ぅうん。はっ!!そうでありまぁしたね。気をつけないと…むにゃむにゃ…」
「ダメーーー!?!?ね、ラスネトもマキナちゃんを起こすの手伝って!!」
「…はぁ。」
果たして2人は俺の話を、ちゃんと聞いてくれているのだろうかと不安にはなるが…ここまで来たのだから、もう止まる事は出来ない。
女神と一緒になって、必死でマキナを叩き起こしながら、ポイントαへと到着し…作戦が始まった。
……
女神を先頭にして、舗装も特にされていない山道を登る。
「あー。星見えないなぁ…残念。」
俺が持っているロケット花火は、『八重桜』の残り少ないブロッサム弾を無駄に浪費してマキナが全自動工廠で半泣きで作った物で。
…今回の作戦の要である一度きりの制圧射撃をもって『八重桜』の弾薬は……底をつく。
雷神との戦いで弾薬を使い過ぎだ…とマキナ責めるつもりはない。こうなった元凶は、ここにいる女神だからな。
「ひっ、ひくちっ……ねえ、ラスキッミト。誰かが私の悪口を言ってる気がするんだけど?」
「今は集中しろ…やっと目的地に着いたか。」
見張りであろう天使2人に見つからないように施設から離れた茂みに隠れつつ、すぐにロケット花火をセットして、ユティの方を見る。
「ユティ…火。」
「あのねラスト。私、実はね。知らなかったかもしれないけど、マッチとかライターじゃなくて創造神なんだぁ……分かる?」
暗がりだから表情は分からないが、何故か拗ねているようだ。やられっぱなしなのは、こちらの方だというのに俺…お前に何かしたか?だがここで言い争いをする暇も時間もない。
「ユティ。俺が何かしたのなら…あ、あ…。」
おかしい…どうして謝れないんだ?っ。ひょっとして…今まで女神の行いが祟って、俺の魂が女神に対して謝罪をする事を強く拒絶しているとでもいうのか。うくぐ…しかし…まあ一応、万が一にも、俺が女神に対して何かやらかしていないか考えてやるとするか。どこかで見落としがあるのかも…
まあ大体1分くらい熟考した後、俺は俯きながら結論を述べる。
「何度も考えたが、俺はユティに対して謝罪しなければいけない要素はないし、永遠にするつもりもない。だが、俺の果たすべき事が終わった時には、いずれ…いつか…そう!可及的速やかに何らかの形で返還して…ユティ?」
いつまでも何も反応がなく顔を上げると、そこに女神の姿も…置かれたロケット花火もなく…周囲を見渡すと、すぐに女神を見つけて…俺は何も考えずに茂みから飛び出していた。
「侵入者は…始末。『戦神』アデネ様の言いつけ…ん?まさか、天界のやらかし担当のユティ様…ですか?」
「そうそう。でも今は逆賊のユティだよ☆ちょっち、ここで花火がしたくねえ。アデネッチは元気かな?」
「ええまあ…いつもと変わらない様子で悪魔と戯れていますが…っ!?なんですかアナタは?」
片方の天使の右手が槍に変化して、俺に向けられる。
「っ…落ち着け!俺に槍を向ける前に、ユティを止め」
「さあさあ、宴の時間だぜ☆喰らえやぁオラァァァ!!!!!」
「「…っ!?」」
指に火を灯した
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