感情たん

幸福な教会で

感情が見つめる椅子に並ぶなら

君たちの名を上げるがいい


「いいだろう」

一人目は友情を手に

杯を高く上げた

「私は誰より友の犠牲になり、

多くの人を慰めました。

どうか私を認めて下さい

エモーション」


素晴らしい完全な偽善だ

額に飾った花たちを

友とも呼ばないその指は

毒に浸したその口は

……つんざく、知らない夜の部。


「ならこうだ」

二人目は愛情を胸に

真実の瞳を向ける

「私はただ一人を愛しました。

そして一人を救ったのです。

私はその人の喜びであり、

その人が私の喜びである。

エモーション」


素晴らしい完全な誤答だ

足で踏みつけたその他大勢

数えもしない関係ないもの

犬が鳴いても水もやらない

猫が死んでも埋めてもやらない

……13時に登校した、昼間の話。


「それならば」

三人目は衝動を足に

永遠に歩み続けたいと告げた

「私は動きたい時計。

刻みたい時間、費やしたい後悔。

絶望も、悲しみもぜんぶ、

ずっと存在してほしい。

苦しみを知り続けていたい

私はそのために生きているから

エモーション」


素晴らしい希望に満ちた

恐れ知らずの白紙の回答

感情とは突き動かすもの

ただ原点よりこみ上げるもの

ただの衝動それ自体を

……侮らずに感じたい、朝の誘惑。


幸福な教会で

感情が見つめる椅子に並ぶなら

君たちの名を上げるがいい


"感情かんじょうたん"は告げる

私はただあなたの中に居て

ただあなたの言葉に耳を傾けている


あなたの大切なもので

大切な人で 愛で

その幸せを与えるために

これからも裏切り 傷つけ続け

ハッピーエンドを目指すだけの

ぼくらの 音楽

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