第32話 屋敷に引っ越し2

『『……』』


しばらくしてアルトから通信魔道具に連絡が入った。


『『すまない。今バタバタしていたから。無事に着いたのかな?』』


「あっという間に着きましたよ。それと前もって言っておけば良かったのですが、僕はなので苦労しました…」


『『ええ?本当に?絶対喜ぶと思ったんだけどなぁ…それは申し訳なかった』』


やはり全く悪気は無かったらしい。

むしろ喜んでくれると思っていたようだ。


「それはもういいです。それで屋敷に使用人さんたちが居るのですけど…」


『『ああ、家が広くて管理しきれないだろ?折角だから良いかなと思って。勝手に雇ったから気にしないで良いよ』』


確かに屋敷は広すぎて掃除も出来そうにないのだけど。

屋敷を頂いたのにさらに使用人たちも雇っているとは…。

アルトには申し訳ないな。


「…ありがとうございました。凄く助かります。頂いてばかりで申し訳ないので、僕で良ければ何でもしますので…」


『『そう?今のところ特に何も無いけど…じゃあ、何かあったらお願いするかな…また今度ね』』


プツン。

通信は途切れた。




「はあ~何だか疲れた」


僕はロビーのソファーでだらけていた。


『お話終わった?じゃあ、二階へ行ってみない?』


コルネットに声をかけられる。


「そうだな。見ておかないと」


僕はおもむろに立ち上がった。


「旦那様、もう少ししたらお食事の用意が出来ますからお呼び致しますね」


旦那様?

近くに居た執事が僕を見て言った。

まるで結婚しているみたいな呼び方なんだけど。




   *




食事の用意が出来たとの事で呼ばれて食堂へ行った。


「な、なにこれ…」

『凄い豪華ね』


フルコース料理じゃないかという勢いで皿が多く並べられていた。

肉にサラダにフルーツ、パンとスープ

とてもじゃないけど食べきれそうもない。


「えっと、執事のマルロさん?」

「はい。どう致しましたか?」


「僕そんなに食べられないから、もっと品数を減らしてくれると助かるんだけど…」

「そうですか。ソウタ様は育ちざかりですから、沢山召し上がられると王が仰っていたので…」


コルネットは、沢山食べているようだった。

美味しそうに食べているのを見ると幸せそうだ…まあいいけどさ。




   *




「今日も暇だねえ~」


生活雑貨店の店主アンリは呟いた。

新品の商品は埃が被っていて、長い間放置されている状態だった。


「プノンは人が居ないんだからしょうがねえんじゃねえの?」


冒険者のノールが言葉を返す。


「アンタも大概だと思うけどね。仕事に行かないのかい?」


「依頼自体がほとんど無いからな。冒険者も暇ってことさ」


近くの森にモンスターは居ない。

ここ数百年は大人しくしているらしい。


「冒険者辞めて、農家でもしたほうがいいのか…」


答えは帰って来ない。

冒険者だと仕事が無いってことくらいで。

もしくは他の町へ行けば依頼はあると思うが。


「アンタもこの町を出ていくかい?」


「それは最後の手段だな…オレはもうしばらく踏ん張ってみるさ」


「無理しなくてもいいんだよ」


儚げに笑う女店主を見て、ノールはため息をついた。

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