転生したら大賢者の息子でした~既に最強な俺はヒロイン達を見守る~

ゆるふわ衣

第1話 『出会いと付与魔法』

 俺の名前はショータ。年齢は16歳だ。

 日本で暮らしていた時、ひょんなことから異世界に転生してきてしまった。

 そこから紆余曲折、16年間も異世界で時を過ごし......。

 今年からノワール魔法学院に入るため、この王都へと先日......というか。ちょうど昨日引っ越してきたところだ。

 

「――ちょっと! この剣高すぎじゃない!?」


 来週に入学を控え、散歩がてら王都を歩いていると魔道具店から大きな声が聞こえてくる。

 気になったので入ってみると、赤髪の少女が店主に向かって何やら文句を言っているようだ。

 魔道具店の中には剣や鎧、魔道具たちが所狭しと並べられている。カウンターの近くには試し斬りのための藁人形もあるほどだ。

 

 赤髪の子は美少女と呼ぶに十二分なほどの整った容姿をしていて、腰に剣を携えている。

 短い赤髪を揺らしながら、綺麗な朱色のつり目を鋭くして店主と相対している。


「おいおい、お嬢ちゃん。田舎から来たのか? 『斬撃強化』と『火属性』だろ? 王都じゃこのくらいの値段が妥当だよ。田舎娘はお呼びじゃない。買わないなら行った、行った」 


 彼女は『斬撃強化』と『火属性』の二つが付与された剣の値段に文句があるようだ。


「い、田舎娘ですって!? た、確かに、こっちに引っ越してきたばかりなのは事実だけどその言い方はないんじゃないの!? ルルもそう思わない!?」

「サラ、そんなに怒らないの。はい、アーン?」


 サラと呼ばれる赤髪の少女に、角砂糖を運んでいるのは青髪の少女だ。サラよりも少し身長が低く、対照的に長い青髪だ。

 赤髪がサラ、青髪がルルという名前らしい。

 サラは目を見開いていて元気いっぱいという感じ。

 ルルはジトーっとした目で、のほほんとした雰囲気をまとっている。


 二人とも同じ服を着ているようだ。

 黒色を基調とした魔法使いのような、学生服のような物だ。

 兄弟には見えないが、ペアルックというヤツだろうか。

 異世界でも日本でも同じような事を考えるもんなんだな......。

 しかし、サラもルルも恐ろしく顔立ちが美しい。

 どちらも年齢は俺と同じくらいだろう。

 

 サラは口に放り込まれた角砂糖をモグモグと味わいながら、癒された顔をしている。

 ――その隙に俺は小さなタルに入れられた剣を一本、手にとってカウンターへと持っていく。

 

「おっ、いらっしゃい。ってお前さん、コレ付与魔法が不完全な不良品だぞ? 値段は安くしてるがほぼ置物みたいなもんだ。切れ味も最悪だから普通の剣としても使えねぇし......」

「ええ、理解していますよ。コレでいいですか?」

 

 俺は質問に肯定しながら支払いを済ませる。


「後悔しても知らねぇぞ? ハイ、銀貨1枚ちょうどね」


 異世界と日本の通貨換算は、

 銅貨1枚 100円

 銀貨1枚 1000円

 金貨1枚 10000円。

 ちなみに彼女が文句を言っていた剣は金貨5枚。日本換算で5万円だ。


「モグモグ......。って、まだ話は終わってないわよ! ん?」

 

 俺はおもむろに剣を左手で持ち、右手を刀身にかざすと視線が集まる。

 手をかざしていった所から、剣に刻印が刻まれていく......。

 ――剣が薄い光に包まれる。


「お前さん、付与術師か。......はぁ!? おいおい、なんだその密度の刻印!」

「こんなの私、初めて見たかも......」

「きれい......」


 三人は目を見開いて、驚きながら剣を凝視している。


「よかったら、付与された魔法を見てくれませんか?」


 俺は付与を施した剣をカウンターに置き、店主に見せつける。


「あ、あぁ......。って!? 何だこりゃあ!? 『斬撃強化』『耐久強化』『軽量化』『二連撃』『魔法強化』だと!? おいおいおい! "五重付与"かよ!?」


 まぁ、驚くのは無理もない。――なぜなら、この人は詐欺をしていたんだからね。

 五重付与なんて普通にありふれている物だろうに。

 二重付与が当たり前だなんて嘘っぱちだ。

 

 『斬撃強化』と『火属性』の、たかだか二重付与で金貨5枚は流石に高い。

 これでサラとルルという少女達も騙されないことだろう。


「ちょ、ちょっと待って! "五重付与"ですって!? だとするとその剣......。こ、国宝級じゃない!」

「い、いや待てお嬢ちゃん。こいつは不良品なんだ。既に付与できない状態だから、剣がおかしくなって、変な表示になっているだけ、かも......あ......」


 店主は剣を持ってプルプルと体を震わせ、緊張のあまり手を放してしまったのだ。

 すると運悪く剣はカウンター側に刃を向けて落ち......。

 縦1メートルはあるであろうカウンターは、綺麗な断面を見せてパックリと切れてしまった......。 


「ほ、本物じゃねぇかァ......!」


 ルルのジトっとした青い眼がこちらに向けられる。


「本当に凄いね......!」


 ――否。

 ルルだけでなく、この場にいる三人全員に目を向けられているのだ。


「え?」


 ど、どういうことだ? 国宝? 本物?

 嘘を告発して、二人を詐欺から救おうと思っていたのに......。

 俺はてっきり二重付与した剣が"普通"だと言い張り、騙して売っている店だとばかりだと思っていた。五重付与が普通じゃないのか?

 

 俺の実力的に15個までなら付与できるんだけど、それをやったら驚かれると思って軽めにしたんだけどな......。

 ていくか、店主は白目をむいて立ったまま気絶してるし......。

 俺は恐る恐る二人に訊いてみる。


「ご、五重付与ってそんなに凄いのか?」

「凄いなんてものじゃないわ! 付与が可能な人は世界中で指を数えるほどしかいないのよ!?」

「すごい......! 一体何者なの?」


 目をキラキラと輝かせながら疑問をぶつけてくるルルに答える。


「俺は今年からノワール学園に入学する、ただの普通の学生だけど......」

「どこが普通の学生よ。――ってノワール学園!? 本当に!? ていうか何でよ!」

「わたし達も今年から入るんだ。一緒だね?」


 ルルの朗らかな微笑みに合わせて、俺も微笑みながら二人に頷く。


 まさか二人とも同級生だったとは......。

 じゃあ二人が同じ服を着ているのは、ペアルックじゃなくて制服だったからなのか。


「改めて聞くが......」


 ――ぐぅぅううう~~~。


 魔道具店に可愛らしい低音が大きく響き渡る。

 音の主は、赤髪の少女サラのお腹の中からだ。


「サラ、さっき角砂糖あげたばかりなのにもうお腹空いたの? 食いしんぼうだね?」

 

 お腹を鳴らしたサラにルルは、ニマニマと微笑みながら生暖かい視線を送る。

 自分自身でも予期していなかったのか、サラは火照らせた顔を覆い隠して......。


「し、仕方ないでしょ!? お昼ご飯まだなんだから! 貴方も! 今のは聞かなかったコト! いいわね!?」

「は、はい......」


 なぜかこちらに飛び火した。恥ずかしさに悶えているサラを横目に、俺は低く挙手をして一つの提案をする。


「あー。とりあえず場所変えないか? 俺も聞きたい事が沢山あるし、二人も聞きたい事があるだろ?」

「賛成ね。異論なしよ」

「うん。わたしもお腹空いたし」


 という訳で僕らは落ち着いて会話の出来る場所(飲食店が望ましい)を目指して、魔道具店を出た。

 

 結構歩いた頃に一つ思い出す。

 

 ――そういえば、お店に付与した剣を置きっぱなしにしちゃったけど大丈夫だろうか? まぁ世界で数人は作れると言っていたしな。

 店主にもあらぬ疑いをかけてしまった事だし、そこまでの価値にはならないだろうけど、アレを売れば少しくらいの儲けにはなってくれるのではないか。

 

 まぁ、無駄な心配をしても仕方ない。

 とりあえず今は目的地を目指すだけだ......。


 俺は顔を上げて先を歩いていく二人に駆け寄る。



◇◆◇



 ――三人は知らなかった。店主はあの剣を売却し、魔道具屋は莫大な財を手にする事を......。


 ――そして彼の経営手腕が存分に発揮され、ゆくゆくは国一番の魔道具屋へと発展することを......。

 

 ――創業1000年を超える超大老舗へと変貌することを......。

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