護衛の忍びに貞操を狙われています。
蜜りんご
第1話
「今日も無事だといいな…」
今日もあいつの帰りを待ちながら、あいつがいるはずの方向を見上げる。雨が降る空を見上げながら、あいつの無事を願う。あいつとは、俺が14になるまで護衛を務めていた
「
側仕えの下女が命令してくる。俺が何してたっていいだろ、と思う。俺は雨に少しあたったくらいで風邪をひくほど病弱でもない。女じゃないんだからすこし寒くても大丈夫だ。下女の過剰な心配がうざく感じてしまうが、親王である以上ある程度体は大事にしなくてはならない。
「…わかった」
すごすごと御簾の中に戻った俺を見て下女は部屋の奥へと下がっていった。
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鋼影は3年前に唐へと武者修行に行った俺の護衛を務めていた忍びである。鋼影の生家である浪梅家は天皇家に代々仕えてきた忍びである。鋼影が武者修行に選出された理由は兄弟で下の方であり、唐に伝わる武術を学ぶことによって更なる浪梅家の発展に繋がると鋼影の父である浪梅家当主が考えたからだ。
もちろん離れるのは嫌だったし、危険も伴う航路で俺は反対した。けど天皇家でも権力の弱かった俺の意見は受け入れられず、鋼影と共に30人ほどの浪梅家の忍びが極秘で旅立っていった。鋼影が旅立つ際に気づいたこの恋心に蓋をすることはできなくて、鋼影が旅立った夜に俺は1人啜り泣いた。何故かというと鋼影との関係は生まれたときからあり、いずれは俺の専属の忍びとして選任されるとされていたからだ。
まだお互いの立場が分かってなかった内は蹴鞠をしたり、竹馬をして遊んだ。俺が9歳になる頃までは無理やり遊んでもらってたのはわかってた。けど俺が10歳になり、王位継承位が2位になったことによって兄のように慕っていた鋼影は変わってしまった。俺のことを雪雅様と呼び、いつだって歩くのは俺の斜め後ろ。鍛錬を重ねてどんどん逞しくなり、距離がだんだん遠くなるように仕向けているあいつを俺は受け入れられなかった。
皇太子の父上にだって交友関係を築くのは、上級貴族のみだけにしろと散々怒られた。後から聞いた話だが、鋼影の父上である浪梅家の当主から圧を受けていて肩身の狭い思いをしていたと知った。長男だった俺が兄に憧れるのは、仕方がないことだと思っていた。それなのに、なんで周りは受け入れてくれないんだと憤ったものだ。
「ああ、早く帰ってきてほしいなぁ」
あれから3年経ち、俺も大人になったからもう枕を濡らして寝ることはない。けど、好いた相手が知らない土地で他の誰かもわからないやつと寝ているなんて許せそうにない。そんな相手がいないように、しっかり生きて俺のもとへ戻ってくるようにと心の中毎日祈り続けて眠りに落ちるのが俺の日常だ。
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