第3話

 アヤトと初めて食べた晩御飯はハンバーグだった。しかも彼の手作り。ハンバーグソースもちゃちゃっと作っていた。ケチャップとウスターソースを合わせ、独自にスパイスを加えていた。


 手作りのポテトサラダにコンソメスープ。ホカホカのごはんもある。


(わ~……おいしそ……)


 翼は久しぶりの上げ膳に激しい空腹を感じた。こんなに手の込んだ料理はここ何年も作っていない。


 仕事のストレスが心に来て、毎日ギリギリの精神状態だった。


 そのせいで気力が湧かず、連日スーパーのお惣菜に頼っていた。祖母が亡くなってからは特にそうだ。彼女に会って話すのは、翼にとって一番の精神安定剤だった。


 湯気が立つ食事を眺めていると、アヤトが目の前に座った。エプロンを脱ぎ、ベストの一番下のボタンを外す。


「ささ、あったかい内に食べて! ポテサラとごはんはおかわりあるからね」


「ありがと……」


 おいしそうな食事を前にしたせいか、彼への警戒心は薄くなっていた。我ながら現金なヤツだ。


 これも翼専用の箸を手に取り、小さく手を合わせる。


 ハンバーグを一口サイズに切り、口へ運ぶ。柔らかな肉が口の中でほどけ、優しい甘さのソースに目を見開いた。次第にスパイシーさをが舌の上で弾けた。


「どう? どう?」


 アヤトも箸を持っているのに手をつけていない。翼が食べるのを見守っていたようだ。


「おいしい……」


 小さな声でつぶやくと、彼は”よかったー”と笑った。


「誰かに食べてもらうの久しぶりなんだよ。つい張り切っちゃった」


 アヤトも箸を持って手を合わせた。翼よりも大きな一口サイズのハンバーグを口に運び、ご飯をかきこむ。”やっぱり俺の料理最高!”と自画自賛している。


 こうして誰かと食卓を囲むのは随分久しぶりだ。しかも家族以外の人、というか悪魔と。


 食べ進める内に体も心もあたたかくなっていくようだった。


 この家で家族そろって食べた日が懐かしい。祖母が亡くなってからはここへ帰ってくる日も少なくなっていた。


「アヤトって今までどうやって暮らしてきたの?」


 翼はポテトサラダの滑らかさに感動しつつ、話題を振った。この際いろいろ知りたい。おとぎ話の存在に初めて出会ったのだ。


 祖母との関係も聞いてみたいところである。


 アヤトはコンソメスープをズズッと吸い、スープカップを置いた。


「君たちと大して変わらないよ? ここ数十年は水商売で働いてる」


「あんた見た目いいものね」


「まぁね」


 やはりと言うべきかアヤトは謙遜しない。そんな彼を翼は半目で見つめた。


 アヤトはポテトサラダが入った器を空にし、そっとテーブルに置いた。


「実は風子とは、ホストクラブで知り会ったんだよ」


「え!? ばっちゃがホス狂い……?」


 若干ショックを受けると、アヤトは吹き出しながら手を叩いて笑った。


「違う違う。風子が18の頃、ナゴヤの花屋で働いていたんだよ。ウチのクラブの開店祝いでフラスタを届けに来てくれたの」


 祖母は翼と同じくナゴヤで生まれたそうだ。後に夫となる祖父に出会ってここへ引っ越してきた。祖父はこの町の生まれだと聞いた。


「風子は花屋の看板娘で超モテてたんだぜ。でも誰の誘いも断ってた。お金を貯めるのに必死で遊びに費やしたくないってさ」


 花屋として働く祖母の姿は、白黒の写真で見たことがある。翼とも翼の母とも比べものにならないほど美人だった。目鼻立ちがくっきりとしていて、立ち姿もシュッとしていた。写真に一緒に写る女性たちと違い、昭和の大女優のようだった。


「若い頃はたくさん働いていろんな国へ行った、って聞いたことがあるよ。日本では見れない花を見たいから、英語圏の国はほとんど回ったって言ってた。……そういうことか!」


『見て、翼。この花はここでしか咲かないのよ』


『崖っぷちじゃん! どうやって行ったの?』


『さぁ……どうだったかしら。随分昔のことだから忘れちゃったわ』


 風子はよく、アルバムを引っ張り出しては翼に花の写真を見せてくれた。皆には内緒だと言って。何かを質問すると時々はぐらかされた。


「ばっちゃの話は不思議なことが多いと思っていたのよ……。あんたが連れて行ってたのね」


「休みの度に悪魔の力で風子をいろんなとこへ連れってったよ。国外もだし、国内では秘境と呼ばれるようなとこも。何を見ても想像より大したことなくても、風子は喜んでくれたな。いろんな場所へ行けたのも楽しかったみたい。お金のことも言葉の壁も気にしなくてよかったからね」


「ばっちゃは自分の夢を叶えられたんだ……よかったな……」


「この話は誰にもしないって言ってたけど、君にはしたんだな。旦那にも墓場まで持ってく、って言ってたのに」


 確かにいつも、祖母は”ばっちゃと翼だけの話よ”と言って人差し指を唇に当てていた。


 その花のアルバムは遺言で”翼が棺桶に入れて”とあったので、今はもうない。最後に中を見たが、何度も見返していたのか波打っていた。


 アヤトの顔は嬉しそうだった。先程、翼に料理を褒められた時と同じくらい。


「ばっちゃとあなたは人助け? してたのよね? 何をしてたの?」


「花屋に来る客の困りごとを解決したり、話を聞いてた。場所が場所だからさ、好きなホステスを振り向かせたい男が多かったんだよ。色で組み合わせたり、花言葉を重視したり。素敵な花束をたくさん作ってた。風子の得意分野だよね」


「私も教えてもらった」


 祖母はただ花が好きなだけでなく、花言葉にも詳しかった。花一輪挙げても色ごとに花言葉が違う。それを全て記憶していた。


「それで恋が叶ったりしたの?」


「半々かな。叶わなくても花束を気に入ってくれた人は多かったみたい」


「へ~……ちょっと楽しそう」


 食事を終え、今度は翼がお茶を淹れた。翼が買ってきたとっておきのローズティー。


 ”たまにはこういうのもいいね”とアヤトも気に入ってくれたようだ。


 翼の母は大学進学を機にナゴヤへ引っ越した。そのまま住みつき、後の夫である翼の父に出会って結婚。なので翼はナゴヤ生まれナゴヤ育ちだ。しかし、本来の実家はもうない。


 両親が祖母との同居のためにこちらへ移り住んだので、ある意味ここが翼の実家だ。


(……朝か)


 翼はベッドの上で体を起こし、目をこすった。こちらへ来てからは健康的に早寝早起きができている。


 朝は爽やかに目覚め、夜はゆったりと眠りにつく。仕事をしていたら絶対に送ることのできない毎日だ。


 小鳥のさえずる声、カーテンのわずかなすき間から漏れ入る朝日。仕事の日だとわずらわしいが、ここでは清々しい朝を迎えられるアイテムだ。


 この日も着替えて顔を洗い、外へ出た。


 朝日をたっぷりと浴びて背伸びをする。家を出る前にアヤトに声をかけようかと思ったがやめておいた。


 夜は本業でナゴヤに赴いている。悪魔だから体力は底知らず、と自慢していたが見た目は普通の人間。いつの間にか彼が悪魔だというのを忘れかけている。


「おはよう、翼ちゃん」


「新海のおばあちゃん。おはようございまーす」


 近所のおばあさんだ。シルバーカーの柄をしっかり掴み、ゆっくりと歩いている。


 彼女は祖母と仲が良かった。立ち止まり、片手で拳を作ると腰をトントンと叩いた。


「まー今日もいいお天気ねぇ」


「ね。いい陽気だね」


 その後、あばあさんに帰省した息子の手土産をおすそ分けすると言われ、家までついていった。おじいさんと二人ではとても食べきれない量らしい。早起きは三文の徳というのはこのことかもしれない。


 新海老夫婦の息子は翼の両親より少し歳下で、県外に住んでいるらしい。連休中に帰ってくるのが楽しみだとおばあさんは笑った。


「あの可愛い子にも食べさせてあげとくれ。アヤト君に」


「うん」


「あんなに小さいのによくしっかりしとるねぇ」


「そ、そうだね」


 アヤトは翼以外の前では少年の姿になる。それがまた、悔しいくらい可愛らしいのだ。正体は悪魔だなんて誰も見抜けないだろう。


 なぜ姿を変えるのか聞いたら、”年頃の男女が一つ屋根の下は何かと噂が立つだろ”、とのことらしい。


『君に彼氏ができるチャンスをつぶしちゃいけないからね』


『出会いを求めて帰ってきたわけじゃないんだけど……』


(余計なお節介よ……)


 家に着くと、縁側で待っていてと庭に通された。


 遊びに来た息子夫婦と孫が草むしりをしてくれたおかげで綺麗になったと、おばあさんは嬉しそうに笑った。


 軒先からは家の周りを囲う塀と青空が広がっている。祖父母の家とは違い、古き良き日本家屋の風景。洋風の家もいいが、たまには和にふれるのもいい。縁側を吹き抜ける風が心地よかった。


「は~……いたた……」


「大丈夫?」


 おばあさんは腰に拳を当てながら翼の横に座った。その手にはお盆にのせた湯吞が二つ。


「翼ちゃんが来てくれて嬉しいやぁ。風子さんがいた時みたい」


「そう?」


「あんたも聞き上手だもんでなんでも話したくなっちゃう。私が話し過ぎてたら言いなさいよ」


「私もおばあちゃんと話してるの楽しいよ」


「もうあんたは……」


 おばあさんは翼の二の腕をパシッと叩いた。その表情は嬉しそうで、翼もつられてほほえんだ。


────かつて魔女と呼ばれていた祖母。彼女は悩める人々を救う”魔法”を持っていた。


 しかし、それはアヤトがきっかけだった。知った時は正直残念に思ったが、彼女に救われた人は多い。彼女のやってきたことは偉業だと、改めて祖母のことが誇らしくなった。


「翼ちゃん、昨日の晩の煮魚食べる? 朝ごはんはまだかん?」


 おばあさんに聞かれてうなずくと、ついでに食べていきなさいと誘われた。彼女のことを手伝うべく、翼は縁側で靴を脱いで立ち上がった。


 朝食をごちそうになり、帰路についた。


 思ったより長居してしまった。アヤトはそろそろ起き出した頃だろうか。太陽の位置が高くなっている。


 今日は何をしようか……と考えながら歩いていたら、門の前に人影があるのに気がついた。


 そこには制服姿の女子が二人。ワイシャツにネクタイ、プリーツスカート。確か海沿いにある高校の制服だ。


 こんな時間だがここにいて大丈夫なのだろうか。学校はとっくに始まっているだろう。


 学校に行きなさい、なんて声をかけるつもりはないが気になる。何を話しているのだろう。


「こんにちは!」


「こんにちは……」


 突然彼女たちに元気に挨拶されて驚いた。都会ではありえない光景だ。そもそも翼が住んでるマンションに子どもはいない。


 彼女たちは翼のことはもう眼中にないらしい。うつむくショートカットの女子に、ロングヘアの女子がバシッと肩を叩いた。


「この後いっちゃいなよ!」


「そう簡単に言わないでよ……」


「じゃあ電話とかで言えば?」


「やっぱりそうしようかな……」


「初告白なんだから気合い入れろ!」


 門を開けようと思ったが二人の会話が気になってつい、まごついているフリをして立ち聞きしてしまった。


 どうやらショートカットの女子が、ロングヘアの女子に告白の応援をされているらしい。


 青春だ……。誰が好きとか告白! とかそんな話題、十年近く聞いた覚えがない。


 そろそろ趣味の悪いことはやめよう、と翼は門の取っ手に手をかけた。


「翼ちゃん、おかえり~」


「ただいま」


 アヤトが出迎える方が早かった。彼は例の少年の姿で、子どもらしい無邪気な表情を浮かべている。


 彼は翼が帰ってくるのが気配で分かるらしく、こうして出迎えられることが多い。


「もう起きてたんだ」


「うん。気になることがあったしね」


 不意に大人びた表情を浮かべ、アヤトは外へ飛び出た。


「こんにちは!」


「こんにちは~。え!? 超かわいいこのコ!」


 彼が声をかけたのは、家の前で話し込んでいた女子高生二人。彼女たちは怪訝な顔をしていたが、アヤトの見た目にほだされたらしい。


「何話しかけに言ってんのよクソ悪魔……!」


 何を思ってそうしたのか。翼は頭を抱えた。悪魔のやることは理解が追いつかない。


「お姉ちゃんたち学校は?」


「ちょっとサボり。このコの恋バナしてたの」


「何教えてんの!?」


「いいじゃん小学生なんだから」


 ロングヘアがいたずらぽく笑う。楽しそうな二人を前に、アヤトは背中で手を組んだ。


「もしかしてだけどさ……あれって先生?」


「え?」


 二人は振り返ると、さあっと顔を青ざめさせた。


 その先にはジャージ姿のおじさんが一人。刈り上げたこめかみに青筋が浮いている。


 見るからに学校の先生だ。彼は女子高生二人をめがけて歩いてくる。


「きゃーもうバレた!?」


「早く! ウチに入って!」


 アヤトは二人の制服を引っ張った。


「なんでウチに入れちゃったのよ」 キッチンでアヤトと二人。翼は腰をかがめ、声を潜めた。 翼が引っ越してきてから初めての来客だ。しかも見知らぬ女子高生二人。「人助けチャンスだよ」「あぁ……あんたの転生のためのポイントってヤツ?」「そっ」「先生はどうしたのよ」 遠くに見えた男はやはり、彼女たちの先生だったらしい。二人が焦った様子で教えてくれた。 しかし彼が女子高生たちを呼び止めたり、この家に乗り込んでくることはなかった。「暗示をかけたんだ」「暗示?」「催眠みたいなモン。早く学校に戻らなきゃって思い込ませた。彼女たちがここにいたという記憶も消した」「わっ!」 天使の顔をしていたアヤトは、瞳を赤黒く変色させていた。どうやら魔法を使う時は悪魔の姿になるらしい。 知らない間に暗示をかけられてないか心配になってきた。「大丈夫、翼ちゃんには何もしないよ」「考えてることをバレる方が恥ずかしいんだけど」


「あだっ」


 翼はアヤトの額を人差し指でつついた。その瞬間に悪魔の姿が解ける。


 どいたどいた、と彼を横に追いやってアゴをさわった。目先の悩みは新しいタイプの来客のもてなし方。 女子二人だしおしゃれなティーカップセットで出した方がいいだろうか。なんならジュースとかの方が。 翼は冷蔵庫を開けた。中には昨日、カクテルを作るのに使ったフルーツジュースが何種類かある。 さすが水商売の男、と言ったところだろうか。彼は酒に弱い翼のためにノンアルコールカクテルを何種類も作ってくれた。「ねぇアヤト。昨日みたいに作ってあげて」「お安い御用。なんなら翼ちゃんに教えてあげるよ」 二人で用意したノンアルカクテルを持っていくと、彼女たちは絶賛撮影中だった。壁にたくさん飾られたドライフラワーがいいフォトスポットになってるようだ。


 掲げたスマホの画面に向かって、ピースをしたり可愛らしく口を開けている。「あ……すいません」「いいのよ。それを作った祖父母も喜んでると思うわ」 彼女たちは気まずそうに苦笑いしていた。一旦は辞めたようだが、角柱のようなおしゃれなグラスをテーブルに置くと再び目を輝かせた。


 祖母が集めたお茶会セットを出したらまた喜んでくれた。二人はノンアルカクテルを飲みながら、再びスマホをカシャカシャと鳴らした。


 そんな二人の姿に翼の中で気合が入った。アフターヌーンティースタンドを棚から出し、新海のおばあさんからもらったばかりのお菓子を並べた。バームクーヘンや一口サイズのゼリー、クッキーやチョコレート。あるだけのせた。


 四人でお茶会をし、翼が学校のことを聞くと恋バナに発展していった。


「フクに好きな人がいて、幼なじみなんです。夏休みにいい雰囲気になったけど付き合うまではいかなくて。思い切って告白しちゃいなよって話してたんです」


 ショートカットの女子はフクというらしい。ロングヘアの方はマウ、と名乗った。


「でも告白ってガチでハズイじゃないですか。直接言うのは勇気出ないけど電話とかはちょっと……」


「確かにね。私らの頃は電話とかメールでの告白はダサいみたいなイメージあったかも」


「今は多いですよ!」


「時代ね……」


 翼はこの二人と十歳離れていることに驚いた。いつの間にかすっかり大人になってしまった。


 翼は手元のグラスを軽く揺らした。いいグラスなので、氷が当たる音が綺麗だ。


「恥ずかしくても私は直接がいいと思うな。思い出に残るじゃない。SNSで告白したらスクショして形として残るせけど、言葉だったら自分たちでなきゃ思い出せないじゃん。誰も知らない二人だけの思い出、的な」


 告白なんてしたことないのについ、偉そうに話してしまった。


 学生時代はまともな恋愛経験はないのに、なぜか相談を受けることが多かった。


 想像でアドバイス的な言葉を返していたが、なんやかんやうまくいくことが多かったようだ。友だちの告白現場に相手を呼び出す手伝いをしたこともある。


『翼ー! ありがとう』


『先輩が実は自分も好きだったって。先越されちゃったけど嬉しいって!』


 一人で懐かしさに浸っていたら、リビングが静かになった。


 フクとマウが黙ってしまったのが気になる。もしや老害、と思われているのでは……と恥ずかしくなってきた。


「エモい!」


「そうなりたーい!」


「ふぁっ!?」


 甲高い声を上げた二人に翼は飛び上がった、その横でアヤトは澄ました顔をしている。


 フクとマウは椅子から立ち上がると、そろって翼の前に立った。マウは翼の手を握ってブンブンと上下に振った。


「最高ですお姉さん! 私、好きな人とエモい恋したいって思ってるんです……だから、最高の告白です!」


「正直告白を直接言うなんてありえないって思ってたけど、皆に広めたい! お姉さんマジありがとうございます!」


 この二人の訪問がきっかけで、高校生たちの間に翼とアヤトの話が広まった。あの家に行けば恋が叶う、悩みが解決する、と。


 翼のちょっとした一言で彼らの悩みを取り除けるのは嬉しかった。こんな風に誰かの役に立てた、と実感できたのは随分久しぶりだ。


 初めて学校に潜入して悩みを解決に導いた日。翼はアヤトに両手を握られてそれは大層に感謝された。


『ありがとう翼ちゃん! おかげで転生のポイントがたまった!』


『あんたはほぼ何もしてないのに?』


『俺は君を若返らせたり下見してるだろー』


『だって実際にアドバイスしてるの私ばっか……』


『そういうのは君の方が向いてるもん。適材適所だよ』


 そして、いつの間にか”魔女”と呼ばれるようになった。


 翼のことを家族に話した高校生が、"あの人は魔女と呼ばれた人の孫だよ"と祖父母に教えられたらしい。

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