極癒の狂戦士 〜治癒魔法を極め続けた結果、最強の肉体を手に入れる〜

さい

第1話 極癒の狂戦士

 生命というものは、傷をつけ続ければいつか死んでしまう。

 なんて貧弱な存在だ。

 どうすれば、死なない存在になれるのか?

 それは簡単なことだった。

 治癒魔法を極めればいい。

 そうすれば、人は死ななくなる。不死身になれる。

 そのことに気づいたのは、俺が五歳の時だった。

 だから、俺は鍛え続けた。

 どれほど傷を負おうが、死なない人間になるために――。




「魔獣が!! 魔獣が出たぞーッ!!」


 男村人の絶叫が響く。

 住民たちは悲鳴を上げながら四方八方に逃げ惑う。

 中には逃げ遅れて、魔獣に喰われる者もいた。

 俺は、逃げる住民の一人とぶつかった。


「おい、あんた!! そっちに魔獣が……」


 男が声をかけてくるが、そんなことはどうでもいい。


「わかってるよ。お前らは早く逃げろ」


 そう言い残し、俺は腰に剣を携えたまま、住民とは逆の道を進む。

 向かい風のような抵抗を感じながらも、足を踏みしめて前へと進む。

 やつを――魔獣を殺すために。


 街は炎に包まれ、木造の建物が崩れていく。

 焼け焦げた人々の悲鳴が耳に響く。

 俺は足を止めた。目の前に立ちはだかる巨大な黒い影――魔獣だ。


 剣を抜き、しっかりと握りしめる。


「……まだ人間がいたとはな」


 魔獣の声が耳をつんざくように響く。

 全身に鳥肌が立ち、冷や汗が額から滴り落ちる。


「ああ、いるぜ。この俺がな」


 影がこちらへと歩み寄ってくる。


「バカな人間だ、自ら喰われに来るとはな」


 ゲラゲラと笑う魔獣の姿が、炎の中で次第に鮮明になる。

 その姿は三メートルを超える巨大なクマのようだ。

 頭には二本の角が生え、身体中には真っ赤な人の血が飛び散っていた。


「うおおお──ッ!!」


 俺は剣を握りしめ、魔獣に向かって突進した。

 殺す。

 絶対に殺してやる。


 俺の剣は魔獣の足元へと振り下ろされるが、魔獣は瞬時にそれを避け、拳を振り上げた。

 次の瞬間、俺の顎に魔獣の拳が炸裂した。

 意識が遠のき、宙を舞う俺の身体を魔獣が掴み上げる。


「人間ごときが、ワガハイに勝てるはずがなかろうッ!!」


 そのまま地面へと叩きつけられる。

 バゴーンと地面にヒビが走り、吐血する俺の全身が砕け散る。

 激痛が全身を襲い、まるで千度の熱湯に浸かっているかのように身体が焼ける。

 だが、俺はこんなことで死ぬほど弱くはない。


 全身の痛みが消え、ゆっくりと立ち上がった俺を見て、魔獣は驚愕する。


「な、なぜ立てる……!?」

「んな理由は一つだけだ……俺は不死身なんだよ」


 剣を再び構え、魔獣へと迫る。

 魔獣の攻撃が俺に命中しようが、倒れようが、俺は何度でも立ち上がる。


「まるで、狂戦士だな……」

「ああ、その通りだ」


 スパッと剣が振り下ろされ、魔獣の右足に深い傷が刻まれる。


「グアアア──ッ!」


 魔獣は呻きながらも、再び拳を振り上げ、俺を叩き潰す。

 グチャッと、俺の身体がペチャンコになる。


「形も残らなくしてやるぞ……」


 何度も何度も、魔獣は俺を叩き潰すが、俺は死なない。


「はあはあ……手こずらせやがって……なッ」

「その程度の攻撃で俺を殺せるとでも思ったか?」

「なぜだ……なぜ生きている!?」

「簡単だ。俺は死なねェからだ」


 俺は足に仕込んでいた爆弾を使い、魔獣の高さまで跳躍する。

 同時に、下半身が吹き飛んだが、すぐに再生する。

  

「なんなんだ、その戦い方はッ!」


 剣を振り下ろし、魔獣の頭部を真っ二つに切り裂いた。


 「死にやがれエエエ!!」


 紫色の血飛沫が舞い、魔獣は崩れ落ちる。


 人々は俺のことをこう呼ぶ――狂戦士、と。


──────────────────────


ご覧いただきありがとうございます。

一人称で自分の容姿をいうのは変ですのでこちらで。

主人公の名前はカーズ。

年齢は二十二歳で鼻から両頬にかけて大きな傷があり、右腕は真っ赤に火傷を負っている。

身長は183センチで細マッチョ。

腰に携えている剣の名前は【天蝕の剣てんしょくのつるぎ】。

強力な切れ味を持つが、相手に与えた痛覚がそのまま自身の痛覚になる。

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